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音波探査法を用いた古墳の周濠の復元的研究

研究課題

研究課題/領域番号 23K25396
補助金の研究課題番号 23H00699 (2023)
研究種目

基盤研究(B)

配分区分基金 (2024)
補助金 (2023)
応募区分一般
審査区分 小区分03050:考古学関連
研究機関花園大学

研究代表者

高橋 克壽  花園大学, 文学部, 教授 (50226825)

研究分担者 岸田 徹  同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (50728235)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2027-03-31
研究課題ステータス 交付 (2024年度)
配分額 *注記
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2026年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2025年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2023年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
キーワード音波探査 / 古墳 / 周濠 / 島状遺構 / 他界観 / 古墳の周濠 / レーダ―探査 / 墳丘復元 / 湛水状態 / 古墳の思想
研究開始時の研究の概要

古墳時代を代表する巨大な前方後円墳には、墳丘周囲に水を湛えた周濠をめぐらすものが数多くある。しかし、それは古墳築造時の姿とは大きく異なるとする見解が主流で、濠の底から島状施設がみつかることもある。いっぽう、そうした施設と埴輪の樹立状況や渡り土手などの構築状況から、水位調節しながら水を溜めていたと考えられる事例も増えている。
本研究では、これまで発掘調査や探査が実施できなかった周濠のある古墳に対して、水面から音波探査を実施し、そこに用意された島状施設や堰などの遺構を把握することを目指した。そして、これまでの発掘成果や地中探査の結果とあわせて古墳の本来の姿と思想を明らかにする。

研究実績の概要

古墳の周濠が本来どのようなものであったかを知ることは、古墳時代の人々が前方後円墳を代表とする古墳にどのような思いを抱いていたのか、そして他界がどのようなものであると認識していたかなど、古墳の本質に関する重要なテーマである。本研究は、従来調査が難しいとされてきた水を湛えた周濠をもつ古墳に対して、水面上から発する音波を用いて元の地形を復元する最先端の探査作業を中心に、発掘調査や地中レーダー探査なども適宜行いつつ、総合的に墳丘や周濠の本来の姿を復元しようとするものである。
研究初年度は古墳時代前期前半の奈良県天理市黒塚古墳と同じく前期でも後半に編年される大阪府岸和田市摩湯山古墳の2大古墳の周濠を調査した。
黒塚古墳では、水中へのアクセスの難しい墳丘の東側を断念し、前方部墳丘の南側と西~北側に対して実施した。その結果、それぞれの周濠の底はほぼ水平で、前方部の南側と西~北側とでは大きなレベル差があることが確かめられたが、明確な墳丘裾を示す傾斜変換点はうまくとらえきれなかった。しかし、南側の裾に位置するラインには異状物がライン状に並ぶ様子が見え、古墳が築かれた後のある時期に景石や造形物が列状に配置されていたことが復元できた。
摩湯山古墳では、前方部を取り囲む周濠を調査したが、水深も十分でなく周濠内の地形を的確にとらえられたかどうかは疑問が残る。しかし、くびれ部よりの南側前方部裾に周濠内へ張り出す石敷の施設があることを汀線付近の遺構から知りえた。
発掘調査は夏季に福井県若狭町上ノ塚古墳で実施し、馬蹄形の周濠の北側に周堤があり、そこを横切る溝から周濠の水を低い方へ排水することが長期間なされていたことがわかった。さらに、同町下船塚古墳では周濠部分の地中レーダー探査を実施し、周濠の復元に必要な情報を得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究期間を通して各時期の周濠をもつ古墳を古い時期のものからおおよそ2基ずつ音波探査していくという基本方針が維持できた。しかし、そのうち摩湯山古墳では水深不足によるものか、それとも後世の削平によるものか定かでないが、期待された周堤の検出は十分できなかった。その代わり、造り出しの萌芽と見られる石敷き施設の張り出しを現状の周濠汀線付近で確認できた。その確認レベルよりそう深くないところに濠底があるものと思われる。いっぽう黒塚古墳は葺石や埴輪をもたない古墳であり、かつ、新しい時期の庭園としての利用があったことから、濠内の堆積層と地山の明確な違いはとらえきれなかったが、裾に位置する異状物の検知で周濠の水位がかなり低かったことを知りえた。
そうした音波探査法の不安定さを補うことが必要なことが十分認識できたため、補完的な調査として下船塚古墳の周濠に対する地中レーダー探査を実施し、多くの知見を得ることができた。かつての発掘調査成果を勘案すると、前方後円墳の墳丘の北側が、一回り墳丘規模が大きくなり、その間に周濠の陸橋が存在することが予測できた。
また、夏季に行った上ノ塚古墳の発掘調査で検出した周濠の排水溝の存在は、水の維持管理や古墳の景観に不可欠な貴重な遺構であり、今後そうした事例の収集が必要なことを認識させることとなった。おそらく、前出の下船塚古墳の陸橋にも水位調節のための開渠や暗渠が設けられていたと考えられる。これまでは陸橋や渡り土手の存在に焦点を当ててきたが、その一部を開削して水を通す工法にも注意すべきことがわかった。

今後の研究の推進方策

今後、基本的には中期から後期の古墳に対して音波探査を実施していくが、これまでの実績を踏まえるなら、音波探査が有効に成果を上げるためには1m以上の水深がある周濠をもつ古墳に調査対象を絞らなければならない。今のところ装置や方法の改善は容易でないことから、この制約を認識したうえで、場合によっては古墳の年代にこだわらず対象を選ぶ必要があろう。本年度はまず十分に水深のある後期の奈良県天理市別所大塚古墳に対して実施することを計画しているが、さらなる探査は水位の条件しだいであきらめることも考えられる。
これまでの研究によると、周濠におけるもともとの湛水状態は現状よりはるかに低い水深となっていたことが推測できるようになった。このことが溜池のための改変があったとしても、十分な水深のある周濠を少なくしていると考えられる。
そして、これまでの成果を総合すると、そこに張り出す、造り出しや島状施設などは、摩湯山古墳が築かれた4世紀後半頃にその萌芽が見られることが予測できるようになった。この時期は百舌鳥・古市古墳群の巨大古墳群登場直前にあたり、造り出しが前方部裾両側あるいは片側に備わるようになる過渡期にあたる。この時期の動向の解明を本研究のひとつの中心課題に据えることが妥当である。それはまた、同一水面の盾形周濠が巨大古墳で定式化することと結び付くものである。
こうしたことから、現状では湛水状態にはないが、4世紀後半にさかのぼる京都府京丹後市網野銚子山古墳や京都市天皇ノ杜古墳などの類似性の高い前方後円墳にレーダー探査を実施して周濠と付属施設の情報を集めていきたい。
また、発掘調査には現状ではさまざまな課題があるため、昨年みつけた摩湯山古墳の石敷施設の実測等による記録化などの異なるフィールドワークも実践しつつ、報告書などの読み込みによる周濠の復元的考察を進めたい。

報告書

(1件)
  • 2023 実績報告書
  • 研究成果

    (1件)

すべて 2024

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] 上ノ塚古墳の発掘調査成果2024

    • 著者名/発表者名
      柳澤慎之介
    • 雑誌名

      花園大学博物館学芸員課程報告

      巻: 5 ページ: 26-28

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書

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公開日: 2023-04-18   更新日: 2024-12-25  

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