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磁性体内部の磁区3次元可視化技術の開発と電磁鋼板への適用

研究課題

研究課題/領域番号 23K25133
補助金の研究課題番号 22H03879 (2022-2023)
研究種目

基盤研究(B)

配分区分基金 (2024)
補助金 (2022-2023)
応募区分一般
審査区分 小区分80040:量子ビーム科学関連
研究機関国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構

研究代表者

稲見 俊哉  国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光量子科学研究所 放射光科学研究センター, 上席研究員 (30354989)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2024年度)
配分額 *注記
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 11,570千円 (直接経費: 8,900千円、間接経費: 2,670千円)
キーワードX線磁気円偏光発光 / 磁区 / 方向性電磁鋼板 / 電磁鋼板 / 磁区イメージング / 3次元可視化
研究開始時の研究の概要

強磁性体内部での磁区の分布や、それぞれの磁区の外部磁場に対する応答は、電磁鋼板の低鉄損化など応用研究に深く関わっているにも拘らず、実は、適切な測定手法が無いため良く知られていない分野です。この問題に対し、近年、応募者はX線領域の新しい磁気光学効果「X線磁気円偏光発光」を発見しました。物質透過能に優れ、磁性に感度が高いという特長があり、これまで、この原理を利用した磁気顕微鏡の開発を行ってきました。本研究では、この顕微鏡を3次元的な磁区の観察ができるよう発展させ、方向性電磁鋼板を測定対象として、従来、計算や想像でしかなかった磁区の形を観察で明らかにし、デバイスの高性能化への貢献を目指します。

研究実績の概要

強磁性体の内部の磁区分布や、その磁場応答については、電磁鋼板の低鉄損化など応用研究に関わっているにも拘わらず、適切な測定方法が無いため、充分知られていない領域である。この問題に対し、研究代表者はX線領域の磁気光学効果「X線磁気円偏光発光」を2017年に発見した。物質透過能に優れ、磁性に感度が高いという特長があり、続いて当該原理を利用して、磁性体内部の磁区観察が可能な磁気顕微鏡の開発を行い、水平方向分解能10 μm、深さ方向は積分して観測する走査型磁気顕微鏡として2021年に完成させた。本基盤研究では、この成果を発展させ、深さ分解計測を実現し、磁区の3次元可視化を達成する。方向性電磁鋼板を測定対象とし、特徴的な補助磁区の構造など、従来、計算や想像でしかなかった対象を観察で明らかにし、現象の理解を進め、デバイスの高性能化への貢献を目指す。
本研究で用いる磁気顕微鏡は、集光光学素子、平行化光学素子、円偏光解析装置からなる。励起光として放射光X線を用い、これを集光光学素子で試料上に集光し、入射側の空間分解能を得る。試料からは特性X線が発せられ、これを平行化光学素子で集め、平行化し、後段の円偏光解析装置で円偏光度を求め、発光領域の磁化を推定する。平行化光学素子は受光領域が広く、出射側に空間分解能がない。しかし、平行化したX線の角度発散を制限すると受光領域を制限できることを見出し、この手法を用いて深さ分解計測を実現する。
2022年度は、3次元磁区測定で必要となる測定の高速化達成のため、大強度の準単色光を入射X線として用いた試行実験を実施し、これまでの4倍の検出強度を確認した。また、懸案であった深さ分解測定時の空間分解能について、実験的に見積もる目処がつき、測定データの特長を再現できる結果を得た。
2023年度は、測定の高速化についての放射光実験が採択されず、めぼしい進展はなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

当初の研究実施計画では、(i)充分な受光側の空間分解能を得るため、高精度の平行化ミラーを製作すること、(ii)3次元磁区測定で問題となる測定の高速化の解決のため、大強度の準単色光を入射X線として用いる測定系を構築する、の2点を開発要素として設定していた。しかし、(ii)に関し、当初の計画では予想していなかった問題が見つかった。まず、大型放射光施設SPring-8において、準単色光が利用でき、共用枠のあるビームラインとしてBL36XUを選び、実験を行うこととした。計画では、入射X線をスリットで切り出すことで充分な強度が得られるという試算であったが、予備測定の結果、充分な入射強度を得るためには、不要と考えていた集光ミラーの整備が必要なことが分かった。そこで、計画を変更し、2022年度には、(i)に代わって、入射X線集光用のミラーの設計製作を実施した。
また、2022年度に、受光面積が若干小さい集光ミラーを借用し、BL36XUで試行実験を行い、これまでの4倍の検出強度を達成できることを確認した。新しく製作した集光ミラーでは、受光面積を広げることができ、検出強度はいくらか増大する予定である。一方、(i)に関連して、これまでの測定結果を解析することにより、顕微鏡の空間分解能の形状を見積もることができた。これにより、デコンボリューションのような手法により、測定の不明瞭さを減少させることが可能になり、高精度平行化ミラーに頼らなくてもある程度の解析は可能になると考えている。また、分解能悪化の原因の解明にもつながる。
2023年度は、BL36XUでの高速化の実証実験を計画していたが、申請課題が採択されず、測定の高速化については進捗はなかった。また、これまでの深さ分解測定の開発についてまとめ、学会発表を行った。進捗状況については、高速化の実証実験が実施できなかったため、遅れている。

