研究課題/領域番号 |
23K25385
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補助金の研究課題番号 |
23H00688 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03050:考古学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高倉 純 北海道大学, 埋蔵文化財調査センター, 助教 (30344534)
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研究分担者 |
橋詰 潤 新潟県立歴史博物館, その他部局等, 研究員 (60593952)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,070千円 (直接経費: 13,900千円、間接経費: 4,170千円)
2026年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2025年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 尖頭器 / 更新世末 / 北海道 / 実験痕跡研究 / 旧石器時代 |
研究開始時の研究の概要 |
更新世末の北海道を対象に、自然環境の変化と人類集団の行動系との相互関係を究明するためのアプローチの一つとして、当該期の主要な狩猟具であった尖頭器がどのように製作、使用されていたのか、その相互関係はどのようなものであったのかという課題に取り組む。そのため、層位的出土状況や数値年代によって、尖頭器を含んだ石器群の時空間変遷を把握する。次に、製作・使用痕跡に焦点をあて、尖頭器の原材料から製作、使用に至る一連の過程の相互関係を複数の石器群で分析する。これらの検討に基づき、尖頭器の製作・使用行動は晩氷期のはじまりを画期として大きな変容が起こっていたという仮説を検証する。
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研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、北海道の更新世末における両面調整尖頭器を伴った石器群の時空間変遷を明らかにすること、同時期に展開していたと想定される細石刃技術との関係を明らかにすること、である。北海道の更新世末における尖頭器の変遷を把握するうえで、信頼できる石器群の年代測定値を蓄積していくことはきわめて重要である。そのため、第一に、北海道内での尖頭器・有茎尖頭器の出土資料に関する情報の収集と立地・遺物・石材・年代値に関するデータベース化を進めた。第二に、蘭越町立川1遺跡で発掘調査を実施した。黒曜石製の有茎尖頭器を伴う石器集中部の存在を確認したうえで、集中部の完掘を目指した発掘調査の遂行と遺跡の形成過程を把握するための諸データの取得を進めた。第三に、北海道内で木葉形尖頭器・有茎尖頭器が得られている複数の石器群を対象に資料調査を実施し、フラクチャー・ウィングの分析にもとづいた製作技術および衝撃剥離痕などの検討による使用法の分析を進めた。比較のため本州でも同様の視点から更新世末の尖頭器に関する分析を実施し、北海道と本州との間での相違点を明らかにするための基礎的な分析作業に取り組んでいる。第四に、大形両面調整尖頭器の組成が断片的には知られているが、未報告であった八雲町大関遺跡発見の尖頭器石器群の資料整理を実施した。北海道内での尖頭器の変遷と本州との関連性を追求するうえで重要な資料であることを確認した。第五に、尖頭器の製作技術を検討するために必要となる分析法について意見交換するために、フランスのパリ第10(ナンテール)大学を訪問し、石器製作技術の分析に関するワークショップを開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一に、北海道での有茎尖頭器を組成する石器群に関しては、石器型式組成や製作技術に関する概要とこれまで得られてきた年代測定値の検討をおこない、関連する問題に対しての考察を含めた総説論文をまとめ、出版した。また尖頭器と併行して展開していたと想定される細石刃技術の北東アジアにおける出現・展開過程に関しても、中国北部・韓半島・日本での近年の研究過程を網羅的にレヴューし、現状の課題をまとめた総説論文を執筆し、出版した。第二に、北海道蘭越町立川1遺跡においては、春・秋に発掘調査を実施している。時期差を有すると考えられる有茎尖頭器を伴う石器集中部と蘭越型細石刃核を伴う石器集中部が空間を別にして確認されており、それぞれの集中部の全容を把握することが重要となる。この発掘調査では、石器群が含まれている堆積層の形成年代を把握するために、年代学や火山灰編年学の専門家との連携にも取り組んでいる。調査の中間成果として概報を毎年発表してきた。第三に、尖頭器石器群の製作技術および使用法の時空間変遷に関する分析からは、押圧剥離法と複合的投射狩猟具の使用が相関的に出現しているという見通しを得ることが出来ている。この想定を検証するためのデータを北海道と本州で系統的に獲得し、当該期の人類の行動系を明らかにしていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、立川1遺跡の発掘では、これまで確認されている石器集中部の完掘を達成し、石器群の型式組成・製作技術・使用痕分析に着手するとともに、利用石材の産地推定分析や遺跡内での遺物の空間分布の分析も実施していく。放射性炭素年代測定法や光ルミネッセンス年代測定法などの適用で、堆積層の形成年代を明らかにし、石器群の年代的・行動論的評価を可能とするデータを得ていきたい。第二に、大関遺跡の資料に関しては、北海道と本州を対比させながら更新世末における尖頭器の変遷過程を把握していくうえで、基礎資料として重要であるため、資料の記載と分析をあわせた報告書の作成を進め、公開を実現させたい。第三に、尖頭器石器群の製作技術および使用法に関する分析は、北海道および本州でさらに進め、時間軸に沿った変遷過程を明らかにしていきたい。この分析の成果は、更新世末の環境変動のなかで、尖頭器の製作技術、投射・装着方法を含めた狩猟システム、生業活動の相互がどのように関連しながら変化していたのかという問題の理解に大きく貢献するものであり、国際査読誌への論文の投稿だけでなく、同様の関心を有する国内外の専門家と議論をおこなう場を設けていくことが国際的にも重要といえよう。成果のとりまとめが進んだ段階で、国際会議の開催も計画している。実現できれば、今後の国際的な研究の進展に資する機会となろう。
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