研究課題/領域番号 |
23K25362
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補助金の研究課題番号 |
23H00665 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
尾上 陽介 東京大学, 史料編纂所, 教授 (00242157)
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研究分担者 |
藤井 讓治 京都大学, 文学研究科, 名誉教授 (40093306)
遠藤 珠紀 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (10431800)
林 晃弘 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (10719272)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2027年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2026年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 近衞家 / 陽明文庫 / 日本史 |
研究開始時の研究の概要 |
古代より近代に至るまで政治権力の中枢にあった摂関家のなかで唯一、伝来史料群がまとまって現存する近衞家の陽明文庫所蔵史料を主な研究対象とし、これまで紙の目録上で不完全なまとまりとなっていた近世の歴代当主や当主夫人の日記、各種の家司日記などを中心に原本調査を進め、史料の内容や性格などの情報を精緻化して目録データ上に書き加えることにより、バーチャルな環境で本来の存在形態を復元し、近世の摂関家文庫における家記の重層的な構造を解明する。 悉皆的調査を進めるなかで未知の史料の発掘にも努め、重要史料については高精細デジタル画像の整備・公開による研究資源化を進めることで新たな知見を生み出す。
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研究実績の概要 |
本研究は、古代より近代に至るまで千年以上にわたって我が国の政治権力の中枢にあった摂関家に伝来した大規模史料群について、原本調査に基づく目録情報の精緻化を進めることにより摂関家文庫の構造を解明するとともに、未知の史料の発掘と高精細デジタル画像の整備・公開による研究資源化を進めるものである。具体的には摂関家のなかで唯一、伝来史料群がまとまって現存する近衞家の陽明文庫所蔵史料を主な研究対象とし、これまで紙の目録上で不完全なまとまりとなっていた近世以降の歴代当主やその夫人らの日記、各種の家司日記などを中心に原本を悉皆的に調査し、史料の内容や性格などの情報を精緻化してデジタル化した目録上に書き加えることにより、バーチャルな環境で本来の存在形態を復元し、史料群全体の構造の解明を目指している。未知の史料の発掘や重要史料の研究資源化にも努めている。 歴代当主らの日記については、まずは第28代近衞篤麿の日記を中心に、原本の調査を進めた。篤麿の日記はすでに活字本(近衛篤麿日記刊行会編『近衛篤麿日記』全6冊、鹿島研究所出版会、1968~69年)が刊行され利用されているが、原本の書誌など目録情報を精緻化しつつ内容の調査を進めたところ、活字本では原本の一部が省略されていることが判明した。また、原本にはおびただしい数の多様な挟み込まれた関連文書が存在することから、それらをも含めるかたちで高精細デジタル撮影に着手した。 近世近衞家の家司日記については、近衞家の各種蔵書目録類の調査を行うことで多様な表題からなる各種家司日記の残存状況を把握し、17世紀後半から約200年間にわたり書き継がれた『雑事日記』原本の未撮影部分など、一部の高精細デジタル撮影に着手した。 これらの成果をもとに、近衞家家記の構造の解明と研究資源化を進め、新たに価値を見出した重要史料については一般向けの講座等で紹介することに努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当主の日記では、陽明文庫においてまとまって保管されている近衞篤麿の日記原本全37冊(史料番号霞1~37)を調査し、各冊の内容や体裁などの書誌データを把握した。その過程で、これまで広く利用されている活字本では原本の一部が省略されていることを確認し、挟み込まれた関連文書を含めて全冊の高精細デジタル撮影に着手した。2023年度には第14冊まで、計4,485コマの撮影を終えた。 次に家司の日記については、これまで存在自体がほとんど知られていなかった、幕末から明治期の近衞家文庫の状況を知ることができる各種蔵書目録類についての調査を推し進め、それぞれの性格の把握や内容の分析を行い、目録中に見られる『御用部屋日記繰出』『取次所日記』『御用雑記』『御次日記』『御用部屋御留守中日記』『奥日記』『中奥日記』『北奥日記』『桜木殿雑事日記』『桜木御殿御祐筆間日記』『桜木奥日記』などの、多様な表題の冊子からなる家司日記全体の構造の解明を進めている。特に最も中心的な家司日記である『雑事日記』については、これまで全く撮影されていなかった文久3年4月記から最後の明治5年正月記までの16冊分、計3,754コマを撮影した。これにより、従来マイクロカメラで行われていた分を併せ、原本324冊全体の撮影を一通り完了することができた。 陽明文庫に所蔵される近衞家伝来史料の悉皆的調査の過程で得られた個別重要史料の知見については、随時公開することに努めている。2023年度においても、鎌倉時代後期の近衞兼教の周辺に存在した文書の面影を伝える『御写物』、本能寺の変の生々しい体験談を載せる『二条亭城介事、かちんの事』、石田三成・増田長盛の所司代就任についての事情をよく伝える『近衞前久書状』の三点について、一般向けの『陽明文庫講座図録』5号に紹介した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では陽明文庫の「一般文書目録」「典籍目録甲」「続歴代日記目録」「十五函相当記録文書目録」に記載されている史料と無番号の史料を主要な調査対象とし、引き続き下記の研究を推進する。 まずは近世歴代当主および当主夫人の日記原本について取り上げ、近衞家第21代家凞の『家凞公記』以下、明治期の第28代篤麿の『近衞篤麿日記』に至るまでの歴代当主日記と、『円台院宮日記』(第24代経凞夫人)や『常興善院日記』(第26代忠凞夫人)など当主夫人の日記について、原本の悉皆調査による目録情報の精緻化を進める。 また近世近衞家家司の日記原本についても取り上げ、最も中心的な『雑事日記』をはじめ、『御用部屋日記繰出』『取次所日記』『御用雑記』『御次日記』『御用部屋御留守中日記』『奥日記』『中奥日記』『北奥日記』『桜木殿雑事日記』『桜木御殿御祐筆間日記』『桜木奥日記』などの多様な表題の冊子について、当主等の日記と同様に原本の悉皆調査による目録情報の精緻化を進める。 当主や当主夫人、家司の日記原本は複数の目録にわたって記載されているため、目録情報をデジタルデータ上で仮想的にまとめて管理できるように整備するとともに、それぞれの日記の特徴を調査することにより、当主・当主夫人、家司らの日記からなる近世近衞家家記の重層的な構造の解明を進める。 調査した原本のうち重要なものについては、新たな知見を反映したキャプションを用意した上で高精細デジタル撮影を進め、研究資源化に努める。画像データについては東京大学史料編纂所歴史情報処理システム(SHIPS)の大型画像サーバにアップロードし、陽明文庫の許可を得た後に、順次、デジタル史料検索・閲覧システム(Hi-CAT Plus)等により史料編纂所図書室内端末からの公開を進める。また、陽明文庫にもデータを提供することにより、「陽明文庫デジタルアーカイブ」等からの公開に備える。
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