研究課題/領域番号 |
23K25179
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補助金の研究課題番号 |
22H03925 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
山子 剛 宮崎大学, 工学部, 准教授 (50452074)
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研究分担者 |
帖佐 悦男 宮崎大学, 医学部, 教授 (00236837)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2022年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
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キーワード | 半月板損傷 / 変形性膝関節症 / バイオメカニクス / インプラント / 半月板切除術 / 生体力学 / 半月板インプラント / 半月板 |
研究開始時の研究の概要 |
加齢変性や怪我によって半月板を大きく損傷した場合の有効な治療は切除術しかない.申請者らは半月板損傷後に進行する変形性膝関節症を防いで膝軟骨を守る「Float-ring」型の非吸収性インプラントを開発している.本研究では膝関節のMR画像を用いて患者個別の有限要素解析モデルを作成し,歩行など日常動作やスポーツ動作などを想定した力学環境下でのインプラントの力学的挙動を解析することによって,荷重分散による軟骨の保護効果を明らかにする.さらに射出成形によるインプラントの製造方法を確立すると共に力学的特性を評価する.
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研究実績の概要 |
令和5年度は① MR画像を用いた有限要素解析の高精度化、② ブタ膝関節を用いたインプラント設置後の関節面接触面圧力の計測、③ インプラントの長期耐久性の評価に取り組んだ。具体的には以下の通りである。 ①膝関節のMR画像を用いて有限要素解析モデルを構築した。歩行や日常生活動作を想定した動的荷重下におけるインプラントの力学挙動を評価するために、靭帯などの軟部組織の張力を考慮した5自由度の膝関節モデルが必要である。しかし、膝関節の不安定性が生じたことから、靭帯や関節包による張力を最適化する必要が示唆された。 ②有限要素解析によるインプラントの力学挙動を検証する目的として、ヒト膝関節と比較的大きさの等しい三元豚の膝関節を用いてインプラント設置後の関節面接触圧力を計測した。なお、靭帯などの軟部組織の影響を無視するために内側部分のみに荷重が作用するように力学試験を実施した。荷重分散性を明らかにした一方で、膝関節の弛緩性や接触状況は靭帯切除などによって結果が大きく変化することから、生理学的な関節の接触状況を再現できる試験方法の確立が重要との結論を得た。 ③インプラントの長期耐久性の評価では、インプラントを射出成形により試作すると共にマイクロCT装置を用いて非破壊検査を実施した。その後、術後10年を想定した1000万回の繰り返し圧縮負荷を与えた時の力学特性(圧縮剛性,損失正接)の変化を評価した。さらに、インプラントのクリープ変形によるクッション性への影響を評価した。インプラント内部にボイドや異物がないこと、準静的圧縮試験により設計で求めていた値を達成できていることを確認した。さらに、1000万回の繰り返し負荷後においても剛性と損失正接に大きな変性は見られないこと、初期クリープ変形によるクッション性への影響は限定的であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究によって以下の知見が得られた. ①MR画像を用いた有限要素解析の高精度化において、より生理学的な状況を踏まえた膝関節の有限要素解析を実施するためには靭帯などの張力を最適化する必要が示唆された。 ②ブタ膝関節を用いたインプラント設置後の関節面接触面圧力の計測では、膝関節の弛緩性や接触状況は靭帯切除などによって大きく変化することから、生理学的な関節の接触状況を再現できる試験治具を考案した。 ③インプラントの長期耐久性の評価では、インプラントの射出成形条件を見出すと共に内部にボイドや異物がないことを確認した。さらに準静的圧縮試験によってインプラントの力学挙動が設計で求めていた値を達成できていることを確認した。疲労試験では1000万回の繰り返し負荷後においても剛性と損失正接に大きな変性は見られなかった。繰り返し負荷の初期のクリープ変形によるクッション性への影響は限定的であることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は引き続き① MR画像を用いた有限要素解析の高精度化、② ブタ膝関節を用いたインプラント設置後の関節面接触面圧力の計測、③ インプラントの製作および長期耐久性の評価に取り組む.具体的には以下の通りである。 ① 現状の膝関節の有限要素モデルでは軟部組織の張力が未定のため、膝関節に不安定性を生じている。文献を参考にして張力の最適化や適切な拘束条件の付与を考慮する。さらに、現在は歩行の最大荷重時を考慮した負荷をモデルに与えていたが日常生活動作である歩行や立ち上がりなど動的な負荷を与えたときのインプラントの挙動を解析する。 ②ブタ膝関節を用いたインプラント設置後の関節面接触面圧力の計測では、より生理学的な関節の接触状況を再現する試験治具を設計・製作する。そして、立位荷重下における関節面の接触圧力をタクタイルセンサを利用して計測し、インプラントのクッション性を明らかにする予定である。 ③インプラントの製作および長期耐久性の評価では、材質、形状やサイズの違いによる疲労特性(圧縮剛性,損失正接)の変化を評価する。術後10年を想定した1000万回の繰り返し圧縮負荷を与えた時の力学的特性(圧縮剛性,損失正接)の変化を評価する。
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