研究課題/領域番号 |
23K25377
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補助金の研究課題番号 |
23H00680 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03030:アジア史およびアフリカ史関連
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
村岡 倫 龍谷大学, 文学部, 教授 (30288633)
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研究分担者 |
鈴木 宏節 神戸女子大学, 文学部, 准教授 (10609374)
白石 典之 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (40262422)
藤原 崇人 龍谷大学, 文学部, 准教授 (50351250)
松川 節 大谷大学, 社会学部, 教授 (60321064)
中田 裕子 龍谷大学, 農学部, 准教授 (70598987)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2025年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2024年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2023年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
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キーワード | 釈迦院遺跡 / ハルザン・シレグ遺跡 / 草原のシルクロード / モンゴル帝国 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究のメンバーは、モンゴル国現地での調査・研究を長く継続し、多くの成果をあげてきた。ハルザン・シレグ遺跡が重要な軍事拠点であったことを明らかにし、その発掘調査によって仏像の一部を発見している。また、釈迦院遺跡の本格的な発掘調査も行なった。前者はモンゴル高原から中央アジアへ、後者はシベリア方面に通じる「草原のシルクロード」の要衝でり、民族融合の場でもあったと感がえられる。本研究ではさらなる調査を行ない、遺跡全体の構造の把握、出土物などの分析、関連文献資料との対照など、総合的な研究を進め、歴史上、これらの地を往来する多様な人々によって、両地で行なわれた交流の諸相を解明する。
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研究実績の概要 |
2023年度は昨年度に続き、「草原のシルクロード」の拠点と考えられる釈迦院遺跡の発掘調査を行なった。その結果、基壇は縦横20メートル、高さ1.2メートル、その上に縦横9メートル、22個の礎石を有する巨大な木造建造物が建てられていたことが判明した。正面(南面)に幅2.2m、長さ3mの傾斜階段があり、その両側から大量の屋根瓦が出土しており、「十五」という漢字が彫られた屋根瓦もあった。昨年度の基壇西面に続き、基壇北面からも角材(地覆)と羽目板が出土した。注目すべきは、木造建造物の中心地点の地表面下に長さ1.4メートル、直径30センチの掘立柱が埋められていたことである。C14年代比定の結果によると、正面傾斜階段付近の骨片の年代(2σ暦年代範囲 / 2σ calendar year range)が1225calAD - 1280calAD (95.4%)と、出土碑文の年代(1257年)に合致しているのに対し、埋もれていた掘立柱周辺の骨片の年代は、1163calAD - 1234calAD (84.9%)と50年以上古い値が出た。 遺跡の出土物に関しては、研究分担者の白石典之が実見し、瓦の特徴・技法は、モンゴルでは他に例がなく、同時代のカラコルムの仏教寺院である興元閣をはじめ、これまで出土した瓦は中国風であるが、それとは全く違い、陶器も、胎土や技法モンゴル高原在地のもとではなく、東トルキスタン方面の影響が見られると分析している。 これらを踏まえ、モンゴル側は現地の考古学雑誌に調査報告の簡報を出し、現在は詳細な報告書を作成中である。研究代表者である村岡は、モンゴル国において、9月に開催された「モンケハーンとその時代」国際学術討論会および11月の「仏教と考古学」学術会議で、今年度の発掘調査の成果を報告し、モンゴル現地の研究者たちの関心を集めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、モンゴルにおける仏教施設の二つの遺跡を調査し、その地を中継地としたモンゴル帝国時代の「草原のシルクロード」の意義を明らかにするものである。その一つであるハルザン・シレグ遺跡については、すでに前回の科研費による調査で、チンギス・カン時代の仏像の一部を発見し、仏像が安置されていた祠や建造物を確認している。本遺跡については、その意義は研究分担者の中田裕子を中心に文献との照合によって、解析が順調に進んでおり、モンゴル高原から中央アジアへ通じる「草原のシルクロード」の要衝であり、民族融合の場でもあったことが明らかになり、一定の成果を得ている。これまでにも日本やモンゴルでの学術会議で報告がなされ、モンゴル国おいても、これが重要な歴史遺産であることは認識されるようになった。 釈迦院遺跡については、これまでにも知らていたが、公式な調査報告書が作成されたことがなく、本研究により、遺跡全体の構造を把握し、出土物などを分析し、関連文献資料との対象など、総合的な研究を進め、正式な形の調査報告書作成を目指しているが、上記「概要」に記したように、調査は順調に進んでおり、モンゴル側もまずは簡報を公にした。今後さらに研究は進展し、公式な遺跡調査報告書をなるはずである。 合わせて、両地で行なわれた交流の諸相を解明するために、これらの地の周辺についても巡検調査を進め、モンゴル以前の遊牧民の祭祀場の状況を確認しており、「草原のシルクロード」として長く機能していたことが確認できた。本研究は、モンゴル国においても関心が高く、学術的な遺産となることが期待されており、国際貢献を果たしていると自負するものである。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はまず、夏の期間中の本格的な発掘調査等に関わる事前調査、現地研究者との意見交換のため、5月に研究代表者である村岡と研究分担者の松川がモンゴルに渡航している。その際の費用は、本研究費の支給はまだなので、それぞれの別の研究費から支出した。この予備調査では、後の研究実施の計画を検討しており、新たなモンゴル帝国時代の遺跡に関する情報も得ている。本年も釈迦院遺跡を重点的に調査するが、ハルザン・シレグ遺跡周辺の地域にも巡検調査を加え、新たな遺跡調査も行なう。 5月~8月にかけては、研究代表者、研究分担者、研究協力者で研究集会を開き、モンゴル側研究者とはメールによって、発掘の時期や方法など、より具体的な計画を決定していく。その計画に基づき、8月下旬にモンゴル国に渡航し、釈迦院遺跡およびハルザン・シレグ遺跡周辺の巡検調査を行なう。その後、本年は我々メンバーで行なってきた日本モンゴル共同調査プロジェクトが30周年を迎えるので、メンバーのうち数人が発表し、これまでの成果やこれからの研究計画などを発信する。ゴビ地方においても新たなモンゴル帝国時代の遺跡が発見されたとの情報があり、場合によってはメンバーの何人かは、学会の後、その調査も行なうこととする。 11月あるいは12月に、2名ほどがモンゴルに渡航し、発掘による出土物を受け取り、日本で放射性炭素年代測定を分析研究所に依頼する。モンゴル側は発掘調査報告書を作成し、その完成と年代測定の結果、メンバーの文献研究の成果に基づき、2025年2月あるいは3月に研究代表者が所属する龍谷大学で研究集会を開催して(モンゴル側の研究者も参加できるようオンラインも検討)参加する全研究者が情報を共有するが、その際、他の研究者や研究を志す若手の参加も広く求める。研究成果は、ニューズレターとして発行し、学界や一般に還元し、次年度へ研究を引き継ぐことにする。
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