研究課題/領域番号 |
23K25215
|
補助金の研究課題番号 |
22H03961 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90120:生体材料学関連
|
研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
長濱 宏治 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 教授 (00551847)
|
研究分担者 |
小野寺 智洋 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (70547174)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2022年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
|
キーワード | 細胞架橋ゲル / 組織工学 / メカノバイオロジー / バイオマテリアル / インジェクタブルゲル / 細胞移植 / 生体直交型反応 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究期間では、細胞架橋ゲルが高い組織再生を示す組織の全容を把握する。また、細胞架橋ゲルが示す高い組織再生促進効果の作用メカニズムを分子、細胞レベルで解明し、エビデンスがある再生医療技術にする。これらの知見に基づき、細胞架橋ゲルの高分子部分および細胞のアジド化部分の分子設計を最適化し、さらなる高い組織再生効率を達成する。
|
研究実績の概要 |
ヒト筋衛星細胞をアジド化マンノサミン存在下で2日間培養してアジド化筋衛星細胞を作製した後、複数のジベンゾシクロオクチン基 (DBCO) を導入した直鎖型アルギン酸とクリック架橋反応させることで筋衛星細胞ゲルを作製した。各種筋衛星細胞架橋ゲルおよびコントロールの筋衛星細胞内包ゲル(筋衛星細胞がアルギン酸が連結していない)に対して、10%のひずみが生じるように10分間だけ圧縮刺激を与えて核の形態変化を評価した結果、細胞架橋ゲル内の細胞核は大きく歪んで扁平化したが、細胞内包ゲルでは核扁平化は起こらなかったことより、細胞架橋ゲルでは与えたメカノシグナルが力学伝導体であるアルギン酸を介してゲル内の細胞に伝わり、細胞が受けたメカノシグナルがそのまま核に伝わり核が扁平化したと考えられる。骨格筋組織で発生する伸展刺激をin vitroで再現する伸展培養装置を用いて、筋衛星細胞架橋ゲルおよび内包ゲルを培養し、分化にかかる転写共役因子YAPの核内移行および筋分化について評価した。その結果、細胞架橋ゲルではYAPの核内移行が短時間で促進されたが、細胞内包ゲルではYAPの核内移行は見られなかった。以上の結果より、筋衛星細胞架橋ゲルでは、筋衛星細胞がメカノシグナルを生化学シグナルにトランスデュースするのではなく、メカノシグナルのままダイレクトに且つ素早く核に伝達することができることが分かった。大腿筋損傷マウスに筋衛星細胞架橋ゲルおよび細胞内包ゲルを投与し、筋力の変化および再建部位の組織学的評価を行った結果、細胞架橋ゲルでは元の筋力レベルまで回復が見られ、再建組織の大部分は筋線維であったが、細胞内包ゲルではほとんど筋力は回復せず、また線維化した組織が再建された。以上の動物実験はin vitro実験で得た知見と一致しており、力学刺激を活用することの意義を実証できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度の主たる達成目標は、骨格筋組織をモデルにして、筋衛星細胞架橋ゲルで「細胞が力学刺激を知覚 ⇒ 細胞応答に変換」の機構を分子・細胞・組織レベルで解明することであり、全容解明には至っていないが、主要な物質を見出すことに成功し、メカノシグナル伝達の流れを理解することができた。また、別の目標として、最大の組織再生効果を生む細胞架橋ゲルの最適化に資する知見を得ることを挙げていたが、細胞に導入するアジド基数、アルギン酸に導入するDBCO数、アルギン酸-DBCO濃度を変化させると、細胞架橋ゲルの骨格筋再生効率が変化することを見出だしたため、計画の通り2024年度には最適化に至ると見込まれる。以上より、本研究が概ね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
申請時の研究計画に変更なく今後の研究を進めることができる。具体的に、力学刺激がゲル内部の筋衛星細胞に伝わり、筋分化が起こる過程を詳細に検討し、力学刺激がゲル内部の細胞のどこに伝わり、どのように細胞内部に伝わり、どのように筋分化を促進するのか、メカニズムの全容を理解する。また、細胞架橋ゲルの仕組みが筋分化を促進した後、どのような機構で筋組織形成を促進し、筋再生効率を高めるのかについても全容理解を試みる。 また、細胞架橋ゲルの有効性を心筋・軟骨・骨で検証する。各組織に対応する細胞(心筋:心筋前駆細胞、軟骨:軟骨前駆細胞・間葉系幹細胞、骨:骨芽細胞・間葉系幹細胞)で細胞架橋ゲルを作製し、in vitro実験およびin vivo実験を行い分化・組織化・再生が促進されるのか調べることで、細胞架橋ゲルの有効性を組織ごとに理解する。 さらに、細胞のアジド基導入数、アルギン酸のDBCO導入数、細胞濃度、アルギン酸-DBCO濃度を任意に変化させ、細胞架橋ゲルの力学特性(ゲル内部の細胞に伝わる力学刺激)を調整することにより、骨格筋組織で最大の再生効果を与える細胞架橋ゲル技術に最適化する。
|