研究課題/領域番号 |
23K25276
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補助金の研究課題番号 |
23H00579 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
前川 修 近畿大学, 文芸学部, 教授 (20300254)
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研究分担者 |
岩崎 秀雄 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00324393)
水野 勝仁 甲南女子大学, 文学部, 准教授 (30626495)
大橋 完太郎 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (40459285)
加須屋 誠 京都市立芸術大学, 芸術資源研究センター, 客員研究員 (60221876)
松谷 容作 追手門学院大学, 社会学部, 教授 (60628478)
岩城 覚久 近畿大学, 文芸学部, 准教授 (60725076)
増田 展大 九州大学, 芸術工学研究院, 講師 (70726364)
細馬 宏通 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (90275181)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2023年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
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キーワード | 美学 / モアザンヒューマン / 動物 / 感性論 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、人間と人間「以外」の動物の感性論/美学を、人文科学・自然科学の両学問領域に浸透している動物論的転回を踏まえ、従来の動物美学を再考し、感性論/美学を更新する試みである。これまでの動物研究の理論/実践は、動物行動学と動物倫理学とを繋ぐ軸線の上に位置してきた。この軸は、動物の生態を客観的に記述・認識すること(真)と動物の倫理的側面を主張すること(善)を繋ぐ軸でもある。だがそこでは、その間にあるはずの、中継地点にあたる感性/美の次元が大きく欠落している。この、ミッシング・リンクとしての動物美学(美)を前景化し、感性論/美学の更新がいかにして可能なのかと問うことが本研究の核にある。
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研究実績の概要 |
初年度は4回の研究会を開催した。 第1回(2023年8月15日)はオンラインで今後の方針や研究計画の確認を行い、まずは本研究課題が目指している方向性の基礎となる概念を検討することにした。第2回研究会(2023年10月18日:大阪Hirokazu Moriguchi Warehouseで開催)ではユクスキュルの「環世界」概念をめぐり議論を行った(報告者:水野、細馬、前川、大橋)。第3回研究会(2025年1月21日:早稲田大学戸山キャンパスで開催)では、ドゥルーズの動物への生成変化を美学的に抽出したエリザベス・グロスの議論をめぐり意見交換を行い(報告者:増田、岩城)、同時にドゥ・ヴァール/ダマシオによる進化論的な枠組みの中での感情/情動論について検討を行った(報告者:前川)。第4回研究会(2024年3月21日)ではオンラインで前回の動物への生成変化の議論の続きを行い(報告者:岩城、松谷)、次年度に引き続き検討する概念や対象領域について議論を行った。 本研究チームが構成する3つの極(感性/美、テクノロジー、アート/デザイン)から見れば、第2回では感性/美からテクノロジーへ向かう生命進化論的アプローチと、感性/美からアート/デザインへ向かう環境生態学的アプローチをカバーし、第3回、第4回では、アート/デザインから感性/美へと向かう哲学思想的アプローチと、テクノロジーから感性/美へと向かう生命進化論的アプローチをカバーしたことになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進んでいる。第3回の報告で岩城が要約したように、動物美学(モアザンヒューマンの美学)が美学思想の中での位置価値は、ディッキーやダントーなどの文化主義的芸術論に対立する自然主義的芸術論ということにあり、そこにはダーウィンに始まり、リチャード・ブラム『美の進化』、ドゥルーズやグロスの思想、メニングハウス、ダマシオまでの広がりを持つことが確認された。 また、この自然主義的文化論の中でも思想的地図を作成することができた。一方には自然淘汰の中である意味で性淘汰を特権化する、いわば「性淘汰派」とも呼べるダーウィン、メニングハウス、ヴェルシュ、ドゥルーズ/ガタリ、グロスがおり、その反対には情動を重視する「情動/感情派」ともよべるドゥ・ヴァール/ダマシオがおり、その中間には、ブライアン・マッスミの、遊戯(遊び)を重要視する動物論、いわゆる「遊戯派」を位置付けることができた。さらに言えば、性淘汰派とも情動/感情派とも、さらには遊戯派とも位置付けの異なるユクスキュルの環世界論は、前者3つの力学を検討するための基礎的な枠組みとして位置付けることも可能だという見取り図も初年度で定まってきた。 また最後に付け加えておけば、他ジャンルにわたる研究組織が、従来の人文的な動物論に終わらず、生物学や進化論などの議論との折衝(岩崎、細馬とそれ以外の研究メンバーの間の議論)によって広がりを持つものであることも4回の研究会を通じて十分に確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、第一に、初年度に引き続き、動物美学(モアザンヒューマンの美学)の思想地図を従前なものにするために、動物の情動/感情の議論をドゥ・ヴァール/ダマシオを経由してさらに拡充していくとともに、マッスミらの遊戯を中心にした動物論の検討を進めていく。さらに、環世界概念を起点にしてデプレの同調論を俎上に載せたい。第二に、人類学におけるモアザンヒューマンの議論との折衝も図ることにする。第三に、アート/デザインおよびテクノロジーの極にとっては具体的なフィールドとなる動物園や実験環境をめぐる現在の動物研究の議論の進展について、網羅的に調査を進めていく。第四に、バイオアートや動物的なものを主題や方法にしたアート作品など、アートワールドにおける動物的なものの広がりを具体的なアートフェスティバルや美術展を中心に調査を進めていく。また第三の研究、第四の研究の進捗に合わせて、シモンドンの技術哲学やラトゥールのアクター・ネットワーク理論などのアプローチを、動物と人間と環境のループ状の可変的編成の中でどのように応用できるかも考察を進めていきたい。
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