研究課題/領域番号 |
23K25085
|
補助金の研究課題番号 |
22H03831 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
|
研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
今野 泰三 中京大学, 教養教育研究院, 教授 (90647835)
|
研究分担者 |
高橋 宗瑠 大阪女学院大学, 国際・英語学部, 教授 (40844600)
役重 善洋 同志社大学, 人文科学研究所, 嘱託研究員 (50817228)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
16,640千円 (直接経費: 12,800千円、間接経費: 3,840千円)
2024年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
|
キーワード | パレスチナの植民地化 / 新しい解放構想 / 国際法・人権 / ネットワーク化 / 反人種差別運動 |
研究開始時の研究の概要 |
オスロ合意以降の和平プロセスは、イスラエルの体制に内在する植民地主義を隠蔽し、パレスチナ人民衆を抑圧する体制を作った。それに対し、2010年頃からパレスチナ人は状況を打破するため、新たな人的・組織的ネットワークを作り、民衆の声を包摂する新しい戦略と社会構想を生み出してきた。本研究では、パレスチナにおける植民地近代の諸相を把握する認識的枠組みを軸に、パレスチナ難民コミュニティ、パレスチナ人法学者・法律家、北米在住パレスチナ人が、祖国と民族を解放するため、いかにネットワークを広げ、新しい戦略や社会構想を構築・提示してきたかを明らかにする。
|
研究実績の概要 |
研究代表者の今野は、オスマン帝国期と英委任統治期のパレスチナ北部バイサーン地方の社会状況とアラブ系住民の経験について研究を進めた。9月に英国とヨルダンに出張し、資料収集と難民への聞き取りを行った。関連する業績として、「ベドウィンが生きた帝国と植民地主義―パレスチナ北部のバイサーン地方を中心に」(シンポジウム『帝国と民族のあいだ―パレスチナ/イスラエルをめぐるもうひとつの層』、2023年12月16日)等の発表を行った。 研究分担者の高橋は引き続き研究者や国際人権団体・国際機関の関係者と話し、アパルトヘイトの言説がパレスチナ 解放に向けてどのように役立っているかに関する研究を進めた。10月に状況が急変し、イスラエルがジェノサイドの犯罪も犯している可能性が高いとの見解が急激に広まり、Ibn Haldun大学、マレー大学、エジンバラ大学での講演や講義のほか、メディア(東洋経済オンライン、Aljazeera、Japan Times)やシンクタンク(Arab Center Washington)からの原稿・講演依頼も多くあった。 研究分担者の役重は、キリスト教神学の脱シオニズム化という観点から、聖書考古学とパレスチナ問題の連関について研究を行い、9月に開催されたシンポジウム「オスロ合意から30年」で報告を行った。また、キリスト教シオニズムやパレスチナ解放神学をグローバルな宗教・政治関係の歴史の中に位置づけることをめざし、3月にインドで“International Roundtable: Decolonizing Politico-Religious Relations in Asia”と題する国際会議を開催した。9か国・地域から22名の参加者を招き、多様な視点から議論を行うことができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、研究代表者の今野は、9月に英国とヨルダンに出張し、研究に必要な資料の収集とバイサーン地方出身のパレスチナ難民への聞き取りを実施するとともに、計画に沿った研究を進め、その成果を論文としてまとめた。それらは、2024年度に書籍『パレスチナ/イスラエルの〈いま〉を知るための24章』と『帝国と民族のあいだ―パレスチナ/イスラエルをめぐるもうひとつの層』(仮題)のそれぞれ1章として刊行される予定である。 研究分担者の高橋は当初の予定通り8月にパレスチナに出張し、現地の人権団体、市民団体、および国際機関の関係者から状況の聞き取りを行った。10月のイスラエルによる大規模軍事侵攻以降はアメリカ、マレーシア、トルコ、イギリス、アゼルバイジャンに出張し、研究者や市民団体と意見交換した。特にアメリカのワシントンとシカゴで開催されたAmerican Muslims for Palestine総会で講演したほか、アメリカ国内における政治的動向に関して情報収集することができた。その研究成果は2024年度中に発表する予定である。 研究分担者の役重は、パレスチナ人と反人種主義運動との連帯に関する研究という当初の問題設定を、特にキリスト教神学およびキリスト教徒のエキュメニカルなネットワークという観点から調査するため、YMCAおよびWCC等のエキュメニズム運動の関係者およびパレスチナ人神学者と意見交換を行った。そこで得られた知見および文献調査をもとに、計画に沿った研究を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究プロジェクトの最終年度に当たる2024年度は、これまでの研究成果を発表し、それを学界・社会に広く還元し、さらに今後の研究のためのフィードバックを得るため、国際シンポジウムを日本国内で開催し、海外からも本研究プロジェクトのテーマに関連する研究者を招聘する。 上記に加えて、研究代表者の今野は、現地情勢が許す限り、8月頃にヨルダン川西岸地区とヨルダンに出張し、バイサーン地方出身の難民とそれら難民が結成した村落協会から聞き取り調査を行い、欧米とイスラエルによる長年の植民地主義的支配とそれを支える言説に対し、どのような抵抗の構想と論理を編み出し、利用しているかを検討する。 研究分担者の高橋は現地情勢が許す限り9月にパレスチナに出張するほか、アメリカに出張して、アパルトヘイトだけでなくジェノサイドの言説がアメリカの政治及び国際連合における国際動向にどのような影響を与えているのか、研究者や市民団体、シンクタンク関係者の聞き取り調査を行う予定である。 研究分担者の役重は、2023年度にインドで開催した国際会議の報告集を編集し、電子書籍および小冊子にまとめると同時に、本研究プロジェクトが計画する国際シンポジウムにおいて、これまでの研究成果を発表し、論文にまとめることをめざす。
|