研究課題/領域番号 |
23K25283
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補助金の研究課題番号 |
23H00586 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 成城大学 (2024) 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 (2023) |
研究代表者 |
安永 拓世 成城大学, 文芸学部, 准教授 (10753642)
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研究分担者 |
早川 泰弘 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, その他部局等, 特任研究員 (20290869)
近藤 壮 学習院大学, 文学部, 教授 (60469210)
袴田 舞 和歌山県立博物館, 学芸課, 学芸員 (30847835)
原田 直輝 和歌山県立博物館, 学芸課, 学芸員 (90986548)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,250千円 (直接経費: 12,500千円、間接経費: 3,750千円)
2027年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2026年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 彩色材料の分析 / 桑山玉洲 / 岩瀬広隆 / 真砂幽泉 / 絵具 / 彩色材料分析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、江戸時代中後期の18世紀から19世紀における日本の彩色材料の変遷を、絵具と絵画作品に用いられた彩色材料の両方に即して明らかにすることを目的とする。具体的には蛍光X線分析や可視反射分光分析によって、絵具としての彩色材料と、実際の絵画作品に用いられている彩色材料とを、科学的・光学的な見地から非破壊で分析し、その分析結果の検討を通して、画家による彩色材料の選択と絵画表現との関連性の解明を目指すものである。
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研究実績の概要 |
桑山玉洲は、和歌山の町人出身の文人画家で、若い時期には江戸で絵を学ぶが、その後は独学で中国の絵を模写し、京都の文人画家の池大雅からも強い影響を受けた。また、玉洲の豊かな彩色表現は、大雅とともに「カラリスト」と呼ばれており、玉洲の彩色材料の解明は、近世絵画史上きわめて意義深い。この玉洲に関しては二種の絵具類(絵具皿20点、塊・粉末状の絵具52点)が伝来している。 岩瀬広隆は、京都の出身で、当初は浮世絵や版本挿絵を手がける画家であったが、天保4年(1833)ごろ、『紀伊国名所図会』の挿絵を描くため和歌山へ招かれ、その後、紀伊藩10代藩主の徳川治宝から高い評価を得て「春日権現験記絵巻」を模写するなど、復古大和絵派の画家としても活躍した。彼が使用した画材道具に残る絵具類(絵具皿5点、塊・粉末状の絵具9点)は、本研究で取り上げる画家の中では、最も新しい時代との関わりが強い彩色材料と位置づけられる。 2023年度の調査では、和歌山県立博物館・和歌山市立博物館に所蔵あるいは寄託されている桑山玉洲と岩瀬広隆の絵画作品について、蛍光X線分析や可視反射分光分析により、絵画作品に使用されている彩色材料の分析調査をおこなった。こうした分析結果からは、玉洲と広隆の両方の絵画作品で、胡粉と鉛白の併用が確認され、きわめて重要な新知見が得られた。 一方、こうした彩色材料の分析とともに、桑山家旧蔵資料の確認と調査も進めた。桑山玉洲の子孫にあたる桑山家に伝来した資料は、現在、本家筋と分家筋の二家に分蔵されているが、それらは、桑山家旧蔵資料の全貌ではなく、一部の資料は第二次世界大戦前後に散逸した。東京文化財研究所では、これらの資料が散逸する前に桑山家で調査をおこなっており、その際の写真が残されている。これらの資料の位置づけを知るため、桑山家旧蔵資料をより復原的に考察し、研究発表をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの予備調査でおこなってきた絵具の分析結果をふまえ、桑山玉洲と岩瀬広隆の絵画作品について、蛍光X線分析や可視反射分光分析装置を用いて、彩色材料の分析調査を順次進めている。1年間で、2泊3日程度の調査を2回~3回ほど進める予定であるが、2023年度は和歌山県立博物館と和歌山市立博物館で1回ずつ、計2回の調査をおこない、玉洲、広隆いずれも、調査作品数を増やすことができた。(8月16日~18日:岩瀬広隆作品4件5点・桑山玉洲作品2件3点、2月21日~23日:岩瀬広隆作品3件3点・桑山玉洲作品3件3点)。 特に、広隆については、調査作品数に、ある程度の目処がたったため、今後は分析結果を整理し、3年目以降の成果公開を目指したい。 玉洲については、調査作品数も増えてきたが、調査対象となる作品の伝来経緯についても検証や考察を深め、寄託館や所蔵館とも意見交換や調整を図りつつ、今後の調査対象となる作品の選定に努めている。こうした作品の選定や、調査先との調整についても、順調に推移しており、2年目以降に調査する作品や、4年目以降の成果公開についても、ある程度の見通しを示せている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、桑山玉洲については、二種の絵具類の分析を踏まえたうえで、玉洲の絵画作品の彩色材料分析と比較をさらに進め、玉洲が使用した彩色材料の傾向を具体的に明らかにしたい。なお、これまでの調査では、玉洲の絵具と絵画作品の両者から、胡粉と鉛白が確認されたが、江戸時代絵画における鉛白の使用は事例が少ないため、貴重な分析結果が得られた。中国絵画の白色の彩色材料には、鉛白が使用されていることから、玉洲が学んだ中国絵画等の彩色材料との比較も視野に入れつつ、玉洲の彩色表現学習の解明を目指したい。 一方、岩瀬広隆が仕様した絵具は、本科研で取り上げる、玉洲、広隆、真砂幽泉の三者の中で、最も新しい時代との関わりが強い彩色材料と位置づけられる。これまでの調査では、やはり絵画作品に胡粉と鉛白の併用が確認されており、玉洲の場合と同様の分析結果が得られた。2024年度は、広隆の絵画作品の彩色材料分析をさらに進め、同年度中に広隆の調査については見通しを示す予定である。そのうえで、これまでの分析結果を整理し、2025年度の成果公開を目指したい。 最後に、真砂幽泉については、絵具・絵画作品ともに、これまで全く分析をおこなえていない。2024年度からは、具体的な調査対象作品の選定にうつり、絵具などの分析を進める予定である。
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