研究課題/領域番号 |
23K25290
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補助金の研究課題番号 |
23H00593 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
中川 眞 大阪公立大学, 都市科学・防災研究センター, 特任教授 (40135637)
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研究分担者 |
長津 結一郎 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (00709751)
田中 みわ子 東日本国際大学, 健康福祉学部, 教授 (10581093)
服部 正 甲南大学, 文学部, 教授 (40712419)
田中 均 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 准教授 (60510683)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,330千円 (直接経費: 14,100千円、間接経費: 4,230千円)
2026年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
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キーワード | 美術館 / キュレーション / アウトサイダーアート / アールブリュット / 美術史 / アール・ブリュット / アウトサイダー・アート / 障害学 / アーツマネジメント / 合理的配慮 / 文化政策 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、国公立美術館における障害者等の芸術に対する最適のキュレーションを確立するために、評価の基準、手法、倫理性などを解明することを主目的とし、それを美術館の現場に還元することを副次的な目的としているが、2024年度は美術館学芸員へのインタビューと「障害者芸術」概念の再検討を行う。2025年度はモデル展示を実施し、鑑賞者などの反応を分析する。2025年度は成果の取りまとめとして最適な評価の手法を議論、明示する。本研究の特色に国際的な共同研究の推進があり、台湾(2024)、バンコク(2025)、ブリュッセル(2026)の研究機関と協働してフォーラムを開催する。
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研究実績の概要 |
2023年度の主な研究活動は国公立美術館の学芸員へのインタビューと研究会であった。訪問した美術館は、国内では茅ヶ崎市美術館、熊本市現代美術館、九州国立博物館、滋賀県立美術館、仙台メディアテーク、水戸芸術館、香川県立ミュージアム、高松市美術館、秋田文化芸術創造センター、渋谷公園通りギャラリー、道立函館美術館、南三陸311メモリアルの12館、海外ではPalais de Tokyo、Halle Saint Pierre、Museum Dr. Guislain、Trinkhall Museum、Art et Marges museum(以上フランとベルギー)の5館であった。障害者アートの企画等に関して、またアクセシビリティに関する取り組みについてインタビューを行った。国内では、組織として障害者の作品の評価のあり方を体系的に構想している美術館はほとんどなく、その分野に関心のある学芸員や職員個人の裁量に委ねられている部分が大きいことが明らかになった。そしてその場合、その個人は作品の評価と同時に障害者の美術館や美術展へのアクセスの向上にも関心を持ち、ハードとソフト両面でのアクセシビリティ向上のための取り組みも行っていることが多い。それに対して、ヨーロッパでは障害者の作品を含むアウトサイダー・アートやアール・ブリュットを通常の美術の枠組みの中で理解する動きが急速に進みつつある。しかしながら、それはあくまでアウトサイダー・アートやアール・ブリュットの評価であり、そこに障害者が含まれていることが話題に上ることはほとんどないことが明らかになった。 研究会では、障害とアートの関係について、障害学並びに文化政策の観点から、また美学の観点から美的な価値についての近年の議論について考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「美術館の学芸員、公募展の審査員に評価についての聞き取りと、評価に関する言説の文献調査を実施し、旧来の「評価像」を明らかにするために、「障害者等の芸術」展を実施した経験のある館から優先的に10館で聞き取り調査を実施し、公募展への訪問、そして得られたデータをもとに共同研究会を開催し、年度 末に大阪にて「評価像」をテーマとしたフォーラムを開催する」というのが当初の計画であったが、美術館については12館と、予定より2館多く、さらに海外の美術館にまで足を伸ばせたのは予想以上の進展であったが、公募展については予定していたものが中止になったりしたため、調査は低調(1ヶ所のみ)に終わった。研究会は順調に開催できたものの、フォーラムの開催を見送ったため、全体としては、「おおむね順調」というのが自己評価である。
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今後の研究の推進方策 |
美術館での聞き取り調査は前年度に引き続き10館実施するが、軸足は障害者等の芸術の総合的な把握へと移される。作品論については夥しいカタログも含めて先行研究の蓄積があるが、本研究では、美術館で開催される展覧会に赴き、改めて作品と向き合い、論を抽出する ことを心がける。また先駆的な障害者芸術の創作や展示、所蔵に取り組んでいる民間の施設、 機関の調査も実施する。障害者等の芸術の位置づけは、福祉系と芸術系に乖離しているとい われるが、本研究ではその接合を試み、「総合的な把握」に取り組む。また台北でのフォー ラム「障害者等の芸術とは?」の開催と並行して、台湾での取り組みを視察する。 2023年度の調査では、障害者等の作品展示に際しては、館および各学芸員と、障害のある作家との個々の繋がりのなかで企画・展示がなされており、障害者等の作品そのものを評価する共通の尺度や価値基準などは今年度の調査からは判明しなかったため、この点での更なる調査が必要であると感じている。
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