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漢方薬残渣の発酵促進効果を活用した第二世代バイオエタノール製造の高効率化

研究課題

研究課題/領域番号 23K25038
補助金の研究課題番号 22H03784 (2022-2023)
研究種目

基盤研究(B)

配分区分基金 (2024)
補助金 (2022-2023)
応募区分一般
審査区分 小区分64030:環境材料およびリサイクル技術関連
研究機関福岡大学

研究代表者

重松 幹二  福岡大学, 工学部, 教授 (00242743)

研究分担者 亀井 一郎  宮崎大学, 農学部, 教授 (90526526)
中村 嘉利  徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 教授 (20172455)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2024年度)
配分額 *注記
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2025年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2022年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
キーワードバイオエタノール / 漢方薬 / セルラーゼ / 発効促進 / 発酵促進 / 酵母
研究開始時の研究の概要

木質バイオマスを原料とする第二世代バイオエタノールの製造では、リグニンが酵素糖化の障壁となったり、糖化酵素の原料表面への吸着が強いため効率が低いなどの問題が実用化を妨げている。また、それらの阻害を避けるための脱リグニン工程において発酵阻害物質が副生するとともに、発酵工程では基質阻害や生成物阻害によって高原料濃度の発酵が困難で、エタノール濃度が低い発酵液しか得られない。
本研究は、漢方薬の抽出残渣を添加することで、サポニンの界面活性作用によって酵素糖化を促進させたり、発酵促進成分によって基質阻害や生成物阻害が生じる条件でも高濃度エタノールが製造できる技術を確立することを目的とする。

研究実績の概要

原料バイオマスにキノコ類が混入したことを想定した影響を調べたところ、いくつかのキノコ子実体に漢方薬と同様の発酵促進効果があることがわかった。特に効果が高かったブナシメジについて可食部や非食部の違い、廃菌床の効果を検討したところ、石づきや廃菌床も発酵促進効果を示し、産業的に有効な利用法を提供できると考えた。この内容は、「キノコ菌糸体の混入がバイオエタノール製造に与える影響」として学会発表を行った。
また、エタノール発酵のタンパク質供給源として、食品系廃棄物であるサバみりん干し廃液や若鶏が産む軟卵の活用を考えた。みりん干し廃液を添加したところ、標準法と遜色なく酵母の増殖が進み食品ロスの観点から有効であったが、過度の添加は塩分濃度の上昇を伴い発酵阻害が見られた。鶏卵の場合、卵黄では発酵は進んだが、卵白はリゾチームの影響により酵母の増殖が阻害された。この解決には加熱前処理が有効であるとともに、本研究の主題であるマオウの発酵促進効果によっても解決できた。なお、含有タンパク質は酵母凝集体に変換されて容易に分離除去できることからCODを測定したところ、みりん干し廃液では半減し、鶏卵の場合はエタノール蒸留時にタンパク質が凝固するため約1/4に低下した。この内容は、「食品廃棄物をタンパク源としたエタノール発酵とタンパク質の資化」として学会発表を行った。
さらに、発酵阻害を引き起こすフルフラール類が共存する系のモデルとしてモラセス(廃糖蜜)を原料としたところ、ブナシメジの添加によって発酵が回復するとともに栄養素を供給する効果も加わり、ブナシメジがバイオエタノール製造の添加剤として有効であることがわかった。この内容は、「モラセスを糖原料とするバイオエタノール製造に対するブナシメジ乾燥粉末の発酵促進効果」として学会発表を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

