研究課題/領域番号 |
23K25366
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補助金の研究課題番号 |
23H00669 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
佐賀 朝 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 教授 (40319778)
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研究分担者 |
小野沢 あかね 立教大学, 文学部, 教授 (00276700)
人見 佐知子 近畿大学, 文芸学部, 准教授 (00457029)
横山 百合子 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 名誉教授 (20458657)
吉田 伸之 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 名誉教授 (40092374)
吉見 義明 中央大学, 企業研究所, 客員研究員 (40102884)
金 富子 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (40558102)
吉田 ゆり子 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (50196888)
塚田 孝 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 客員教授 (60126125)
神田 由築 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (60320925)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2026年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
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キーワード | 日本史 / ジェンダー |
研究開始時の研究の概要 |
先行する科研で推進してきた、一次史料に基づく「遊廓社会」の内部構造分析を発展させ、近年の国際比較研究の成果もふまえて、世界史的視点に立脚した「遊廓社会」史の解明を目指す。従来、指針としてきた①列島諸地域や植民地などの遊廓・遊所事例の発掘と比較類型史的研究、②一次史料にもとづく遊廓の内部構造とそこでの女性たちの境遇の具体的な解明、③国際的視点からの日本の公娼制度の歴史的特質の解明、④近世~近現代の長期にわたる通時的把握などの視角を堅持しつつ、近世~近代移行期や1920~30年代における日本の性売買の変容について、内部構造分析や女性たちの歴史的主体形成とも関連させながら多角的に検証する。
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研究実績の概要 |
研究活動の柱の一つとして掲げた現地調査、年2回の研究会、総括研究会を開催した。 現地調査のうち、瀬戸内地方では、近世の西廻り航路により発展を遂げた瀬戸内地域の御手洗(広島)・下津井(岡山)の旧遊廓地の踏査を行った。また東京八王子では旧宿場の遊所が明治期に火災で移転した旧田町遊廓の踏査を行った。併せて、分担者が香川県内旧遊廓地の現地踏査も行った。関係史料については、岡山県立記録資料館・岡山市立図書館において、貸座敷・娼妓取締規則関係の布達類、明治~昭和初期の統計書、現地の遊廓関係文献を収集した。山口県公娼制に関わる資料、八王子市郷土資料館所蔵資料、香川大学図書館神原文庫所蔵の遊廓関係資料等を分担者が調査・収集した。 先行の研究活動で収集した一次史料分析作業の進捗確認や、史料情報・調査成果の共有の機会として、少人数形式の一次史料研究会も計7回開催し、『遊廓社会史入門(仮)』の原稿案の検討のほか、1870 年代末から始まる「自由廃業」裁判関連史料や、宮城県仙台市若柳町遊廓関係の周旋業者による手紙類、沖縄性産業関係者のオーラルヒストリー、大和郡山洞泉寺遊廓の妓楼経営史料、大阪南五花街遊廓関係史料など多様な一次史料の分析を通じて、妓楼経営や娼妓の稼働実態、遊客・遊興の実態に関する分析を進めた。 