研究課題/領域番号 |
23K25136
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補助金の研究課題番号 |
22H03882 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80040:量子ビーム科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
佐藤 大輔 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (40780086)
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研究分担者 |
林崎 規託 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (50334537)
小川 博嗣 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (60356699)
吉田 光宏 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 教授 (60391710)
黒田 隆之助 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究グループ付 (70350428)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,770千円 (直接経費: 12,900千円、間接経費: 3,870千円)
2025年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | 誘電体加速管 / 高誘電率誘電体 / DLC / 誘電体アシスト型加速管 / 二次電子放出係数 / セラミック / 高周波加速管 / DAA管 / 誘電体加速 / 高誘電率セラミックス |
研究開始時の研究の概要 |
現在の常伝導加速管では達成困難な高い電力効率を有する電子線形加速器の実現を目指し、誘電体アシスト型加速管(Dielectric Assist Accelerating structure, DAA管)の高性能化と実用化に向けた種々の研究開発に取り組む。本研究では、申請者らが独自に考案したDAA管に対して、新たに高誘電率セラミックスの適用や低二次電子放出係数物質による保護膜技術等を複合的に適用することで、これまで以上の高電力効率と高電界加速を両立する高周波加速管の実現を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、既存の金属加速管における加速管性能の限界を超える電子加速技術として、高誘電率誘電体の高い電磁場蓄積能力とダイヤモンドライクカーボン(DLC)等の低二次電子放出係数保護膜技術を用いた誘電体アシスト型加速管(Dielectric Assist Accelerating structure, DAA管)を新たに提案し、既存の常伝導加速空洞の10倍以上高い電力効率を実現しつつ、高加速電界が励振可能であることを実証することを目的とする。 本年度は、初年度に引き続き、特に高誘電率セラミックスの探索に取り組んできた。DAA管は、使用する誘電体セルの誘電体の比誘電率が高く、誘電損失が小さいセラミックスを用いることで高いシャントインピーダンスを実現できる可能性がシミュレーションより示されている。今年度は、比誘電率が30以上の高誘電率誘電体の評価に主体的に取り組んできた。本研究では、高誘電率誘電体からなるウィスパーリングギャラリーモード誘電体共振器を製作し、高次の共振モードの共振特性を複数測定することで各誘電体材料の複素誘電率測定を実施した。具体的には、複数の共振モードの共振周波数間隔と各モードのQ値を基に複素誘電率を算出した。その結果、比誘電率が30以上で、誘電正接が8×10-5 以下の高誘電率かつ低誘電損失特性を有する誘電体材料で、C-band DAA管の誘電体セルを製作するのに必要な直径80mm以上の大型の誘電体材料を選定した。 DAA管のマルチパクタ放電の低減を目指した保護膜の探索として合計4種類のダイヤモンドライクカーボン膜をセラミック材料に成膜し、各種評価を実施した。その結果、水素化アモルファスカーボン膜が二次電子放出係数の低減という観点から優れた保護膜としての機能を有する可能性が示唆された。 ビーム試験に向けて高周波源、立体回路、モード変換器等を整備・組立まで完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、Ba-Mg-Ta酸化物セラミックスをはじめ高誘電率セラミックスの評価・選定に重点的に取り組み、比誘電率が30以上と非常に高いにもかかわらず、誘電正接が8×10-5 以下と低誘電損失な誘電体材料にたどり着いたのは、当初の想定以上の成果となった。しかも、既にC-band DAA管の誘電体セルの製作に必要な直径80mm以上の大口径まで製作に成功し、非常に大きな成果となった。DLC膜の選定に関しても水素化アモルファスカーボン膜が二次電子放出係数の低減という観点で非常に優れた保護膜としての機能を有することが明らかとなり、DAAの高電界化に向けて大きな成果となった。一方で、DAA管の高電界試験・ビーム加速試験に関しては、実験設備の構築までにとどまり、実験までに至っていない。但し、上記の誘電体材料で誘電体セルを製作することで速やかに高電界試験・ビーム加速試験を実施できる段階まで到達している。以上の点を総合的に評価した結果、おおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度選定した高誘電率誘電体材料を用いた2セルのDAA管の開発に取り組む。2セルDAA管の高周波設計は完了しており、当該設計に基づいて機械設計・加工の後にDAA管を製作する。DAA管製作後はベクトルネットワークアナライザにて低電力試験を行い、設計通りの高周波特性が得られていることを確認する。その後、本年度開発したC-band DAA管テストベンチに搭載し、RFエージングを行った後に最終的にはDAA管によるビーム入射試験まで実施する計画である。 次年度の後期には、これまでの研究成果を基にDAA管の実用化に向けてより長いマルチセルDAA加速管の設計・製作に取り組む。長尺化に向けて、π/2モードのAPS空洞や2/3πモード進行波型など新たな加速管構造を検討する。長尺化に伴い近接する高次高調波モードとの分離などを高周波計算により検討する。最終的には加速管性能やアセンブリ方法、冷却方法等を総合的に検討し、長尺加速管に必要なセラミックスセル・銅加工品を含めて各種製作を開始する計画である。
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