研究課題/領域番号 |
23K25210
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補助金の研究課題番号 |
22H03956 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90120:生体材料学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
新留 琢郎 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (20264210)
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研究分担者 |
澤 智裕 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (30284756)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2023年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2022年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
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キーワード | 細胞内寄生菌 / 薬物送達システム / 抗菌薬 / ナノ粒子 / 銀ナノ粒子 / マクロファージ / ポリ乳酸 / ポリマーナノ粒子 / サルモネラ / 抗酸菌 |
研究開始時の研究の概要 |
結核などの細胞内寄生菌による感染症は抗菌薬が効きにくい。細胞内寄生菌まで正確に薬物を送達させるシステムがそれを解決するが、未だ有効な手段は見出されていない。本研究では、細胞内の寄生菌まで薬物を送達する革新的な技術の開発を目指す。薬物キャリアとなるナノ粒子の感染細胞内への取り込みを解析し、寄生菌と共局在するナノ粒子の探索を行う。また、細菌感染細胞と非感染細胞の表面タンパク質の差異あるいはナノ粒子の取り込み挙動の差異を明らかにする。まずは細胞内寄生性がよく研究されているサルモネラ菌を対象に研究を開始し、臨床上重要な結核菌やリステリア菌感染治療への展開を視野に入れた新規な薬物送達法の構築に挑戦する。
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研究実績の概要 |
銀ナノ粒子を内包したポリ乳酸ナノ粒子について、その基本的な性質について評価した。そのサイズはおよそ250nm、表面電荷はマイナスであり、マクロファージに選択的に取り込まれるであろう性質であった。また、粒子全体における銀の量はおよそ5%であった。ポリ乳酸ナノ粒子に内包することで、浮遊サルモネラ菌に対する抗菌活性は低下した。これは銀ナノ粒子からの銀イオンの放出がポリ乳酸により抑制されたためである。一方、マウスマクロファージ由来RAW細胞に対する細胞毒性を評価した結果、銀ナノ粒子を内包したポリ乳酸ナノ粒子はPEG修飾銀ナノ粒子(ポリ乳酸に内包されていない銀ナノ粒子)に比べ高い毒性を示し、それは、ポリ乳酸ナノ粒子がRAW細胞に取り込まれやすく、細胞内で多くの銀イオンを放出したからと考えられた。実際にサルモネラ菌が寄生しているRAW細胞に銀ナノ粒子内包ポリ乳酸ナノ粒子を添加した結果、寄生菌を効率よく傷害することがわかった。さらに、蛍光顕微鏡で、細胞内のサルモネラ菌とナノ粒子の局在を観察した結果、一部が共局在しており、そこで、サルモネラ菌が傷害されると考えられる。 一方、ポリ乳酸以外の修飾方法についても評価した。細胞表面の糖鎖を認識するタンパク質で銀ナノ粒子を修飾した結果、細胞内への取り込み量が増加し、また、明確な細胞内寄生菌の減少が観察された。さらに電子顕微鏡でサルモネラ菌と銀ナノ粒子の共局在を調べた結果、細胞内で菌体膜に銀ナノ粒子が結合している様子が観察できた。また、細菌から放出される膜小胞(細胞壁の成分を含んでおり、宿主細胞表面で認識されることを期待)による修飾においても、明確な細胞内取り込みと細胞内寄生菌の傷害活性の向上が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
銀ナノ粒子にポリ乳酸をはじめ、糖認識タンパク質や膜小胞で修飾し、細胞内寄生菌にたいする傷害活性を向上させることに成功した。電子顕微鏡による詳細な細胞内局在を評価することにも成功し、当初の計画通りに研究は進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
細菌が放出する膜小胞は細菌の外膜成分を有し、マクロファージや樹状細胞といった免疫細胞に認識され、刺激する。最終年度は、この膜小胞で修飾した銀ナノ粒子を作製し、その効果を評価したい。例えば、サルモネラ菌以外にも大腸菌、緑膿菌といったグラム陰性菌の膜小胞に加え、黄色ブドウ球菌や乳酸菌といったグラム陽性菌、さらに、ミコールを細胞壁にもつ抗酸菌の膜小胞で銀ナノ粒子を修飾し、マクロファージの応答および取り込みを評価し、免疫刺激も組み合わせた細胞内寄生菌傷害システムを構築したい。対象とする寄生菌についても、サルモネラ菌以外にも本件の初年度から準備を開始したMycobacterium aviumの感染モデルを構築し、様々な表面修飾を施した銀ナノ粒子の寄生菌傷害活性を評価する。この結果は、臨床でも課題になっている肺マック症の新たな治療技術を提案するだけでなく、未だにアジアアフリカで多くの感染者を出し、その治療が難しい結核の対策にもつながるものと期待する。
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