研究課題/領域番号 |
23K25328
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補助金の研究課題番号 |
23H00631 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
小区分02080:英語学関連
合同審査対象区分:小区分02060:言語学関連、小区分02080:英語学関連
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
吉岡 乾 国立民族学博物館, 人類基礎理論研究部, 准教授 (20725345)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2027年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2026年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | ドマーキ語 / インド・ヨーロッパ語族 / インド・アーリヤ語派 / パキスタン / 記述言語学 / ブルシャスキー語 / フィールド言語学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、毎年のパキスタン北部における現地調査に基づいて、消滅の危機に瀕しているインド・ヨーロッパ語族の言語であるドマーキ語の文法を明らかにし、最終的に参照文法書としてまとめ上げることを目的としている。この言語は周囲の言語群と系統的にやや異なり、周辺の言語群自体も銘々に異なる出自を持っていたりする地域であるので、ドマーキ語の詳細な特徴を明らかにすることは、周辺言語の研究にも大いに役立つものとなる。
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研究実績の概要 |
初年度である2023年度は、夏に1ヶ月半ほどの長さでパキスタン北東部のギルギット・バルティスタン州フンザ谷、ゴジャール谷へと現地調査に赴いた。世界規模の新型コロナウイルス感染症の蔓延により止まっていた調査を、数年振りに再開させた形になるのだが、その間に調査に関する状況が様変わりしていて、結果としてはこの調査ではドマーキ語に関して芳しい結果が出せなかった。現地で高熱に伏せたのも影響した。 一番の状況の変化は、長年研究協力を仰いでいた話者Aが、経済的理由から自身の店舗を畳み、毎日朝から晩まで別の村へ出稼ぎ労働に出るようになってしまったことで、新たな協力者を探さねばならなくなったことである。一方で、狭いコミュニティなので、他の話者たちは申請者がドマーキ語調査をその話者Aの協力の下で行っていたことを知っているため、「話者Aに訊け」と中々協力をしてくれない状況もある。この村以外は話者が少なく、この状況では誰からも協力を得られない。約1年を空けて話者Aの生活状況の理解が村人に浸透するのを待ち、2024年度には協力者を得られるよう、より積極的に努めたい。僅かに話者が居るゴジャール谷へも協力者を求めて足を延ばしたが、そちらでもドマーキ語を話すドマ人たちは経済的に苦しく、仕事が忙しくてやはり協力を得難かった。ゴジャール谷で店を持っている(時間が取り易い)のは別の民族(ワヒー語を話すヒク人か、ブルシャスキー語を話すブルショ人)が主であった。 一方で、隣接するメジャー言語であるブルシャスキー語に関しての調査は少し進み、文法事項を網羅的にチェックできる大量の例文データをまとめ上げることができた。ドマーキ語の調査はブルシャスキー語を媒介言語としているため、このデータはそのままドマーキ語調査用のアンケートとして活用できる。2024年度の調査でどうにか協力者を確保し、早速同様のデータ収集を成し遂げたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
実績の概要にも記したが、これまでの協力者(商店主)の生活スタイルが変化したため、協力を得るのが難しくなったこと、そして小さなコミュニティであるため、他の人々がその人物を僕の協力者として強く認識していることの2点を主な理由として、新規の研究協力者を獲得できていないことが研究遅れの一番の理由である。次回の調査まで時間が少し開くので、その間に元協力者が日雇いの出稼ぎに通っていることがコミュニティ内で理解されるのを期待している。 但し、そもそもドマーキ語を継承してきていたドマ人が、フンザ谷、ナゲル谷、ゴジャール谷を始めとした現地全域で、経済的に他の民族よりも貧しい状況にあり、暇を持て余している者が少ない。老人であっても労働している。店を持っている者は客の居ない時に多少は研究協力をしてくれるが、新型コロナウイルス感染症の蔓延により観光客の減った期間に、ドマ人の店の多くが潰れ、残った少ない店に客が集中するようになったために、店番も暇な時間が減っている。 これまで調査に入っていなかったゴジャール谷でドマーキ語話者を求めたが、想定よりも言語継承率が低く、やはり協力できる者を見出すには至らなかった。シシカト村の木材職人と、グルミト村の木材職人との兄弟と面識を得たが、恐らく現地で申請者も新型コロナウイルス感染症に罹患し、それに誘発されて高山病にもなったので、研究協力の都合を付けることはそちらでも適わなかった。
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今後の研究の推進方策 |
まずは早くにフンザ谷モミナバード村(最大コミュニティ)で研究協力者を得る。可能であれば複数名見付けたい。ゴジャール谷にも協力者を得たい。協力者を確保できない限りは一歩も進まないので、他の言語調査に脇目を振ることなくコミュニティ内を探索する。 文法事項を網羅的に調べるための大量の例文データを媒介言語でもあるブルシャスキー語で採集済みなので、協力者を得次第、ドマーキ語に関して同様の例文データ集を訊き出し調査で作る。これを当初予定していた文法スケッチの代替品とする。 それが済んだら、その例文データ集で不明な文法事項について訊き出し調査を重ねつつ、物語収集とその書き起こし、分析を進め、研究を追い上げて、当初予定していた記述文法の期間内の完成を目指す。記述文法の内容を充実させるために、領域言語学的な視点の導入に向けての他の言語の研究も再開したい。 研究成果がまとまり次第、適宜、学会報告や論文執筆といった形で成果を報告していく。
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