研究課題/領域番号 |
23K25134
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補助金の研究課題番号 |
22H03880 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80040:量子ビーム科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
佐藤 真一郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子技術基盤研究所 量子機能創製研究センター, 上席研究員 (40446414)
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研究分担者 |
羽倉 尚人 東京都市大学, 理工学部, 准教授 (00710419)
土田 秀次 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50304150)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
2022年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
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キーワード | イオン注入 / 量子ビーム科学 / 量子ビット / 欠陥エンジニアリング / 照射欠陥 |
研究開始時の研究の概要 |
半導体中にイオン注入した不純物原子は、その電子準位を高度に制御することによって、量子計算や量子通信に不可欠な量子ビットとして用いることができるが、ナノメートル精度で複数の量子ビットを配列する(多量子ビット化)には未だ大きなハードルがある。本研究では、多様なイオン種・エネルギー範囲に対応できる汎用的な「単一ナノイオン注入」を開発し、これまで為し得なかった「半導体内に不純物原子(量子ビット)をナノメートル精度で自由自在に配置する」ことを実現し、量子技術基盤へのイノベーションをもたらす量子ビーム技術の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
半導体中にドープしたPドナーや遷移金属といった不純物原子は、その電子準位を高度に制御することによって、量子計算や量子通信に不可欠な量子ビットとして用いることができる。複数の量子ビットを操る量子デバイスを作製するためには、ナノメートルスケールの特定の位置に量子ビットを必要な数だけ配置しなければならないが、そのためには、ナノメートル精度で位置や数を高度に制御する単一イオン注入技術の開発が不可欠である。 昨年度(2022年度)は、ワイドギャップ半導体のひとつである窒化ガリウム(GaN)に対し、α線が入射した際に発生する誘起過渡電流を解析することで、単一イオンヒット検出が可能な条件の検討をおこない、量子ビット形成に用いられるエネルギー範囲である100keV以下のイオン注入の検出が可能であることを明らかにした。今年度は、タンデム加速器からのイオンビームを用いて、100keV~数MeVのイオンビームを照射した際のイオンヒット検出に挑戦した結果、信号の検出には成功したものの、入射エネルギーに対する系統的な結果を取得するには至っていない。 また、ナノスケールイオン注入の実現に向け、マイクロピンホールをつかった簡易マイクロビームを開発した他、ガラスキャピラリを用いた微小領域へのイオンビーム照射による量子ビット形成実験を行った。5μmφガラスキャピラリを透過したMeV級イオンビームの炭化ケイ素(SiC)半導体への照射により、量子ビットとなりうるスピン欠陥であるシリコン空孔を等間隔に配列して形成することに成功した。ただし、シリコン空孔の形成領域は約8μmφとガラスキャピラリの直径よりもやや大きく、配列間隔もナノメートルスケールよりもかなり大きいため、今後は形成領域・間隔の縮小を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノスケール単一イオン注入の実現に向け、単一イオンヒットの検出に成功している他、イオン照射によって形成した量子ビット候補(シリコン空孔)の等間隔配列には成功したことから、概ね予定通りと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、以下の方針で研究を推進する。 まず、単一イオン注入に関しては、単一イオンヒット検出用のデバイス構造を再検討し、検出確度・検出エネルギー閾値の改善を行う。入射エネルギーに対する検出信号強度や検出確度を評価し、100keV程度の重イオンビームを確実に検出する技術を確立する。同時並行にて、希土類イオンビーム加速のためのイオン源の開発を行い、希土類イオンビーム強度、安定性の評価を行う。希土類イオンビームの開発完了後、窒化ガリウムにプラセオジムやネオジムを注入し、その発光特性を、共焦点レーザー走査型蛍光顕微鏡にて評価する。 ナノスケールイオン注入については、ガラスキャピラリによる微小領域へのイオン照射については、ガラスキャピラリ径を100nmφ程度にまで縮小し、ナノスケール領域への注入+量子ビット配列を達成することを目指す。ナノメートル径キャピラリの作製については過去に事例がないため、最適な作製方法を考案する。 最後に、これらを組み合わせ、ナノイオンビームの単一イオン検出実験を行うとともに、ナノスケール間隔での単一イオン注入を行い、その注入領域配列を共焦点レーザー走査型蛍光顕微鏡にて観察する。
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