研究課題/領域番号 |
23K25291
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補助金の研究課題番号 |
23H00594 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
安田 靜 日本大学, 経済学部, 教授 (90339226)
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研究分担者 |
武藤 大祐 群馬県立女子大学, 文学部, 教授 (30513006)
吉田 寛 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (40431879)
古後 奈緒子 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 准教授 (40741468)
山田 小夜歌 京都精華大学, 国際文化学部, 講師 (40825204)
垣沼 絢子 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 特別研究員(PD) (40979704)
阪田 玉藻 (永井玉藻) 桐朋学園大学, 音楽学部, 非常勤講師 (80836940)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2025年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
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キーワード | 舞台芸術 / 劇場 / 芸術化 / 商品化 / 労働者 / 舞踊 / バレエ / 日本舞踊 / 性風俗 / パトロン / 上演文化 / 商品 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、日本舞踊やバレエ、オペラなど、ハイアートの表現と実践の場である一方、商品化された性の提供場所でもあった上演文化について、(1)技術革新が上演文化にもたらしたもの、(2)観客層の構成やその社交行動の変化、そして(3)舞踊手や歌手はいかにして「欲望の眼差し」から解き放たれたのかを分析する。とりわけ脱エロス化と「芸術化」に至る道のりについては、客体としての商品、あるいは主体としての労働者という両側面から、実証的かつ発展的にその過程を明らかにする。研究対象は座敷芸から大劇場まで様々な形態の上演で、未公開の各種資料の調査、及び当事者への聞き取り調査を基盤とする。
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研究実績の概要 |
本研究は「上演文化に関する『芸術化』の国際比較研究」であり、「商品及び労働者としての演者を巡る諸問題」を分析しながら、欧州各国あるいは日本において、どのようにして「芸術化」が達成されてきたのかを明らかにすることが目的である。 研究分担者及び研究協力者はいずれも、積極的に各人の研究成果を学会や論文、そして書籍の形で発表し、これまで舞台芸術史の「正史」においては必ずしも詳しく取り上げられる機会のなかった演者たちの実像、すなわち舞台の外での風俗(もしくは端的に売春)との関わり方についても、むやみにタブー視することなく、脱エロス化以前、そして脱エロス化後を分析した。 これらの研究成果は研究分担者及び研究協力者によって、索引、参考文献、年表などの関連資料を豊富に備えた、極めて読み応えのある専門書としてだけではなく、タイトルから一般読者も大いに関心を持つであろう魅力あふれた著作として上梓されている。(業績リスト参照) また、研究論文として発表されたものには、「脱エロス化」以前の19世紀のパリ・オペラ座の実情を明らかにするものがあり、21世紀の観客が眼にするオペラ座バレエ学校の舞台や劇場での観客行動との、極めて大きな乖離を誰もが認めざるを得ないだろう。今日では、むしろ裕福な家庭でなければオペラ座のバレエ学校に入学させることも、全寮制のバレエ学校での就学を支えることも不可能であるのに対し、これまでの舞踊史ではほとんど検討されてこなかった、19世紀のオペラ座バレエ学校の生徒たちやその家庭環境について、詳細な分析がなされている。 このように、本研究課題はこれまでの舞踊史が避けて通ってきた演者の実情を明らかにするものであり、その研究実績は研究者にとってだけでなく、一般読者にとっても、極めて興味深い内容を含有するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度はじめに研究代表者が約二ヶ月間入院したため、研究代表者個人については研究計画の実施に相当の遅れが生じた。 しかし、入院中も遠隔で各メンバーとの連絡・討論を継続した結果、研究分担者及び研究協力者はそれぞれ、ダンス、オペラ、レビューといった上演文化の様々な分野において、「芸術化」の過程を追い、「商品」及び「労働者」としての演者に関わる問題を明らかにすることができた。 中でも垣沼絢子氏と横田さやか氏は力作の単著を上梓し、とりわけ前者は日本のレヴューが第二次世界大戦後に芸術と性風俗に分化していく過程を、芸術面・制度面・労働者の観点から明らかにした。いずれの著作も豊富な資料によって研究者への貴重な情報提供を行うとともに、一般読者にとっても興味深い話題を展開している。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者は2023年冬季より、ハーグ市(オランダ)やパリ(フランス)で、ダンスに携わる複数の実践家に直接取材を敢行できた。現場で上演文化に携わる当事者達から、貴重なコメントを多数収集できたので、2024年度にはそれらの成果をもとに、学会発表およびワーキングペーパー(所属大学内HPに掲載)の形にとりまとめ、研究者及び一般に向けて、「労働者としての演者」の実情と問題点を明らかにする予定である。 また、各研究分担者及び研究協力者は、引き続き積極的に海外出張で新たな資料を発掘し、分析する作業を継続するとともに、美学会、舞踊学会をはじめとする各種の学会で口頭発表を行い、研究成果の社会的還元を順次行ってゆく。 さらに、来年度(2025年度)の国際シンポジウム開催に向けて、プレ・シンポジウムの開催や招聘研究者との調整など、必要な準備を進める。
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