今後の研究の推進方策

上述したように、三次元磁区可視化の実証を目的に、2023年度後半の放射光実験課題を申請したが、採択されなかった。そこで、2024年度前半の放射光実験課題は、採択が確実な成果公開優先利用課題で申請した。しかしながら、BL36XUは優先利用枠の時間の上限が特別に低く設定されており、採択はされたものの、採択された時間では実験の実施は困難であり、辞退せざるを得なかった。制度の見直しを事務局に提言したが変更される可能性は低いので、2024年度後半の放射光実験課題は一般課題でBL36XUに申請する予定である。ただし、今一度、他のビームラインでの実施可能性も検討する。
実験内容は、当初計画の、補助磁区の3次元磁区測定と、低鉄損化材の3次元磁区測定のうち、前者を実施する。結果のまとめ、国内学会の発表、および論文の作成は、本基盤研究終了後に行う。
なお、2024年度後半の実験では、実績のある、前回借用したミラーを用いる予定である。優先利用枠で採択された場合は、予算をそちらに使う必要があるが、一般課題で採択されれば、2022年度製作した集光ミラーの整備を進める。ミラー保護用のアクリルケースの製作やミラー駆動用の自動ステージの購入、ステージ組み立てのためのアダプタの設計製作等を行う。

報告書

(2件)
  • 2023 実績報告書
  • 2022 実績報告書
  • 研究成果

    (12件)

すべて 2024 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 2件) 備考 (4件)

  • [雑誌論文] Observation of Buried Magnetic Domains in Grain-Oriented Electrical Steel2023

    • 著者名/発表者名
      Inami Toshiya、Sugawara Kento、Nakada Takahiro、Sakaguchi Yui、Takahashi Shin
    • 雑誌名

      IEEE Transactions on Magnetics

      巻: 59 号: 3 ページ: 1-6

    • DOI

      10.1109/tmag.2023.3237939

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] X 線磁気円偏光発光顕微鏡による方向性電磁鋼板の磁区の深さ分解測定2024

    • 著者名/発表者名
      稲見俊哉、菅原健人、中田崇寛、阪口友唯、高橋真
    • 学会等名
      日本金属学会2024年春期(第174回)講演大会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] X 線磁気円偏光発光を利用した方向性電磁鋼板の磁区観察2024

    • 著者名/発表者名
      稲見俊哉
    • 学会等名
      第99回SPring-8先端利用技術ワークショップ「X 線発光分光・高エネルギー分解能 XAFS 分光による電子状態研究」
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 方向性電磁鋼板の磁区観察 -X線磁気円偏光発光顕微鏡の開発-2022

    • 著者名/発表者名
      稲見 俊哉、菅原 健人、中田 崇寛、阪口 友唯、高橋 真
    • 学会等名
      第19回SPring-8産業利用報告会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] X線磁気円偏光発光顕微鏡を用いた方向性電磁鋼板のtransverse磁区の観察2022

    • 著者名/発表者名
      稲見 俊哉、菅原 健人、中田 崇寛、阪口 友唯、高橋 真
    • 学会等名
      第46回日本磁気学会学術講演会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] X線磁気円偏光発光を用いた方向性電磁鋼板の磁区観察2022

    • 著者名/発表者名
      中田 崇寛、阪口 友唯、高橋 真、稲見 俊哉、菅原 健人
    • 学会等名
      日本金属学会2022年秋期講演大会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] X 線磁気円偏光発光を用いた方向性電磁鋼板の磁区観察2022

    • 著者名/発表者名
      稲見 俊哉、菅原 健人、中田 崇寛、阪口 友唯、高橋 真
    • 学会等名
      第58回X線分析討論会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] X線磁気円偏光発光を用いたバルク敏感な磁気光学顕微鏡の開発2022

    • 著者名/発表者名
      菅原 健人、稲見 俊哉、中田 崇寛、阪口 友唯、高橋 真
    • 学会等名
      第58回X線分析討論会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [備考] 蛍光X線100年目の真実 ‐発見!磁石の向きでX線が変化する‐

    • URL

      https://www.qst.go.jp/site/press/1223.html

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [備考] X線磁気発光分光学の幕開け「X線磁気円偏光発光」のメカニズムを理論的に解明

    • URL

      https://www.qst.go.jp/site/press/46994.html

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書 2022 実績報告書
  • [備考] 放射光を使った磁石の奥まで透ける顕微鏡―X線発光の新原理を用い開発に成功―

    • URL

      https://www.qst.go.jp/site/press/20220125.html

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書 2022 実績報告書
  • [備考] 蛍光X線100年目の真実 ‐発見!磁石の向きでX線が変化する‐

    • URL

      https://www.qst.go.jp/site/press/1223.html

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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