研究課題/領域番号 |
23K25121
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補助金の研究課題番号 |
22H03867 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80040:量子ビーム科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉原 圭亮 名古屋大学, 素粒子宇宙起源研究所, 客員研究員 (30870901)
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研究分担者 |
中山 浩幸 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (10587900)
古賀 太一朗 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (10834468)
角野 秀一 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (70376698)
田中 秀治 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (80311124)
池田 仁美 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 准教授 (80370071)
梶 裕志 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教 (80444397)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
採択後辞退 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2022年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
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キーワード | ビーム診断 / SuperKEKB / Belle II / ビームロス / ロスモニター / アボートセンサー / コリメータ / ビーム診断システム / Belle II実験 / SuperKEKB加速器 / ビーム不安定性 |
研究開始時の研究の概要 |
SuperKEKBは順調に稼働している一方で, ビーム電流増加に伴って原因不明のビーム不安定性によるビーム損失の頻度が増加してきている。ビーム損失はコリメータなどの加速器機器に深刻な損傷を与えることがあるため, ビーム損失の原因究明を行うことは喫緊の課題となっている。そこで本研究ではビーム損失発生地点の特定や機器の健全性を確認するため, 高エネルギー分野と加速器分野の専門家からなる新しい研究体制を組織し, 汎用性の高い新しいビーム診断システムの開発を行う。具体的には高速ロスモニターを導入し, 高精度時間同期システムと組み合わせることで高性能ビーム診断システムの構築を目指す。
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研究実績の概要 |
SuperKEKB/Belle II 実験での物理成果を最大限にするためには目標とする50/abのデータ取得が不可欠である。SuperKEKBではルミノシティ向上を目指して運転を継続しているが、原因不明のビーム不安定性に起因した早いビームロスが頻発しており、運転における喫緊の課題となっている。このビームロスを調査するために高速ビーム診断システムの開発を行ってきた。具体的には、SuperKEKB加速器のリング内の各所に高速ロスモニター、アボートセンサー、ビーム振動測定器や音響センサーなどを設置し、ビームロスの発生地点の絞り込みを行い、ビームロス時の物理現象の理解を進めてきた。現象の解明には至っていないものの、2024年から始まった加速器運転で確実にビームロスを捉えることに成功するとともに、最大50μsのビームアボート高速化を実現することができた。これらの成果はこれまでも国内外の学会で発表しており、今後は複数論文をジャーナルへ投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究がスタートした2022年度よりEMTなどの新しい検出器を用いた高速ビームロスモニターの開発を行った。これらロスモニターをSuperKEKBのトンネル内に設置し、WhiteRabbitという高精度時間同期システムで時間同期をとることで、ビームロスの発生地点をある程度絞り込むことができた。早いビームロスの原因はまだ完全には解明できていないものの、ビームロスの確実な測定が可能となった。ビームロスを引き起こす物理現象を解明するため、音響センサーの開発を行った。リング内でアパーチャーの狭いコリメータ周辺に音響センサーを設置することで放電現象が観測されるかどうかの調査を進めている。また高速ビームアボート検出器をリングの上流に設置し、信号輸送経路を最適化することで、最大50マイクロ秒のビームアボート高速化を実現した。この結果、ビームロスによる加速器機器やBelle II検出器へを損傷を最小限に抑えて、順調に加速器運転を行うことができている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はビームロスを引き起こしている物理現象に対する理解を深めるため、ビームモニターから得られたデータの統合解析を進めていくことが重要だと考えている。また、ビームロスは大きなビーム振動の後にコリメータなどの口径の狭い部分でロスすることによって発生するが、異常ビーム振動自体は実際のビームロスよりも数周前(数十マイクロ秒前)から始まっていることがわかってきた。今後はビーム振動を測定するためのバンチ振動レコーダー(BOR)の開発を促進し、リング内の複数箇所に設置することで、振動の早期発見とより高速なビームアボートの開発を進めることが大事となる。今後は、これまでのビームモニター開発や高速アボートシステムの開発、ロスモニターのデータ解析の結果をまとめ、論文として公表する。また運転においては開発したビームモニターを活用し、ビームロスによる加速器や検出器の損傷リスクを最小限に抑え、安定した運転の実現とともに、SuperKEKB加速器のルミノシティを向上させていく。
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