遊廓社会研究会は、a原直史氏報告(「遊女・遊客の移動と「地域遊興圏」の形成―新潟・新発田・木崎から蒲原郡、北関東・南東北へ―」)、b及川慈子氏報告(「近世大坂の廻船における性売買―御池通五丁目・六丁目の茶屋と勧進小船を中心に―」)、2023年度総括研究会として、c加藤圭木氏報告(「植民地期朝鮮の地方財政と性買売」)、d人見佐知子氏報告(「コメント:「内地」公娼制度研究から」)、e佐賀朝氏報告(「コメント(論点整理)―加藤圭木報告と人見佐知子コメントを受けて―」)の3回を開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一次史料研究会を7回開催し、先行する研究活動で収集した多様な一次史料類の分析作業を、研究代表者・分担者がそれぞれ前進させることができた。具体的には、a宮城県仙台市若柳町遊廓関係の周旋業者による手紙類、b大和郡山洞泉寺遊廓の妓楼経営史料、c大阪南五花街遊廓関係史料など、妓楼経営の内部的実態や娼妓の稼働状況、また遊客や遊興の実態などを明らかにする作業が前進した。これらの分析作業の成果については、その一部を論文や研究ノートとして公表することができた。 あわせて『遊廓社会史入門』原稿案検討の中で、民事判決原本に含まれる1870 年代末~80年代における「自由廃業」裁判の関連史料の検討を開始したほか、研究分担者がこれまでに調査・収集した戦後沖縄における性産業関係者のオーラルヒストリーを活かした分析や叙述を共同で検討する作業も行った。 さらに、先行する科研で調査対象とした愛媛県松山市の松ヶ枝遊廓の妓楼経営史料は、現時点ではコピーのみが存在しており、大阪公立大学と愛媛県近代史文庫で各1部を保管しているが、2023年度にはその一部をデジタルデータ化し、共有することができた。今後、同史料を用いた先行研究に取り組んだ愛媛近代史文庫の研究者とも交流する機会を用意した上で、同史料の原本の捜索とデジタル化した史料の分析作業にも着手することが期待される。また、古書店で購入した『遊客名簿』(大和郡山洞泉寺遊廓)についても、2023年度にデジタル化を進めることができた。洞泉寺遊廓については、もともと研究分担者が、分析を進めてきた遊廓でもあるため、今後、対象時期を延ばして、妓楼経営や遊客の分析を行う可能性が強く見込める。2023年度に現地踏査を行った東京八王子・田町遊廓の妓楼経営史料についても研究分担者がすでに分析作業に着手しており、その成果を研究会などで共有しつつ分析を進めることになろう。
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今後の研究の推進方策 |
遊廓社会史研究の成果をまとめ解説する『遊廓社会史入門』の刊行も目指しつつ、今後も引き続き、遊廓社会における一次史料の調査・収集および、重点的に分析を進める。少人数による一次史料研究会を今後も月に一度の開催を積み重ねていく。 遊廓社会の内部構造分析の対象として、引き続き、a宮城県仙台市若柳町遊廓関係史料の総合的研究、b栃木県烏山遊廓の経営帳簿の複合分析を通じた妓楼経営の内部的実態の解明、c東京都八王子市郷土資料館所蔵の八王子・田町遊廓史料の調査・収集、 d 大阪公立大学所蔵の南廓娼妓履歴・契約書綴の分析など、一次史料の整理・調査分析を進める。新たに複数の箇所に分散して所蔵されている事実を確認した、e仙台・小田原遊廓関係史料(東北歴史博物館・大阪公立大学・個人所蔵)についても、史料調査・収集や整理・デジタル化などを進めていく。 これまでに分析作業を行ったf横浜遊廓関係文書のうち明治初年~10年代の遊女・娼妓の契約書類については、その成果を論文や研究ノートとして取りまとめ、公表することを目ざす。 2023年度末に国文学研究資料館で調査・収集を行ったg山形県米沢市の近代妓楼経営史料やh三重県鳥羽地方の近世遊所関係史料などについても、先行研究との照合も含めて検討を進め、遊廓・遊所研究データベースへの成果反映などを目ざす。加えてリバティおおさか旧蔵資料に含まれるi京都・島原遊廓の歌舞練場所蔵一次史料やj名古屋・中村遊廓の妓楼経営史料についても、基礎的調査から着手して、研究分担者や若手を含めた研究協力者による分析作業を促したい。 最後に、植民地遊廓関係の史料調査・収集にも引き続き取り組む。韓国国家記録院収蔵公文書や、現地踏査を重点的に進め、地方財政と性買売との関係も視野に入れて取り組む。なお、研究代表者・分担者それぞれが随時、近隣の大学図書館・博物館において、関係資料の調査を実施する。
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