研究課題/領域番号 |
23K25077
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補助金の研究課題番号 |
22H03823 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
相馬 拓也 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (60779114)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
2026年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2025年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 動物フォークロア / 精霊民話 / 山岳農耕 / 牧畜変容 / 中央ユーラシア / 遊牧社会 / 伝統知 / 草原適応 / シルクロード / キルギス / イシククル湖 / オーラルヒストリー / 天山山脈 / 騎馬鷹狩 / 狩猟誌 / 動物民俗 / 移牧 / 伝統知(T.E.K.) / 遊牧民 / 環境適応 |
研究開始時の研究の概要 |
本課題は、モンゴル~キルギス~カザフの草原世界で継承されてきた伝統知の実践が、シルクロードの遊牧民の環境適応術と、生存能力の拡張に果たした役割を実証的に解明する。草原世界の遊牧民のあいだでは、家畜防衛・災害対処・薬草利用・狩猟・水源・牧草地利用など、生存のための伝統知が、口承伝達・語り・掟などの生活実践として継承された。本課題では、①定量社会調査、②リモートセンシング、③社会ネットワーク分析、の3つの異なる手法を応用する。これにより、草原適応術の解明にとどまらず、「文明」の礎でもある人類の生存能力の拡張とレジリエンスの確立に、シルクロード草原の伝統知の実践が果たした役割をも探求する。
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研究実績の概要 |
初年度22年度は、キルギス北東部イシククル湖周辺のコクサイ村、グレゴリエフカ村などの、牧畜コミュニティを中心に、山岳適応や家畜飼養にかんする伝統知のドキュメンテーションを実施した。牧畜民からは、伝統の家畜飼養法、在来有用植物の利用方法、季節移動の実態と宿営地の選定など、牧畜社会の実態に肉薄できる情報が多数収集された。あわせて、ヒトと動物の関係性を物語る、数多くのオーラルヒストリー、民話・説話、フォークロア、狩猟伝承などを収集することができた。 イシククル湖南部のバイボースン自然保護区では、ユキヒョウの生態観察調査を進めており、現在7地点でトラップカメラが作動している。これらのカメラで、ユキヒョウの生態をとらえた画像・映像100回以上の撮影に成功した。現在は撮影された画像をもとに、斑紋特定などで個体識別を進めている。 天山山脈テレスケイアラトー山中のスルト夏牧場では、白色ヤクの多頭飼育群に着目し、飼養方法のインタビュー調査、行動観察などに加えて、血液サンプルの採取や、GPS装着による行動圏調査などを実施した。ヤクの新生個体の染色体異常などの症例があり、現地牧畜民からの強い要望により、DNAによる解析を進めている。 当該年度の夏季フィールド調査には、京都大学や他大学の院生・学生6名を同行し、フィールド実践の機会に触れてもらった。また、キルギスの中央アジア=アメリカン大学の学生4名もアドホックに同行し、現地の若者たちに現地の遠隔農山村の暮らしに触れもらう機会を創出している。また、トルコ=マナス大学では、農学部と獣医学部と協働研究を実施しており、現地ラボの共同利用のほか、同大所属の修士院生とのコラボレーションも進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2022年度(R4年度)は、海外渡航制限の緩和により、当初計画を上回る50日間以上のフィールド調査を、キルギスとカザフスタンで実施することができた。ただし、モンゴルは制限緩和後も、遠隔地に外国人来訪による感染拡大への恐怖や排除の動きがあったため、当該年度は断念した。とくに年度前半期、キルギスでは中央アジア=アメリカン大学、トルコ=マナス大学、キルギス科学アカデミー、アルファラビ=カザフ国立大学、との協働体制を確立したことで、データ収集とアウトプット機会が飛躍的に向上した。
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今後の研究の推進方策 |
代表者によって、現地活動地の研究所・高等教育機関をはじめ、専門家や学生、カウンターパートとの高度な連携体制が確立されている。そのため、今後は日本にいながらシームレスなデータ収集と分析を共有する。次年度には、キルギスの共同研究者と共著で、2度の国際学会で成果報告も予定されている。 また研究活動では、研究者のみならず、学生・院生などの動員を積極的に進めている。本研究の遂行が現地のユース・エンパワメントに直結し、若者たちのフィールド調査や研究活動への参加機会を後押しするスキームを確立しつつある。
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