研究課題/領域番号 |
23K25409
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補助金の研究課題番号 |
23H00712 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03060:文化財科学関連
小区分03070:博物館学関連
合同審査対象区分:小区分03060:文化財科学関連、小区分03070:博物館学関連
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
酒井 英男 富山大学, 理学部, 客員教授 (30134993)
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研究分担者 |
三宮 千佳 富山大学, 学術研究部芸術文化学系, 准教授 (10454125)
竜田 尚希 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 助教 (30521314)
長柄 毅一 富山大学, 学術研究部芸術文化学系, 教授 (60443420)
菅頭 明日香 青山学院大学, 文学部, 准教授 (90554072)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
11,310千円 (直接経費: 8,700千円、間接経費: 2,610千円)
2026年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2025年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 金属製遺物 / 青銅 / 磁化 / 年代 |
研究開始時の研究の概要 |
考古地磁気の研究では,焼土や土器・陶磁器の残留磁化(磁化)が地磁気を記録する特性を用いて,年代推定等の研究が行われている.しかし,研究対象は磁性粒子を含む資料に限られることから,非鉄製の青銅製品や金銅仏等は,磁化はないと見なされて,従来,研究されていなかった.申請者等は,研究方法を工夫して青銅に微弱な磁化を見つけた.本申請では,考古学で重要な非鉄の金属製遺物が安定な磁化を有することを証明し,磁化による年代や製造過程等の新規研究法の構築につなげる.
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研究実績の概要 |
考古地磁気の研究では,焼土,土器・陶磁器の残留磁化(磁化)が地磁気を記録する特性を用いて,年代推定等の研究が行われている.対象は磁性粒子を含む資料に限られ,非鉄の青銅製品や金銅仏等は,磁化はないと見なされて,磁化に関する研究は行われていなかった. 我々は,研究方法を工夫し,また超伝導磁力計の利用により,青銅(銅,スズ)に微弱な磁化を見つけた.本研究では,考古遺物の材料としても重要な青銅について,不純物としてごく微量含まれる強磁性物質の持つ残留磁化の存在を確認し,それが鋳造時の磁場の記録となっていることを明らかにする.併行して,帯磁率と帯磁率異方性による鋳造時の状況の研究も行う.以上の基本研究をもとに,磁化による青銅製品の年代・製造過程に関する新たな研究法を開発することが目的となる.研究は他の非鉄金属遺物でも行う. 令和5年度は,富山大学学内で鋳造した青銅試料(板)の磁化研究をまとめた.銅,スズの反磁性に紛れて,通常の磁化率では検出困難な,微量の強磁性物質が発する残留磁化の測定に成功した結果を,査読論文に公表した.また市販青銅製品(古い時代の鋳造)の研究も実施し,有意な磁化が得られたので,小試料に分けて磁化強度と帯磁率の分布を検討している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
磁化から過去の地磁気を探る考古地磁気では,非鉄金属遺物は研究されていなかったが,申請者らは独自方法と高感度磁力計により,青銅を研究して微弱な残留磁化を認めた.青銅(銅・スズ)の反磁性と微量不純物の強磁性(磁化)という一見,矛盾する青銅が示す磁性の本質を明らかにできた.成果は査読論文で公表し,磁性・磁化を用いる新たな研究法の開発の目処はたった.青銅器が,地磁気の記録となった磁化を獲得しておれば,過去の地磁気変化との対比から,年代,産地や製造過程の研究が可能となる. もう一つの磁性研究として帯磁率(磁化率)では,青銅製品での銅・スズの粒子分布を研究した.製品より切り出した小試料の,磁化強度の分布による不純物強磁性粒子の侵入との比較も新たな課題になった.小試料の帯磁率とその異方性の高感度機器を用いる測定により,顕微鏡では不明な銅・スズ粒子のマクロな配向が解析できる.従来に無い研究であり,流体力学の検討(シミュレーションとの対比)から,銅・スズ粒子の配向・湯道の新たな調査法にもなる.市販青銅鏡について,上記研究を行い良い結果が得られている.また,研究分担者による青銅の金属分析,金銅仏のポリゴン解析,古銭の研究も含めて,研究は順調に進んでいると考える.
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今後の研究の推進方策 |
青銅の磁性に関して,富山大学芸術文化学部で鋳造する人工鋳造試料での研究は継続して行い,基本データをさらに収集する.青銅の反磁性と磁化の一見,矛盾する磁性の本質の研究を高めて,磁性を用いる新規研究法を確立する. 実際の青銅製品での研究を行うため,分担者,研究協力機関と共同して,利用する資料の情報を収集する(超伝導磁力計での非破壊測定が可能なことも条件となる).富山市埋蔵文化財センタの銅鈴など,幾つかの試料を研究させて頂ける手続きを進めている. また,市販青銅鏡(江戸時代の製作,直径30cm,鏡と取っ手からなる)が入手でき,残留磁化と帯磁率の研究を始めている.非破壊の残留磁化測定はできないサイズであるが,鏡・取っ手部について,ダイヤモンドカッタにて2cm角に切り分けた小試料を準備した.各小試料の元の鏡での位置と方位を記して,超伝導磁力計による予察測定を行い,磁化方向で良好な結果を得た.高感度帯磁率計の調査では,銅・スズ粒子の製品中における分布と配向を探るが,流体力学の検討も含めて鋳造湯の動きの可視化が期待される.研究分担者による金属分析,金銅仏のポリゴン解析,古銭の研究も進める.
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