研究課題/領域番号 |
23K25098
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補助金の研究課題番号 |
22H03844 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 京都外国語大学 |
研究代表者 |
大越 翼 京都外国語大学, 外国語学部, 教授 (40439336)
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研究分担者 |
井上 幸孝 専修大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (20399075)
青木 利夫 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 教授 (40304365)
杓谷 茂樹 公立小松大学, 国際文化交流学部, 教授 (90410654)
小林 貴徳 専修大学, 国際コミュニケーション学部, 准教授 (90753666)
渡辺 裕木 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 講師 (90828667)
宮崎 彩 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任准教授 (60973899)
嘉幡 茂 京都外国語大学, 京都外国語大学ラテンアメリカ研究センター, 客員研究員 (60585066)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,900千円 (直接経費: 13,000千円、間接経費: 3,900千円)
2025年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
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キーワード | メキシコ / 社会諸集団と公的機関の相互関係 / 歴史的資源の活用 / 通時的・学際的研究 / 新たな歴史観 / 歴史的遺産の資源化 / 主体としての諸社会集団と公的機関 / 通時的研究 / 文化価値の創出 / 先住民の主体性 / 公的機関との関係性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、メキシコの先住民や他の社会集団、公的機関が、歴史的資源として先スペイン期や植民地期の事象をどう活用してきたのかを通時的かつ多角的に解き明かし、同時に先住民の社会的役割を明確にしながら、新たな歴史観を提供することを目的としている。具体的には、メキシコの歴史を先スペイン期から現代までの連続したものと捉え、社会の総体を形成していた主体的行為者としての先住民、さらには他の社会集団や為政者(公的機関)の相互作用の軌跡・結果の通時的・学際的研究であり、多民族・多文化国家を標榜する現代メキシコの理解に資するとともに、広く植民地化された世界各地での事例との比較を可能にする対照枠を提供する。
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研究実績の概要 |
全8回のミーティング・研究会の実施、学会発表の他に、研究成果論文集を電子書籍として出版した。個々の研究に関しては次の通り。大越は、野外調査をカンペチェ州とプエブラ州の村々で実施した。マヤ先住民がどのように植民地時代に成立した新しい居住空間を自分のものとしていったのかを、「あだ名」、「街角」をキーワードに分析材料を収集した。井上は、文献・フィールド双方の調査を進めた。文献については、主に現地調査時に今後必要なものを多く入手した。ユカタンおよびメキシコ中央部の調査では、歴史の資源化について情報や図像等の資料を多く集めることができた。青木は、メキシコ国立図書館において二言語文化間教育の実践例に関する資料を収集し、昨年度に入手した資料とあわせて分析した。その成果を学会で報告するとともに、学術論文を執筆し論集の一部として発表した。 杓谷は、ユカタン半島で「トレン・マヤ(Tren Mayaマヤ鉄道)」が12月半ばに開通する過程で、チチェン・イツァ遺跡公園の展示のあり様の変化、また地元住民の受け止めに関する調査を行った。嘉幡は、メキシコ現代社会の「古代遺産の資源化」を理解するため「トレン・マヤ」に試乗し、参与観察を通して現状理解に努めた。同時に、「古代人の空間認識」を理解するためにトラランカレカ遺跡で考古学調査を集中的に進めた。小林は、先住民族の文化的伝統の「非」先住民族による再活用の実態について、これまでの調査で得られたデータを精査し、その成果を論文や学術会議での口頭発表のかたちで報告した。渡辺は、メキシコ国立人類学博物館(MNA)民族誌展示室の従来の展示方法を、昨年の現地調査や歴史資料をもとに分析、その成果を学会で報告した。またMNA歴史資料室において、主に20世紀の民族誌展示に関わる資料を収集し、展示理念や方法の変遷を検討、成果を学会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大越は、マヤ先住民の空間認識の資源化についての研究を順調に進めている。野外調査を通じたデータ集積を行い、新たな調査地も開拓し、かつ数回の講演や研究発表を通じてこれを公にした。井上は、全体としては概ね予定通りに進めているが、資料の読み込みに関しては若干遅れ気味である。青木は、予定通りに進捗。今年度も予定通りメキシコの現地調査において必要な資料を収集し、それを昨年度に入手した資料とあわせて分析した成果を所属学会で口頭報告を行うとともに、学術論文として発表した。 杓谷は、国家による「トレン・マヤ」の急激な建設の進展と、これに対する地域社会、観光業界の冷ややかな反応は当初の想定を超えたものであるものの、現在進行形の現状把握は着実にできており、今後につながる形で進めることができている。嘉幡は、「トレン・マヤ」に関して、政府の功を焦る開通による弊害を把握すると共に、地元住人の期待と不安を理解することができた。「古代人の空間認識」に関して、極めて貴重なデータ並びに知見を獲得することができた。小林は、本研究課題の全期間の折り返し地点にあって、基軸テーマ②「歴史的遺産の活用」を構成する研究テーマ「非先住民による先住民の文化的伝統の活用と資源化」(D-3)は予定どおり進み、成果を報告することができた。 渡辺は、メキシコで現地調査を実施、MNA民族誌展示の変遷について、MNA歴史資料室にて資料を収集し、昨年度までに入手した資料等と併せて検討を進めている。またメリダ市周辺の歴史的建造物の現在の状態と用途を調査、文化遺産としての意味や価値を検討、地域遺産の資源化と遺産保護に関する一例として考察を進めている。さらに、20世紀の教科書におけるテノチティトラン創設神話の表現に関する学術論文の執筆を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
通常の研究会に加え、6月に全員が参加・発表する国際コロキアムを実施する。また、講演会やラ米関係以外の学会でのパネル発表を行う。個々の研究では、大越は、空間認識の資源化のデータ収集を継続し、マヤ文書等の分析を通して、先住民王族の「出自神話」の意味分析を開始する。井上は、現地調査で引き続き歴史(特に古代史)の資源化に関わる情報の収集を進める。今年度以降、国内で入手できる資料収集も進める。その上で史料の解読を進め、順次研究成果を学会発表や論文の形で公表する。青木は、19世紀後半から20世紀前半にかけて、先住民がどの様にメキシコのナショナル・アイデンティティの資源とされ、組み込まれたのかについて検討し、6月の国際学会での発表をもとにした学術論文の執筆を進める。 杓谷は、「トレン・マヤ」の開通によってチチェン・イツァ遺跡公園訪問者の見学ルートが大きく変えられるため、その完成時の遺跡公園内の地元住民の反応と、それに対する州政府や国立人類学歴史学研究所側の対応を調査する。小林は、研究テーマ「非先住民による先住民の文化的伝統の活用と資源化」(D-3)に関する成果を、国際学会(イタリア)で報告する。また、もう一方の研究テーマ「現代先住民コミュニティにおける共有地の構造とその管理」(B-3)についてデータの整理・分析を進める。渡辺は、メリダ市周辺の歴史的建造物群を例に、文化遺産の保存と活用において、現地で求められる価値や資源化の方向性が、学術的知見の普及等文化的価値に与える影響について考察し、6月の学会発表後学術論文にまとめる。またMNA民族誌展示の変遷と20世紀の初等中等教科書におけるテノチティトラン創設神話の表現に関する学術論文の執筆を進める。
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