研究課題/領域番号 |
23K25175
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補助金の研究課題番号 |
22H03921 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
西沢 望 北里大学, 理学部, 講師 (80511261)
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研究分担者 |
口丸 高弘 自治医科大学, 医学部, 准教授 (10570591)
島田 周 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (20609705)
田中 真二 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (30253420)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2022年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
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キーワード | がん組織評価 / 円偏光 / 光学生検 / スキルス胃がん / 早期がん / 早期胃がん / がん深達度計測 / 生体模型 / 深達度計測 |
研究開始時の研究の概要 |
円偏光を生体組織に照射すると主に組織内の細胞核によって多重散乱され、徐々に偏光が減衰(偏光解消)する。この偏光解消の度合いを評価することによって組織状態の差異を検出、評価することができる。本研究全体の目的は、円偏光散乱による偏光解消を利用し、無染色・非侵襲でかつ生体内その場観察が可能な新規がん検出・評価技術を創成することである。本研究課題では特に既存のイメージング技術では検出や評価が困難である①スキルス胃がんの検出、および②初期の消化器系がんの深達度(がん進行度)の定量計測の可否を実験と計算の両面から検証し、さらに③実際のがん評価素子を開発し、その機能を実証する
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研究実績の概要 |
本研究は、生体組織中の多重散乱による円偏光の解消を用いた円偏光散乱法による生体組織中のがん評価技術を確立することを目標とし、既存のイメージング技術では検出や同定が困難な(1)瀰漫性の胃がん(スキルス胃がん)の検出、および(2)初期の消化器系がんの深達度(がん進行度)の非侵襲な定量的計測をターゲットとし、両ターゲットに対してシミュレーションと実験の両面から研究を遂行した。 (1)前年度までにシミュレーションにより組織内のがん細胞の割合に応じた偏光度の変化が示され、がん細胞の割合20%以上であれば検出が可能である結果が得られた。今年度はスキルス胃がんのモデルマウスの胃検体を準備し、円偏光照射、検出実験を実施した。その結果、円偏光計測においてがん細胞比の高いと考えられる点を特定できた。現在、断面組織観察との対比を進めている。また、試行数として検体数を増やすための準備を進めている。 (2)前年度までに人工的に作成したがん/正常組織の2層構造検体に対して円偏光を照射しその散乱光の円偏光度を測定し、がん層厚に応じた散乱光偏光度の変化が観測され、変化の傾向はシミュレーションの結果とよく一致することを確認した。今年度は主に偏光イメージング技術との融合によりイメージングによるがん深達度計測を試みた。その結果、これまでの各点毎の測定における誤差を低減することができ、より高い精度で深達度を測定することができることを実証した。照射光の波長を変調し、2波長測定とすることで表面の凹凸や他の因子に由来する偏光解消成分を除去する試みを進めている。 これらに並行して生体模型の作製に着手した。透明樹脂に細胞核を模したポリスチレンビーズを拡散させ、紫外線照射により硬化、積層することで偏光散乱用の生体模型として用いる。現状、ビーズの凝集が生じてしまうことが問題となっており、分散性の向上に対して取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)スキルス胃がん検体に対する実験は順調に進み、複数の検体に対して円偏光照射実験を実施することができた。さらなるマウスの準備および測定したマウス検体の断面組織観察が装置トラブルなどにより頓挫しているが、それらの問題については解消されつつある。また、その間に円偏光実験における改良が進み、ラインスキャン、エリアスキャンなどの自動測定プログラムの開発を進めた。手動操作が多い既存の測定システムでは測定中に検体表面の乾燥が進み表面状態の経時変化が結果に大きく寄与してしまうとう問題が発生していたが、自動測定プログラムによりこれらの問題は解決に向かっている。 (2)前年度までに人工的に作成したがん/正常組織の2層構造検体に対して円偏光を照射しその散乱光の円偏光度を測定し、がん層厚に応じた散乱光の偏光度変化が観測され、変化の傾向はシミュレーションの結果とよく一致することを確認した。今年度は主に偏光イメージング技術との融合によりイメージングによるがん深達度計測を試みた。その結果、これまでの各点毎の測定における誤差を低減することができ、より高い精度で深達度を測定することができることを実証した。特に目標としているがん層厚1.0mm前後の判別においては円偏光度変化が既存よりも3倍程度大きくなったことで観測精度を達成した。 これらに並行して生体模型の作製に着手した。細胞質と細胞核の屈折率比に対応する樹脂材料と粒子状材料を選定し、紫外線硬化型透明樹脂とポリスチレンビーズを用いることに決定した。これらの混合溶液に紫外線照射により硬化、積層することで偏光散乱用の生体模型を作製した。現状、樹脂内でビーズが凝集することや水分が混入することが問題となっており、乾燥ビーズを使うなどによる分散性の向上に対して取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)次年度はスキルス胃がんの検体に対する測定および円偏光測定を行った検体の断面観察などを進め、学会及び論文による報告行う。特に光学的手法による瀰漫性がん検出に関しては前例のない技術であると考えられるので本研究課題の大きな目標として今年度中の達成を目指す。 (2)生体試料のような複雑な系に対する実験報告では物理的に散乱による偏光解消の主因を明確にすることが難しい。そのため主因と考えている細胞核径の変位のみを抽出した生体模型を作製し、生体試料との比較が必要である。今年度中にスキルス胃がんおよび進行がんに対する生体模型の作製とそれらに対する円偏光散乱実験を実施する。シミュレーション、生体試料に対する実験と合わせて円偏光散乱によるがん深達度計測の成果をまとめる予定である。 (3)内視鏡に搭載可能な円偏光測定デバイスの開発を進める。直線偏光の4成分を同時測定可能な既存の偏光カメラを準備し、円偏光板を介してがん深達度計測においてこれまでの実験結果を再現できるかを試行する。その後、円偏光板をCCD表面に塗布し、小型化を試みる。
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