研究課題/領域番号 |
23K25033
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補助金の研究課題番号 |
22H03779 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64030:環境材料およびリサイクル技術関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
椿 俊太郎 九州大学, 農学研究院, 准教授 (90595878)
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研究分担者 |
藤井 知 沖縄工業高等専門学校, 情報通信システム工学科, 教授 (30598933)
福島 潤 東北大学, 工学研究科, 助教 (80634063)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2022年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
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キーワード | マイクロ波 / バイオマス / 炭素熱還元 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではマイクロ波を用いた精密加熱技術を駆使し、マイクロ波による高温固体反応加速機構を明らかにする。独自開発のマイクロ波 in situ 測定群を駆使して、被照射物に生じる局所的な増強電磁場の形成と反応加速が生じる過程を、高時間分解・高空間分解で実測し、増強電磁場の生成条件と反応加速機構を明らかにする。さらに、マイクロ波増強電磁場を用いてバイオマスによる金属酸化物の炭素熱還元加速を実現する。
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研究実績の概要 |
1. 周波数やパルスを精密に制御し、任意の時空間において局所増強電磁場を形成することができるマイクロ波化学反応装置の開発:従来の2.45 GHzと比較して、波長が短く局所電磁界強度の高い5.8GHzマイクロ波装置を開発した。本装置は半導体式発振器を搭載しており、シングルモード型空洞共振器と組み合わせることでバイオマス・金属酸化物に強電磁界をあた与えることができる。さらに、最少1秒サイクルでパルス発振することができる。また、電場型および磁場型マイクロ波空洞共振器についても設計開発し、誘電体および導体のいずれもマイクロ波で加熱が可能なシステムを構築した。 2.マイクロ波in situ 測定による、マイクロ波増強電磁場によって固体反応加速が生じる現象の実測と、その機構解明:2022年度は in situ XRDの開発に注力した。高エネルギー加速器研究機構や九州シンクロトロン光研究センターにおいて、2.45 GHzおよび5.8 GHzマイクロ波装置を持ち込み、放射光XRDが可能なシステムを構築した。本装置は石英管や石英製キャピラリーに充填した試料に硬X線(10-20 KeV)を照射して、2次元検出器を用いて散乱パターンを測定する構成である。さらに、X線照射部の温度は、マイクロ波装置上部に配置した石英透過型サーモグラフィーを用いて直接測定することができる。本装置を用いて、マイクロ波照射中のぺロスブスカイト型酸化物の室温~1000℃におけるin situ XRDに成功した。特に昇温に伴い、熱膨張と欠陥形成にともなう回折ピークの低角シフトが、MWとCHで異なることを見出した。 3. マイクロ波照射条件により高温固体反応を制御する方法論の確立と、温和な条件でのバイオマスを炭素源とした炭素熱還元反応への応用:上記、1,2を中心に進めつつ、方法論の体系化についても着手しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロ波による炭素熱還元を促進する手法として、短波長の5.8GHzマイクロ波装置を導入した。さらに、5.8GHzの電場―磁場キャビティを用いて、誘電体(バイオマス)と導体(炭化物・還元した金属)を効率加熱するシステムを構築した。また、反応中の金属酸化物の構造を直接観測する手法として、高エネルギー加速器研究機構フォトンファクトリーBL-9Cにおいて、マイクロ波in situ XRD(2.45 GHz)を確立した。本手法では20KeVの硬X線を用いて石英に封入した金属酸化物試料について、マイクロ波加熱中の構造変化をリアルタイムでモニタリングすることができる。さらに、九州シンクロトロン光研究センターBL06九大ビームラインにおいても、より低エネルギーの10KeV程度でもin situ XRDを測定することができるように、ガラスキャピラリーに封入した試料のin situ XRD測定系も確立しつつあり、従来開発方法よりも高精度なXRDパターンの獲得を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は前年度に開発・導入したマイクロ波装置(5.8GHz)と、マイクロ波in situ XRDの高精度化に注力しつつ、これら装置を駆使して、バイオマス炭素による金属酸化物の熱還元法のプロセス開発に注力する。具体的には、下記の項目を進める。 1.局所増強電磁場を形成することができるマイクロ波化学反応装置の開発:空洞共振器の改良により、物性の大きく異なる誘電体でも共振可能な装置として改良する。具体的には、空洞共振器の内径を最適化し、Q値を少し落とすとともに、高耐電力インピーダンス整合器を導入して、高出力連続照射時の装置の安定性を改良する。また、30 GHzなどさらに高い周波数の導入も検討する。 2.マイクロ波in situ 測定による、マイクロ波増強電磁場によって固体反応加速が生じる現象の実測と、その機構解明:上記の1の装置を用いたin situ XRD測定および同時共振周波数測定により、金属酸化物の還元状態や、バイオマスの熱分解状態を直接観測する。特に、ガラスキャピラリのマイクロ波加熱治具を制作し、5.8GHzにおいて高精度にXRDパターンを測定できるシステムとして完成させる。 3.マイクロ波照射条件により高温固体反応を制御する方法論の確立と、温和な条件でのバイオマスを炭素源とした炭素熱還元反応への応用:1で開発しているマイクロ波装置を用い、バイオマスモデル化合物(セルロース・リグニン)や実バイオマス(針葉樹・広葉樹・草本)と、金属酸化物試料(Fe2O3, ZnO, LiCoO2, R-Fe-B系磁石)の混練物を、マイクロ波により炭素熱還元反応を行う。生成物はGC、質量分析、CHNS測定、XRD測定により分析し、電気炉やマグネトロン式などの従来加熱法と比較する。各マイクロ波照射方法による反応加速効果を検証する。反応制御に効果的なマイクロ波照射方法を確立する。
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