研究課題/領域番号 |
23K25223
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補助金の研究課題番号 |
22H03969 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90130:医用システム関連
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
森本 展行 島根大学, 学術研究院機能強化推進学系, 教授 (00313263)
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研究分担者 |
城 潤一郎 大阪歯科大学, 歯学部, 准教授 (60511243)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
13,910千円 (直接経費: 10,700千円、間接経費: 3,210千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
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キーワード | がん組織浸透性 / スルホベタインポリマー / 低温療法 / 細胞膜透過 / がん低温療法 / がん組織 / 局所冷却 |
研究開始時の研究の概要 |
浅部で早期のがんを近隣の病院でも日帰りで治療できる汎用的な治療法の開発を目指し、がん組織浸透性と低温で特に優れた細胞内移行性を示すスルホベタイン(SB)ポリマーを用い、がんへの局所投与と低温刺激により短時間で確実にがん細胞を死滅させる治療システムを構築する。まずSBポリマーと低温刺激方法の最適化を多細胞腫瘍スフェロイド(MCTS)に対する浸透能と殺細胞活性評価からのスクリーニングにより行う。 続いてがん組織の局所冷却システムを構築し、担がんマウスに対してこのシステムを適用したin vivo評価から、簡便で切らないがん治療法として展望を得る。
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研究実績の概要 |
がん組織浸透性と優れた細胞内移行性を示すスルホベタイン(SB)ポリマーを用い、がんへの局所投与と低温刺激により短時間で確実にがん細胞を死滅させる浅部のがんに汎用的な治療システム構築を目指している。本年度は、蛍光分子を修飾したスルホベタインメタクリレート-PEGメタクリレートの共重合ポリマー、P(SB-PEG)を10分間氷冷したヒト肝がん由来HepG2細胞からなる細胞凝集塊に添加し、ポリマーは4℃でも変わらず凝集塊内部へと浸透できることを共焦点顕微鏡観察より直接確認した。またタネスピマイシン(17-AAG)のP(SB-PEG)に対する修飾について再度検討を行い、チオール-エンのラジカル付加反応を光照射法を導入することで効率的な修飾を可能とした。次に、得られた17-AAG修飾P(SB-PEG)をHepG2細胞凝集塊に添加し、4℃で1時間共培養後に洗浄して外液中の薬剤を除いた後、引き続き37℃で24時間培養した。その結果、リン酸バッファー処理や37℃のポリマー接触条件と比較して低濃度の薬剤濃度処理でも十分に有意と考えられる数の死細胞が観察された。17AAGの抗がん作用機序を考慮した温度処理である4℃刺激から37℃インキュベーションにより効果が確認されたことは、投与においても当初のアイデアよりも簡便であり、特別な装置を必要としないシステムづくりが期待できる。今後は、より詳細な熱刺激条件の検討、定量化を進めるとともに(17-AAG)修飾P(SB-PEG)低温刺激による細胞死メカニズムの解析を行う。最後に、このポリマーを担がんマウスへ局所投与することによる抗腫瘍効果について評価を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蛍光分子を修飾したP(SB-PEG)を10分間氷冷したヒト肝がん由来HepG2細胞からなる細胞凝集塊に添加した。この結果、細胞凝集塊はやや収縮するものの、ポリマーは4℃でも変わらず凝集塊内部へと移行できることが確認できた。またタネスピマイシン(17-AAG)のP(SB-PEG)に対する修飾について検討を行い、チオール-エンのラジカル付加反応を光照射により行うことで効率的修飾を可能とした。得られた17-AAG修飾P(SB-PEG)を4℃でHepG2細胞凝集塊に添加、4℃で1時間静置後、洗浄し37℃で24時間通常培養を行った後にLive/Dead染色を行い、共焦点顕微鏡により観察を行った。その結果、100 nMの薬剤濃度処理でも十分に有意と考えられる死細胞が観察され、1.0μM以上まで濃度を増加させるとほぼ死細胞、あるいは細胞凝集塊の崩壊が観察された。リン酸バッファー処理、あるいは37℃、1時間のポリマー接触条件と比較してアポトーシスとみられる死細胞が数多く観察された。ポリマー処理後に外液の洗浄操作を行っていることから、これは4℃において細胞凝集塊、さらには細胞内部へのポリマーの移行が促進されていることを示唆している。その後の37℃でのインキュベーションは、アポトーシスを発現するまでに時間を有することもさながら、17-AAGはポリマーへ修飾後も熱ショックタンパク質であるHSP90のATP結合ポケットに結合し、シャペロン機能を阻害する分子標的薬として有効に働いたと考えられる。実験の誤差が依然として大きいため、より詳細な条件検討が必要と考えられる。4℃処理から37℃インキュベーションにより効果が確認されたことは、投与時において当初のアイデアよりも簡便な特別な装置を必要としないシステムづくりも期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
低温条件におけるスルホベタインポリマーの細胞凝集塊への移行:P(SB-PEG)が示す4℃での移行挙動について室温や37℃での挙動との比較を、移行速度・内部移行量の点から、またスルホベタインポリマーの選定も含めたより詳細な検討を、低温環境下での共焦点レーザー顕微鏡タイムラプス観察から行う。 低温刺激による17‐AAG修飾スルホベタイン処理細胞凝集塊中の細胞死メカニズムの解明:核の凝縮やブレッビングの検出に加え、細胞抽出液より各カスパーゼアッセイ、シトクロムcの放出について検討し、DNAの断片化解析からアポトーシスとその詳細経路を見極める。 担がんマウスへのポリマーの浸透と低温刺激によるがん組織に対する効果:スルホベタインポリマー低温刺激効果を担がんマウスにより評価する。冷却状態の17AAG修飾スルホベタインポリマーをがん組織へ局所注射し、薬剤活性の評価を行う。生理食塩水投与群、17AAG修飾スルホベタインポリマー投与群、対照ポリマーのみ、薬剤のみの投与群の4グループに分け評価を行う。低温刺激処理直後のがん組織の縮小を計測するとともに、犠牲死させたマウスがん組織の観察は凍結切片を作製し、in vitro実験との差異について精査する。また、ポリマー低温処理後の腫瘍サイズ変化とマウス生存数について評価する。
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