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認知バイアスから自閉症者の行動を探る:自閉症者の診療場面における説明再考に向けて

研究課題

研究課題/領域番号 23K25165
補助金の研究課題番号 22H03911 (2022-2023)
研究種目

基盤研究(B)

配分区分基金 (2024)
補助金 (2022-2023)
応募区分一般
審査区分 小区分90030:認知科学関連
研究機関東京大学

研究代表者

植田 一博  東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (60262101)

研究分担者 本田 秀仁  追手門学院大学, 心理学部, 准教授 (60452017)
熊崎 博一  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (70445336)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2024年度)
配分額 *注記
16,640千円 (直接経費: 12,800千円、間接経費: 3,840千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2022年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
キーワード判断・意思決定 / 自閉症 / コミュニケーション / 社会的学習 / 認知バイアス
研究開始時の研究の概要

本研究では、自閉症に関わるコミュニケーションの問題を、人が行う判断・意思決定の観点から捉え直す。それにより、話者の意図である参照点の推論や、物事を表現するフレームによる判断の調整が求められる、社会的な場面での判断・意思決定において、定型発達者が示す認知バイアスを自閉症者は示しにくいという仮説を検証する。具体的には、話者の参照点に基づく意思決定(研究1)、人口推定課題を用いた表現フレームに関する推論(研究2)、社会的学習(研究3)の3つの課題を検討する。得られた知見を、自閉症者診療における誤解のない説明法や自閉症者の社会適応へと応用することで、研究成果の社会還元を目指す。

研究実績の概要

人口推定課題を用いた表現フレームに関する実験を実施した。人口推定課題とは「2つの都市のうち人口が多い方はどちらか」を問う課題である。定型発達者(TD者)を対象にした先行研究では、2都市のうち、再認できる (Gigerenzer & Goldstein, 2002) またはより馴染み深い (Honda et al., 2017) 都市を「人口が多い」と考えるヒューリスティックを用いて、TD者は多くの場合に正確に回答できることが知られている。さらに、「2つの都市のうちどちらの方が、人口が多いか」という表現(larger frame)で回答させる場合と、「2つの都市のうちどちらの方が、人口が少ないか」という表現(smaller frame)で回答させる場合とでは、あまり一般的でない後者のsmaller frameで聞かれたときの方が、上記のヒューリスティックが利用されにくいことが示されている (McCloy et al., 2010)。フレームによってヒューリスティックの利用頻度が変わるというTD者が示す上記の傾向を自閉症者(ASD者)は示しにくいことを実験的に検討した。
ASD者48名、TD者53名が実験に参加した。ASD者は全員、精神科医である研究分担者の熊崎によってDSM-5およびDISCOに基づきASDと診断された。その結果、両群ともlarger frameで回答を求めた場合のほうがヒューリスティックの利用頻度が高く、また回答時間も短くなり、ASD者、TD者ともに回答の際にフレームの影響を受けていることが明らかになった。このことは、「TD者が示す認知バイアスをASD者は示しにくい」という仮説が成立する境界を、課題で求められる認知プロセスと、ASD者とTD者がそれぞれ示す認知傾向の相互作用の視点から精緻化し、再考する必要があることを示している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

仮説は支持されない結果であったが、実験そのものは予定通り終了した。

今後の研究の推進方策

研究計画調書に記載した研究3を実施する。TD者は、2つの変数からその繋がりを推測するときに、実際には存在しない「正の相関」を見いだす強いバイアスを示す。しかもそのバイアスは、社会的学習を通じて雪だるま式に膨らむことが知られている。社会的学習に関してTD者が示すこのようなバイアスをASD者も示すかどうかを検討する。具体的には、Kalish et al. (2007) に倣って実験を実施する。すなわち、【A条件】y = x(正の相関)、【B条件】y = 101 - x(負の相関)、【C条件】x, y 間に関係なし、をそれぞれ満たすように、{1, …, 100}から無作為に選んだ50点の x, y 座標の数値を最初の世代(gen = 1)の実験参加者に提示し、そのデータを学習させたのち(学習フェーズ)、学習済みの25点と学習していない25点の x, y 座標の数値を回答させる(テストフェーズ)。gen = 1のテストフェーズの50点の x, y 座標の数値を次の世代(gen = 2)の参加者に提示し、同様に学習とテストを行わせる。このような世代間の学習を gen = 3 まで繰り返し、その結果生じる x, y の関係性を検討する。参加者群として、TD者群とASD者群の2群を設ける。ASD者の人数を確保することが難しいため、それぞれが3回実験に参加するようにラテン方格の実験計画を採用する。具体的には、gen = 1, 2, 3の順にA, B, Cの各条件を実施するグループ、B, C, Aの各条件を実施するグループ、C, A, Bの各条件を実施するグループの3つにわける。各群の参加者数は30名程度を予定している。TD者はどの条件でも gen = 3で正の相関を読み込むバイアスを見せるのに対して、ASD者ではこのバイアスが弱いという結果が得られると期待している。

報告書

(2件)
  • 2023 実績報告書
  • 2022 実績報告書
  • 研究成果

    (21件)

すべて 2024 2023 2022

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] エラーか合理性理解の出発点か?――認知バイアスの意味を再考する――2023

    • 著者名/発表者名
      本田 秀仁
    • 雑誌名

      基礎心理学研究

      巻: 42 号: 1 ページ: 128-133

    • DOI

      10.14947/psychono.42.22

    • ISSN
      0287-7651, 2188-7977
    • 年月日
      2023-09-30
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] バイアス概念の再検討から思考研究のこれまでとこれからを考える2023

