研究課題/領域番号 |
23K25042
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補助金の研究課題番号 |
22H03788 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64040:自然共生システム関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山田 浩之 北海道大学, 農学研究院, 講師 (10374620)
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研究分担者 |
鈴木 透 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (20515861)
中村 隆俊 東京農業大学, 生物産業学部, 教授 (80408658)
田開 寛太郎 都留文科大学, 教養学部, 准教授 (40825163)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
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キーワード | ドローン / バーチャルリアリティー / ICT教育 / デジタル変革 / 湿地生態系 / バーチャルツアー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題は、バーチャルリアリティー(VR)技術を用いて自然科学研究や環境教育のデジタル変革(DX)を推進する際に生じうる課題を克服することを目標としている。そのために、VR映像撮影用のUAV(ドローン)モニタリングシステム、実写型VRコンテンツ制作法(動画等の受動型、バーチャルツアー等の能動型)とそのアーカイブ手法を確立し、近年の劣化や消失が顕著な湿地生態系を対象にしたモニタリング法を構築する。さらに、そのコンテンツを用いた環境調査法やインベントリ作成法の開発、バーチャル標本や環境教育用教材の制作を行い、それらの評価を通して持続可能な環境モニタリングや自然科学研究、環境教育に展開する。
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研究実績の概要 |
課題1では、新システムと撮影プロトコルを用いて、静狩湿原、歌才湿原を再撮影し、新規に生花苗沼、湧洞沼、浅茅野湿原、猿払川下流湿原、大沼、落石湿原、シラルトロ湖、西別湿原、根室半島湿原群(歯舞湿原)、能取湖、茨散沼、風蓮川湿原の計14カ所の湿地の撮影を実施した。その過程で、新システムのパーツとプロトコルについて改良を加え、システムとプロトコルの完成度を高めた。さらに、VRコンテンツやデータをデータペーパーとJ-STAGE Dataでアーカイブし、独自に開設したウェブサイトでバーチャルツアーを含む教材を公開する方針を定めた。このうち、ウェブサイトについては試験的な公開を開始した。 課題2では、湿原バーチャルツアーに組み込まれるコンテンツの一つとして、初学者に向けた基礎的な植生調査の方法についてVRによる解説動画を作成した。湿原バーチャルツアーで表示される植物バーチャル標本のデザインや仕様について検討し、植物バーチャル標本として使用する種の写真について各地で撮影を行った。課題1で先行試作した茨散沼湿原・歯舞湿原バーチャルツアーにおいて、視認できる主要な植物種をリストアップし、植物ラベル地点の全体的な配置バランス等を検討した。 課題3では、前年度検討した視聴方法と教材タイプを用いて、小学生を対象にした実験教育を1回行った。また、地域評価会を実施し、VR教材や使用方法を改善するとともに、小・中学校の児童向けの教育目的に適合した教材の制作を進めた。さらに、VR教材の視聴方法のさらなる可能性を探るため、簡易型VR視聴システムの試行や、湿地センターなどの展示方法の検討、学校教育のICT担当者や理科教諭へのヒアリングを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題1では、新システムを用いて、14カ所の湿地の撮影を完了し、前年度の撮影に遅れがあったものの計画通りに進めることができた。各地の撮影を通して、強度が不足していたパーツの改良を行いシステムとしての完成度を高めることができた。また、撮影時のトラブルシューティングを通して、撮影プロトコルについても概ね完成させることができた。データアーカイブ化については映像データを永続的に保管できるリポジトリとでデータペーパーとしての公開先を検討し、確定することができた。教材とバーチャルツアー制作については、課題2・3と共同で進めており、ウェブサイト上でのプロトタイプ教材の公開を準備しているところである。 課題2では、9月中旬に植生調査の解説動画の撮影の実施を完了した。しかし、植物生育状況の点でやや時期が遅かったことに加えて、撮影時の強風でノイズが多く混入したため、翌年度に再撮影することにした。植物バーチャル標本用の写真については、必要と思われる種の7から8割の撮影が完了し、概ね予定通りに進捗している。しかし、バーチャルツアーへの植物バーチャル標本・ラベルの配置作業は予定よりもやや遅れている状況にある。 課題3では、VR教材を用いた教育・学習支援プログラムの全国的動向を把握することができ、それに関する論文を掲載することができた。その実験教育の様子が、環境省「環境教育・ESD実践動画100選」に採択され、本研究の成果を対外的にアピールすることができた。さらに、学校教育における有効な視聴方法として、1人1台端末のタブレットPCや簡易VRゴーグルが適していることが、複数関係者からのヒアリング結果から明らかとなった。現在、課題1との協働でVRを活用した教材の制作に取り組んでいるがやや遅れている状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
課題1では、今年度に続いて、10カ所以上の湿地で新システムを用いた撮影を実施する。なお、翌年度の撮影地については、撮影の可否を関係省庁、土地所有者と調整を済ませている。また、これまで蓄積したデータの映像のアーカイブについては、課題3のウェブサイト上の教材にデータ提供すると共にデータペーパーとして随時公開する予定である。それらを踏まえて、教育・研究に適した撮影方法、映像処理や仕様についてまとめる。 課題2では、植物バーチャル標本に必要な写真について不足分の撮影を行うとともに、植生調査解説の動画撮影に適した季節・天候のタイミングで再撮影を実施する。湿原バーチャルツアーへの植物バーチャル標本の埋め込みを進め、バーチャル標本の利点欠点を整理する。 課題3では、バーチャルツアーを活用した教材の仕様を明確にし、プロトタイプ教材を使用した実験教育を実施し、評価する。また、大学および大学院の講義でのVR教材の使用に関するアンケートを作成し、集計して評価する。年度末には、学年に応じた適切な視聴方法や教材の仕様や、ICT教育における学習指導要領や教育DXの在り方を総括する。さらに、日本環境教育学会や日本湿地学会等での研究実践発表を行い、研究成果を発信する。
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