研究課題/領域番号 |
23K25287
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補助金の研究課題番号 |
23H00590 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
桂 英史 東京藝術大学, 大学院映像研究科, 教授 (60204450)
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研究分担者 |
桐山 孝司 東京藝術大学, 大学院映像研究科, 教授 (10234402)
高山 明 東京藝術大学, 大学院映像研究科, 教授 (60748333)
和田 信太郎 東京藝術大学, 大学院映像研究科, 助教 (80648353)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2025年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2024年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
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キーワード | ブックアート / ブックオフジェ / オブジェとしての本 / 書物と芸術 / アーティストブック / ブックオブジェ / オフジェとしての本 / アートブック |
研究開始時の研究の概要 |
本という形式を利用した芸術作品及び「本と芸術」に関する実証的かつ領域横断的な研究である。本研究におけるブックアートとは、アーティストによって少部数で出版されるアーティストブック、一点物のオブジェ作品として制作されるブックオブジェなど、美術家たちの挿絵本、詩画集、本を素材あるいはモチーフとした美術作品、本の造形の多様さを示す作品(冊子、巻子、折本等)など、本というメディアの形式性や特徴を作品の属性に利用した作品や資料の総称で、そのブックアートを成立させるための必要条件を二次資料のアーカイヴとして構築し、「本と芸術」との関係を実践面から探究する研究である。
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研究実績の概要 |
本研究は、ブックアートという形式を利用した芸術作品及び「本と芸術」に関する実証的かつ領域横断的な分析を行うことを目指している。研究会を対面とオンラインで開催した。まず(1)2021年5月18日は研究代表者の桂英史が「オブジェとしての本」というテーマで編集者やアーテイストあるいは大学院生とのディスカッションを行った。(2)研究代表者の桂英史が詩人のカニエ・ナハ氏を招聘し、「オブジェとしての本」というテーマで鼎談方式での研究会を開催した。(3)11月から12月にかけて計3回にわたって、これらの作品や資料の属性を詳細に記述し、それらを成立させるための必要条件を明らかにする二次資料のデータベースの仕様書あるいはアーカイヴとして公開する方法について、代表者・桂と分担者・桐山孝司を中心に、研究分担者と研究協力者とともに、「オブジェとしての本」をテーマにした作品とその関連する二次情報(スケッチやエスキースなど)を管理するためのデータベースを設計する際、ブロックチェーン技術を利用することで、透明性と改ざん防止を確保できる機能仕様を定義した。これらの研究会では、各報告者が本研究課題に関してそれぞれ独自に進めた専門研究について発表を行い、研究分担者がコメントをして共に議論をおこなう形で本課題を多角的な視点から検討する方式を採った。具体的には、アーティストによって少部数で出版されるアーティストブック、一点物のオブジェ作品として制作されるブックオブジェ、美術家たちの挿絵本や詩画集、本を素材あるいはモチーフとした美術作品、そして本の造形の多様さを示す作品(冊子、巻子、折本等)に焦点を当てた。また、データベースの開発は、作品の形式性や特徴を網羅的に捉え、ブックアートの理解を深めるための基礎的な基盤を提供することを目的としている。実装は最終年度を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始から現在に至るまで、本研究はブックアートを芸術作品及び「本と芸術」の関係性を探るための実証的かつ領域横断的な分析という目標に向けて、着実な進展を遂げている。研究会の実施は、対面及びオンラインのハイブリッド形式で、多様な参加者との交流を通じて多角的な議論を行い、研究テーマに対する理解を深めると共に、関連する専門家とのネットワークを拡大した。特に、オブジェとしての本に関するセッションは、新しい視点を研究に導入し、その影響を考察する貴重な機会となった。 書誌データの収集と編集は印刷物等になったものが中心に留まっているが、今後展覧会カタログやWebなど情報源を拡大する段階にある。ただ先にデータベースの仕様の定義がほぼ完了したので、次年度以降は仕様に合わせたデータの収集と編集が可能である。 データベースの設計と仕様書の作成では、ブロックチェーン技術を利用することで、データの透明性と改ざん防止の機能を確保するための具体的な方法を定義した。これは、ブックアートとその生成条件を記録する上で、非常に重要なステップである。データベースは作品の形式性や特徴を詳細に記述し、ブックアートの理解を支援する基盤となることが期待される。 ただし、実装は最終年度に予定されており、その完了に向けてはまだ多くの作業が残されている。今後は、データベースの完成を目指すと同時に、研究成果を広く公開し、アカデミックな議論に貢献するための準備に注力する必要がある。全体として、研究の進捗は順調であり、設定した目標に沿って前進している。ただし、最終的な成果物の質と影響を高めるために、特に展覧会を企画・実施することにより、実践的な成果が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、データベースとアーカイブの構築および展覧会の実施に向けて、以下のように推進してゆく予定である。 【1】データベースのテスト版: 研究の主要成果の一つであるデータベースの開発を完了させるために、残された開発作業を優先して進める。具体的には、データの入力と整理を進行し、ブロックチェーン技術を活用した透明性と改ざん防止機能の最終テストを実施する。これにより、データベースが実用的なレベルで機能することを保証する。【2】継続的な学術交流とネットワークの拡充:対面及びオンラインのハイブリッド形式で研究会を継続的に開催し、国内外の研究者やアーティストとのコラボレーションを拡張する。これにより、ブックアートに関する多角的な議論を促進し、新たな研究のアイディアや方法論を共有する。【3】大学院生や若手研究者を対象としたワークショップやセミナーを定期的に開催し、ブックアート研究の教育的側面を強化する。これにより、次世代の研究者育成と研究テーマへの関心を高める。【4】持続可能な研究体制の構築:研究資金の確保と管理を強化し、長期的な研究プロジェクトの持続可能性を確保する。また、研究テーマに関連する他分野の専門家との協力体制を構築し、研究の質と範囲を拡大する。【5】ブックオブジェに関する芸術実践を深化させるために、ブックオフジェを対象にした展覧会を企画・実施する。具体的には2024年9月に東京藝術大学附属図書館で「Biblioscape2024」というタイトルで展覧会を開催する予定である。【6】本研究の成果を、出版物として編集し、刊行する予定で、出版社と協議を始めている。今年度中には、出版物としての概要を決定する予定である。 これらの方策を通じて、ブックアートという独特の芸術形式に関する理解を深め、その学術的価値をさらに高めることを図る。
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