研究課題/領域番号 |
23K25031
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補助金の研究課題番号 |
22H03777 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64030:環境材料およびリサイクル技術関連
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
山田 学 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (90588477)
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研究分担者 |
柴山 敦 秋田大学, 国際資源学研究科, 教授 (30323132)
芳賀 一寿 秋田大学, 国際資源学研究科, 准教授 (10588461)
篠田 弘造 東北大学, 国際放射光イノベーション・スマート研究センター, 准教授 (10311549)
和嶋 隆昌 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (00380808)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2025年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
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キーワード | ピンサー抽出剤 / パラジウム / 溶媒抽出 |
研究開始時の研究の概要 |
これまで、研究代表者は金属と特異的な結合を形成するピンサー抽出剤を開発し、パラジウムにとても高い選択性と捕捉能力を有することを発見した。この抽出剤の金属に対する特異性を利用することで、使用済み自動車排ガス触媒の浸出溶液からパラジウムを高効率で分離および回収できることも明らかにした。本研究では、これまでに開発したピンサー抽出剤の能力を上回る「迅速的・効果的にパラジウムを抽出できる進化型ピンサー抽出剤」の創製を目指し、パラジウムの抽出機構の解明を行うとともに、リサイクル資源を模倣した金属混合液や実液を対象にパラジウムを効果的に分離できるか追及する。
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研究実績の概要 |
2,2’-チオビス(4-ターシャルブチルベンゼンチオール)のチオール基にアルキル基を導入した4種の進化型ピンサー抽出剤のPd(II)抽出特性の評価を詳細に行った。特に、抽出剤の濃度やPd(II)の濃度、塩酸濃度、振とう時間のそれぞれのパラメータを設定して最適化を行った。その結果、抽出剤:Pd(II)の濃度比は1:1が最も効率的にPd(II)を抽出でき、また振とう時間は30分でPd(II)の抽出率が飽和に達し、工業的抽出剤のジオクチルスルフィドよりもかなり速く抽出できることがわかった。塩酸濃度の変化によるPd(II)抽出能力の評価を行ったところ、0.1M 塩酸溶液が最もPd(II)の抽出率が高く、塩酸濃度が上昇するにつれて抽出率が変化することが明らかとなった。導入したアルキル基の影響も観測され、メチル化体では塩酸濃度が上昇するにつれて僅かなPd(II)抽出率の減少であったのに対し、ブチルやヘキシル化体と鎖長が長くなっていくとある特定の塩酸濃度で大きなPd(II)抽出率の減少が確認された。 Pd(II)抽出錯体の配位環境については 、大型放射光施設のX線吸収微細構造(XAFS)解析の装置を利用し、溶液中に存在するPd(II)の配位環境の観測を試みた。以前の研究成果では、結晶中でのPd(II)抽出錯体は架橋部の硫黄元素とメチルチオエーテル部の硫黄元素にPd(II)が二座配位した鏡像関係にある非対称構造が確認された一方で、溶液中の核磁気共鳴スペクトルからは溶液中で非常に対称性の良い構造であることが示された。今回のXAFS解析では、結晶中のPd(II)配位環境を支持する結果が得られており、鏡像関係にある非対称構造のPd(II)抽出錯体が溶液中でも混在し、それぞれの構造が平衡状態にあると推定できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目標は、①4種の進化型ピンサー抽出剤のPd(II)抽出特性を詳細に評価すること、②Pd(II)以外の金属が存在するモデル溶液(自動車排ガス触媒に含有される金属を対象)からのPd(II)抽出効率と選択性の評価、③溶液中のPd(II)抽出錯体の配位環境を明らかにすることであった。Pd(II)の抽出実験では、抽出する際の振とう時間をはじめ、進化型ピンサー抽出剤の濃度や塩酸濃度を詳細に検討し、最適なPd(II)抽出の条件を見出すことができた。さらに、モデル溶液からのPd(II)の抽出効率と選択性も行っている段階であり、今後、精査する予定ではあるがPd(II)抽出特性をある程度、把握できている現状にある。また、これまでに未解明であった進化型ピンサー抽出剤の抽出メカニズムをXAFSによる解明を行った。単結晶X線構造解析のデータと比較しながら、結晶中と溶液中に存在するPd(II)抽出錯体の構造の推定を行い、結晶中と溶液中ともに存在するPd(II)抽出錯体の配位環境が同等であることがわかり、鏡像構造を有するPd(II)抽出錯体が存在していることが予想できた。 今年度のピンサー型抽出剤のPd(II)抽出特性の評価およびPd(II)の抽出機構の解明に関する目標は達成できることから、本研究課題は当初の計画通りに進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果を踏まえ下記の課題に重点的に取り組む。 現在、検討中の自動車排ガス触媒に含有される金属を対象としたモデル溶液からのPd(II)の抽出特性の評価では、抽出条件の最適化および選択性を更に詳細に調査する。また、Pd(II)が含有する廃電子製品などの二次資源を参考にした新たなモデル溶液を作製し、Pd(II)の抽出特性の評価も合わせて行う。本検討から抽出条件や選択性を確認した上で、実際の二次資源の浸出液からのPd(II)抽出に関する検討を実施する。 Pd(II)の抽出メカニズムの解析では、X線吸収微細構造(XAFS)解析により、溶液中でPd(II)の配位環境が明らかになった。今後は、Pd(II)抽出錯体の構造の平衡状態に関して、核磁気共鳴スペクトル解析より明らかにするとともに、量子化学計算による鏡像体構造の抽出錯体の形成や抽出錯体の構造の最適化を実施する予定である。 上述の抽出剤のほかにも、未だ溶液中でのPd(II)の配位環境が明らかになっていない進化型ピンサー型抽出剤があり、これら抽出剤のPd(II)の抽出メカニズムも合わせてXAFS解析より明らかにする予定である。
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