    • 著者名/発表者名
      本田 秀仁、鈴木 宏昭
    • 雑誌名

      認知科学

      巻: 30 号: 1 ページ: 18-27

    • DOI

      10.11225/cs.2022.071

    • ISSN
      1341-7924, 1881-5995
    • 年月日
      2023-03-01
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] On an effective and efficient method for exploiting the wisdom of the inner crowd2023

    • 著者名/発表者名
      Fujisaki Itsuki, Yang Kunhao, Ueda Kazuhiro
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 13 号: 1 ページ: 1-12

    • DOI

      10.1038/s41598-023-30599-8

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 人間らしさを理解する;医療現場におけるよりよい判断や意思決定の実践に向けて2023

    • 著者名/発表者名
      本田 秀仁
    • 雑誌名

      患者安全推進ジャーナル

      巻: 72 ページ: 76-82

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [雑誌論文] The psychological link between decisions and communicative behavior based on verbal probabilities2023

    • 著者名/発表者名
      Honda Hidehito、Matsuka Toshihiko、Ueda Kazuhiro
    • 雑誌名

      PsyArXiv

      巻: - ページ: 1-86

    • DOI

      10.31234/osf.io/5xgj6

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • オープンアクセス
  • [学会発表] 自閉症者の不気味の谷現象に関する研究:実験および顔の特徴量分析による検討2024

    • 著者名/発表者名
      李 ル、今泉 拓、西川 菜月、熊崎 博一、植田 一博
    • 学会等名
      HAIシンポジウム2024
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] Does Machine Learning Replicate the Uncanny Valley? An Example using FaceNet2023

    • 著者名/発表者名
      Imaizumi Taku, Li Lu, Ueda Kazuhiro
    • 学会等名
      The 45th Annual Conference of the Cognitive Science Society
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 不気味の谷とアニマシー知覚から人工物に対する信頼を考える2023

    • 著者名/発表者名
      植田 一博
    • 学会等名
      第37回人工知能学会全国大会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 不確実性理解に基づく意思決定:自閉スペクトラム症者と定型発達者の比較に基づく個人差の分析2023

    • 著者名/発表者名
      本田 秀仁、熊崎 博一、植田 一博
    • 学会等名
      日本心理学会第87回大会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 機械学習は不気味の谷を理解するか:FaceNetを例にして2023

    • 著者名/発表者名
      今泉 拓、李 ル、植田 一博
    • 学会等名
      日本認知科学会第40回大会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] バイアスを解消する・合理性を高める:よりよい判断や意思決定に導くための方法を考える2023

    • 著者名/発表者名
      本田 秀仁
    • 学会等名
      第122回日本皮膚科学学会総会教育講演 60[共通講習:医療安全・感染対策]:新時代の医療安全・感染対策
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] コグニティブ・インタラクション―インタラクション研究における認知モデリングの重要性―2023

    • 著者名/発表者名
      植田 一博
    • 学会等名
      HAIシンポジウム2023
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 人間らしさを理解する:医療現場におけるよりよい判断や意思決定の実践に向けて2023

    • 著者名/発表者名
      本田 秀仁
    • 学会等名
      認定病院患者安全推進協議会2022年度患者安全推進全体フォーラム
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] How does the latent scope bias occur? Cognitive modeling for the probabilistic reasoning process of causal explanations under uncertainty2022

    • 著者名/発表者名
      Tsukamura Yuki, Wakai Taisei, Shimojo Asaya, Ueda Kazuhiro
    • 学会等名
      The 44th Annual Conference of the Cognitive Science Society.
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 自閉症者の不確実性理解と意思決定:言語的確率表現を用いた実験的検討2022

    • 著者名/発表者名
      本田 秀仁、熊崎 博一、植田 一博
    • 学会等名
      日本認知心理学会第19回大会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] 不気味の谷現象に関する自閉スペクトラム症者と定型発達者の比較:カテゴリー知覚からの検討2022

    • 著者名/発表者名
      李 ル、河村 典枝、熊崎 博一、植田 一博
    • 学会等名
      日本認知科学会「知覚と行動モデリング」研究分科会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] Latent scope bias は全員に生起するか? ―主観確率データとベイズ統計モデリングによる検討―2022

    • 著者名/発表者名
      塚村 祐希、若井 大成、下條 朝也、植田 一博
    • 学会等名
      日本認知科学会第39回大会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] 不気味の谷現象に関する自閉スペクトラム症者と定型発達者の比較:カテゴリー知覚からの実験的検討2022

    • 著者名/発表者名
      李 ル、河村 典枝、熊崎 博一、植田 一博
    • 学会等名
      日本認知科学会第39回大会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] エラーか合理性理解の出発点か? バイアスの意味を再考する2022

    • 著者名/発表者名
      本田 秀仁
    • 学会等名
      基礎心理学会第41回大会シンポジウム3:ヒューマンエラーの基礎心理学
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [図書] やさしくわかる! 文系のための東大の先生が教える バイアスの心理学 : はじめて学ぶ人でも、どんどん楽しく読める!2023

    • 著者名/発表者名
      植田 一博
    • 総ページ数
      304
    • 出版者
      ニュートンプレス
    • ISBN
      9784315527476
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [図書] コグニティブインタラクション2022

    • 著者名/発表者名
      植田 一博、大本 義正、竹内 勇剛
    • 総ページ数
      280
    • 出版者
      オーム社
    • ISBN
      9784274228896
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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