研究課題/領域番号 |
23K25058
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補助金の研究課題番号 |
22H03804 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64050:循環型社会システム関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
中野 和典 日本大学, 工学部, 教授 (30292519)
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研究分担者 |
和木 美代子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 上級研究員 (10355092)
志村 もと子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 西日本農業研究センター, 上級研究員 (70502920)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
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キーワード | 人工湿地 / 脱炭素化 / アナモックス細菌 / ライフサイクルアセスメント / 干満流 / 下水処理原単位 / 干満流人工湿地 / アナモックス菌 / 下水処理 / 農業集落排水 / 機能性微生物 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、下水処理場に設置したパイロットスケールの人工湿地に機能性ろ材や機能性微生物を活用した最先端技術を適用し、実規模で達成可能な下水処理原単位やカーボンフットプリントを定量化する。その成果により、更新時期を迎えつつある全国5,100ヵ所の農業集落排水施設に人工湿地を導入した場合に達成可能な脱炭素効果と必要面積の試算が可能となるだけでなく、資源循環の改善、下水処理の高度化、汚泥処理の簡易化、維持管理費用の低減化への新たな道筋が切り開かれるため、農業集落排水施設の持続可能な開発目標(SDGs)に貢献することができる。
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研究実績の概要 |
人工湿地への最新技術の導入効果を検証するため、パイロットスケールの人工湿地のろ床を干満流と部分飽和を適用したハイブリッドろ床へと改変するとともに、ろ材や流入方式による下水浄化性能の違いを比較検証した。さらに得られた下水浄化性能とアナモックス細菌などの機能性細菌の関係性について検討し、以下に示す成果を得た。 研究課題(1)干満流の適用とその頻度が下水処理性能に及ぼす効果の検証:ハイブリッドろ床に干満流を適用して干満インターバル6時間で行った下水の試験処理により100g-BOD/m2日を超える非常に高い下水処理原単位を達成することに成功した。研究課題(2)機能性細菌接種以前の人工湿地ろ床の微生物群集の把握:外部からアナモックス細菌を接種しなくても人工湿地ろ床にアナモックス細菌が存在していることを確認した。研究課題(3)機能性細菌接種以後の人工湿地ろ床の微生物群集の把握:(2)の成果により、外部からのアナモックス細菌の接種はせず、流入深を表層から中層に変更することでアナモックス細菌の存在量を高めることを試みた結果、その存在量を10倍以上高めることに成功した。研究課題(4)機能性細菌の生残特性に及ぼす人工湿地条件の影響の検証:アナモックス細菌の存在量がろ材によって異なることを示す結果を得た。研究課題(5)機能性細菌の接種が下水処理性能に及ぼす効果の検証:アナモックス細菌の増加と連動して窒素除去性能が大幅に改善される結果が得られ、機能性細菌が及ぼす効果の実証に成功した。研究課題(6)人工湿地による下水処理における生成汚泥量の定量:汚泥を定量する実験系に不具合が生じたため、定量には至らなかった。研究課題(7)人工湿地による下水処理でのカーボンフットプリントの検証:人工湿地建設時の温室効果ガス排出量を算定するインベントリ解析用データ一覧を作成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初に設定した7つの研究課題に対する進捗状況は以下のとおりであり、課題(1)~(5)は計画以上に進展したが、課題(6)は遅れており、課題(7)はほぼ計画どおりである。 研究課題(1)干満流の適用とその頻度が下水処理性能に及ぼす効果の検証:ハイブリッドろ床に干満流を適用して干満インターバル6時間で行った下水の試験処理により100g-BOD/m2日を超える非常に高い下水処理原単位を達成することに成功した。ろ床面積の大幅なコンパクト化が可能なことを示す重要な成果である。研究課題(2)機能性細菌接種以前の人工湿地ろ床の微生物群集の把握:外部からの接種なしでも人工湿地ろ床にアナモックス細菌が存在していることを確認した。研究課題(3)機能性細菌接種以後の人工湿地ろ床の微生物群集の把握:(2)の成果により外部からのアナモックス細菌の接種はせず、人工湿地条件の改善によりアナモックス細菌の存在量を高めることを試みた結果、その存在量を10倍以上高める手法の確立に成功した。計画時の想定を超える成果である。研究課題(4)機能性細菌の生残特性に及ぼす人工湿地条件の影響の検証:アナモックス細菌の存在量がろ材によって異なることを示す重要な知見を得ることに成功した。研究課題(5)機能性細菌の接種が下水処理性能に及ぼす効果の検証:アナモックス細菌の増加と連動して窒素除去性能が大幅に改善されることを実証することに成功した。研究課題(6)人工湿地による下水処理における生成汚泥量の定量:汚泥を定量する実験系に不具合が生じたため、定量には至らなかった。研究課題(7)人工湿地による下水処理でのカーボンフットプリントの検証:人工湿地建設時の温室効果ガス排出量を算定するインベントリ解析用データ一覧を作成できた。
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今後の研究の推進方策 |
R4及びR5年度に実施した微生物群集のモニタリングにより、ハイブリッドろ床に適用した中層流入がアナモックス細菌の強化に有効であり、窒素除去性能の大幅な改善につながったことが明らかとなったが、リン除去性能の改善には至らなかった。遅れている人工湿地による下水処理における生成汚泥量の定量については、これまでの失敗を鑑みた新たな手法で検討する必要がある。研究課題(1)(2)(3)(5)は完了しており、今年度に取り組む研究課題(4)(6)(7)の内容は以下である。 研究課題(4)機能性細菌の生残特性に及ぼす人工湿地条件の影響の検証:中層流入により人工湿地のろ床内でアナモックス細菌を増加させることに成功した。その効果の中長期的な持続性を検証することを目的として1年間のろ床内の微生物群集の変遷をモニタリングする。中層流入により窒素除去性能を改善することには成功したが、リン除去性能の改善には至っていない。これは中層流入がリン蓄積細菌の増加には貢献していないことを示唆している。そこで流入水の半分を表層流入、残りを中層とすることで窒素除去性能の維持とリン除去性能の改善の両立を試みる。研究課題(6)人工湿地による下水処理における生成汚泥量の定量:1段目の人工湿地ろ床に孔径2mmのメッシュを張り巡らし、汚泥蓄積量をモニタリングすることを試みる。1年間のデータから人工湿地における汚泥減容化率や汚泥蓄積速度を算定する。研究課題(7)人工湿地による下水処理でのカーボンフットプリントの検証:3年間のパイロットスケールの人工湿地による下水処理におけるカーボンフットプリントに基づいて脱炭素効果を定量化するとともに、建設時と撤去時に想定されるインベントリーデータをまとめ、農業集落排水施設を人工湿地によって更新した場合に期待できる効果を評価する。
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