エタノール発酵に有効な漢方薬残渣のスクリーニングを、主に国内生産量の多いものから調査を進めている。そして、漢方薬の種類によって発酵を促進する最適添加量が異なることから、処方生薬ごとの促進と阻害の違いを調べ、統計手法を用いて混合物での効果の要因を明らかにしようとしている。また、漢方薬類似の物質として、スパイスの中に発酵促進効果と栄養素供給能を併せ持つものを見いだし、折れた野球バットではその材質による発酵促進効果の違いを明らかにしたことで新たな有効利用法の開発に拡張している。さらに、発酵促進効果を持たない漢方薬残渣については加水分解による糖資源化を検討したところ、木質バイオマスよりも容易にグルコースを得ることができ、再資源化への試みを進めている。
当初予想していなかった結果として、漢方薬残渣を添加して製造したバイオエタノールをガソリンエンジンに供したところ、通常のガソリンやバイオエタノールよりも排気ガスがクリーンになることを見出した。現在、ガソリン添加剤などの簡易な供給方法を検討するとともに、その要因の解明に着手している。

今後の研究の推進方策

発酵促進効果の作用機序として、固形物の添加による物理的作用と、酵母の増殖あるいは代謝活性を促す生化学的作用を考えている。物理的作用に対しては、撹拌操作による溶存二酸化炭素の低減効果が寄与していると考えており、発酵促進物質との相乗効果の観点から検討を続ける。生化学的作用に対しては、活性成分の特定と、排出代謝物および酵母内代謝物の分析を行い、どの代謝経路に作用しているか検討する。
バイオエタノール製造コスト削減のための応用研究としては、短時間で高濃度のエタノールを得るために有効な漢方薬および類似物質の探索を続けるとともに、食品系廃棄物の栄養素供給源としての有効利用、蒸留残渣の再資源化を検討する。特に、蒸留で得たバイオエタノールのガソリンエンジンへの適応性を明らかにし、既存のガソリンよりもバイオ燃料が有利な点を見いだす。

報告書

(2件)
  • 2023 実績報告書
  • 2022 実績報告書
  • 研究成果

    (7件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] バイオエタノール生産における酵母の発酵に必要な栄養素供給能を有する食品類の探索2023

    • 著者名/発表者名
      重松幹二、戸髙昌俊
    • 雑誌名

      福岡大学工学集報

      巻: 109&110 ページ: 7-14

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • オープンアクセス
  • [学会発表] キノコ菌糸体の混入がバイオエタノール製造に与える影響2023

    • 著者名/発表者名
      岡崎佑亮、戸髙昌俊、重松幹二、亀井一郎
    • 学会等名
      第29回日本木材学会九州支部大会(大分)
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 食品廃棄物をタンパク源としたエタノール発酵とタンパク質の資化2023

    • 著者名/発表者名
      加藤賢馬、石田奈菜、戸髙昌俊、重松幹二
    • 学会等名
      第34回廃棄物資源循環学会研究発表会(大阪)
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] モラセスを糖原料とするバイオエタノール製造に対するブナシメジ乾燥粉末の発酵促進効果2023

    • 著者名/発表者名
      重松幹二、岡崎佑亮、野下綾華、戸髙昌俊、亀井一郎、中村嘉利
    • 学会等名
      第74回日本木材学会大会(京都)
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] エタノール発酵に対するマオウの発酵促進効果を活用した高濃度キシロースにおける発酵阻害の克服とキシロースの単離2023

    • 著者名/発表者名
      岡本康希、甲斐美邑、戸髙昌俊、コウハクル ワサナ、重松幹二
    • 学会等名
      第73回日本木材学会大会 (福岡)
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] 発酵阻害物質を含むエタノール発酵に対するマオウ添加と撹拌操作の相乗効果2023

    • 著者名/発表者名
      外園心都、コウハクル ワサナ、戸髙昌俊、重松幹二
    • 学会等名
      第32回日本エネルギー学会大会 (福岡)
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] 漢方薬残渣の添加によるバイオエタノールの発酵促進および排ガス改善2023

    • 著者名/発表者名
      戸髙昌俊、佐藤優樹、谷口栄樹、コウハクル ワサナ、重松幹二
    • 学会等名
      第32回日本エネルギー学会大会 (福岡)
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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