研究課題/領域番号 |
23K25055
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補助金の研究課題番号 |
22H03801 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64050:循環型社会システム関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中谷 隼 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (40436522)
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研究分担者 |
吉川 直樹 滋賀県立大学, 環境科学部, 講師 (10583271)
小泉 裕靖 公益財団法人東京都環境公社(東京都環境科学研究所), 環境資源研究科, 研究員(移行) (70792513)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | 食品廃棄 / 使い捨てプラスチック / ごみ組成調査 / 物質フロー分析 / ライフサイクル評価 / 容器包装 / カトラリー / 樹脂別組成 |
研究開始時の研究の概要 |
食品廃棄と使い捨てプラスチックの削減は,いずれも喫緊の課題である。物質の消費から廃棄に至る環境影響の評価には物質フロー分析(MFA)およびライフサイクル評価(LCA)が有用であるが,食品とプラスチックのような性質の異なる物質間の関わり(ネクサス)を統合的に分析・評価するためのフレームワークは確立されていない。 本研究課題では,MFAとLCAを基盤とした物質間ネクサスの環境影響の統合的分析・評価モデルの開発を目的とする。開発したモデルを食品廃棄と使い捨てプラスチックのネクサスに適用し,両者の削減目標の達成への道筋を示す。
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研究実績の概要 |
1. 食品容器包装プラスチックのリサイクルに関する阻害影響要因の調査・分析 食品容器包装プラスチックについて,樹脂別組成に関するごみ組成調査を実施したところ,その多くが多層構造であり,これがリサイクルを困難にしていることを明らかにした。また,食品関連事業者に対しヒアリング調査を実施し,容器包装の機能・役割や特性(軽量,保存性,加工性,着色性,汚れの付着など)について整理し,使い捨てを使用せざるを得ない要因を分析した上で,リサイクルへの影響について検証した。 2. 食品とプラスチックの生産と廃棄・リサイクルのインベントリデータの整理およびライフサイクル影響評価手法の確立 日本のインベントリデータベースであるIDEAについて,データの作成方法を精査した。その結果,食材におけるIDEAのインベントリデータは卸売市場から上流までを念頭に作成されており,①消費者による購入を想定した場合,輸送や小売プロセスの算定が必要であること,②食材の種類によっては卸売段階と消費段階では形態が異なる(たとえば肉類では,部分肉と精肉)ため,消費者の購入量ベースで算定する場合,可食部と非可食部の環境負荷の配分を検討する必要があることが確認された。 3. 物質間ネクサスのMFAモデルの開発と産業連関表の拡張 研究代表者が開発したプラスチックのMFAモデルを基盤として,食品の種類および提供形態(内食,中食,外食)ごとに,どれだけの使い捨てプラスチックが直接的および間接的に使用されているか明らかにした。さらに,2018年から2021年までの4ヶ年の家計調査(総務省)および飲食サービスに関する市場調査のデータと組み合わせることでモデルを拡張し,新型コロナウイルス感染症の流行前後における飲食サービスに付随する容器包装プラスチックの使用量や,廃棄物として排出される部門の変化を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 食品容器包装プラスチックのリサイクルに関する阻害影響要因の調査・分析 自治体などが所有している廃棄物関連のデータや,ごみ組成調査および関連事業者ヒアリングを実施することにより,当初の予定通りに調査は進行している。 2. 食品とプラスチックの生産と廃棄・リサイクルのインベントリデータの整理およびライフサイクル影響評価手法の確立 当初の予定通りに進捗している。具体的には,既存の食品のインベントリデータを精査することにより,本研究での環境負荷推計に必要な情報を整理することができた。 3. 物質間ネクサスのMFAモデルの開発と産業連関表の拡張 容器包装プラスチックのMFAモデルを家計調査などのデータと組み合わせることでモデルを拡張したことで,新型コロナウイルス感染症の流行前後における飲食サービスに付随する容器包装プラスチックの使用量や,廃棄物として排出される部門の変化を明らかにすることができた。当初の予定にあったモデルの拡張とは,やや内容が異なるものの,当初の予定以上の成果が得られたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
1. 食品と付随する使い捨てプラスチックの統合的MFA 産業連関表を用いたプラスチックのMFAモデルに食品消費の統計(家計調査など)を統合した食品・プラスチックネクサス分析用のMFAモデルを,最新年次の産業連関表を用いて更新する。更新されたMFAモデルを用いて,どの種類の食品に,どれだけの使い捨てプラスチックが付随しているか推計する。 2. 食品・プラスチックネクサスのLCAの事例研究 食品廃棄または使い捨てプラスチックの削減オプションのうち代表的なものについて,LCAによって食品とプラスチックのライフサイクルの環境影響を評価し,それらのネクサス(win-winまたはtrade-off関係)を定量的に分析する。食品が特に関わる環境影響として,carbon footprint(気候変動)の評価に加え,water footprint(水資源消費)やland footprint(土地利用)についても検討する。 3. 食品とプラスチック全体での環境影響低減に向けた提言とりまとめ LCAの事例研究の結果から,総合的に環境影響の削減に貢献することが担保されたオプションについて,統合的MFAによる全国規模の食品とプラスチックの物質フローに重ね合わせることで,それらを全国規模で実施した際の効果を推計する。その結果から,SDGsやプラスチック資源循環戦略に掲げられた食品廃棄および使い捨てプラスチックの削減目標を両立するための道筋(どの削減オプションを優先するべきか)を示す。
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