研究課題/領域番号 |
23K25456
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補助金の研究課題番号 |
23H00759 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05040:社会法学関連
小区分05060:民事法学関連
合同審査対象区分:小区分05040:社会法学関連、小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
竹内 寿 (奥野寿) 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (10313058)
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研究分担者 |
大木 正俊 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (00434225)
中里 浩 東京経済大学, 現代法学部, 教授 (10965487)
長谷河 亜希子 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (00431429)
藤木 貴史 法政大学, 法学部, 准教授 (20846399)
後藤 究 成城大学, 法学部, 専任講師 (20963317)
岡田 外司博 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (30213945)
土田 和博 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (60163820)
島田 陽一 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 名誉教授 (80162684)
石田 眞 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 名誉教授 (80114370)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2025年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2023年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
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キーワード | 労働法と競争法の関係 / レイバー・エグゼンプション / 事業者と労働者の峻別 / フリーランス / ギグワーカー / デジタルプラットフォーム / 独禁法と憲法 / 公共の利益 |
研究開始時の研究の概要 |
労働法と競争法は,もともと,集団的労働関係法(労働組合法など)が競争法(反トラスト法など)と<対立>する形で生成され,両者の「境界」が定められてきた経緯があるが,近年の労働市場と企業組織の変容の中で,働く人の就業形態が多様化し,世界各国において,この「境界」が揺らぐと同時に,自営的に働く就業者(フリーランスなど)を競争法によって保護しようとする,労働法と競争法の<協働>の動きもみられるようになってきている。本研究は,以上の動向をふまえ,労働法と競争法の関係を,<対立>と<協働>の二つの視角から総合的に検討し,両法間の新たな「境界」の設定と<協働>をめざすものである。
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研究実績の概要 |
本研究は、日本における労働法と競争法の関係のあり方(労働関係への競争法の適用のあり方)につき、「対立」と「協働」の二つの視角を用い、日本における歴史と他の先進国との比較により明らかにすることを通じ、その今後のあり方(両法間の新たな「境界」の設定と「協働」)を展望することを課題としている。 本年度は、両法間の対立が生じ得る労働者等の集団的活動に関し、これまで両法間の「境界」がどのような方式、規範的根拠に基づき設定されていたかの解明を中心に、(1)日本における歴史と現状の検討、及び、(2)比較対象国の基礎的な研究を行った。 (1)に関しては、日本の独禁法は、立法時には、同法による規制の対象となる「事業者」と「労働者」を峻別する方式を採用したものの、都営芝浦と畜場事件最高裁判決(最一小判平成元・12・14民集43巻12号2078頁)により事業者概念が広範に解釈される状況下で、上記の峻別をなお維持する見解と、むしろ労働組合法により正当化される行為は独禁法上も問題としない形で「境界」を定める見解とが対立する状況に至っていること、前者を支持する見解に関し、労働者の団結権等を保障する憲法28条と独禁法の憲法的基礎の観点などから議論がなされていること、更に、労働者等の集団的活動について「公共の利益」の観点から独禁法上正当化される理論的余地があること等を明らかにした。 (2)に関しては、アメリカ、ドイツ・EUについて検討を行い、アメリカについては、原理的には競争法の適用があることを前提に労働者の集団的活動への適用を除外するレイバー・エグゼンプション方式が採られていること及びその法理の具体的内容、ドイツ・EUについては、「事業者」と「労働者」を峻別する方式を採ると共に社会政策や労使対話の重要性をも踏まえて競争法の適用除外がなされていること及びその法理の具体的内容を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要にある通り、本年度は、両法間の対立が生じ得る労働者等の集団的活動に関し、これまで両法間の「境界」がどのような方式、規範的根拠に基づき設定されていたかの解明を中心に、(1)日本における歴史と現状の検討、及び、(2)比較対象国の基礎的な研究を行った。 研究実施の具体的方法として、一定のペースで研究会を開催し、上記事項にかかる研究報告及びそれについての討議を行うことで研究を行った。研究計画全体に係る最初の研究会(令和5年4月28日)以降、(1)に関しては、主に、第2回(同年6月17日)、第5回(同年12月18日)、第6回研究会(令和6年2月6日)にて、(2)に関しては、主に、第3回(令和5年8月29日)、第4回(同年10月9日)にて、研究を行った。文献資料に基づくこれらの研究報告を通じた研究の進捗については、おおむね計画の通りと考えている。 もっとも、(2)に関しては、アメリカ、ドイツ・EUの海外ヒアリング調査をも予定していたところ、この点に関しては、ヒアリング先との関係の構築等の点で困難があり、アメリカに関して関係構築を含めた予備的な調査(令和6年3月19日~24日)を実施するにとどまった。このことを踏まえ、全体としては、「やや遅れている」と判断した(なお、上記予備的調査等を生かし、ドイツを含めて、令和6年度にアメリカ、ドイツ・EUの海外ヒアリング調査実施を実現するための作業を本報告書作成時点において既に進めているところである)。
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今後の研究の推進方策 |
今後においては、基本的に当初の研究計画に沿った形で、残りの研究期間の2年度を通じ、これからの労働法と競争法の「境界」のあり方を明らかにするために、研究の進捗が「やや遅れている」とした事情である、アメリカ、ドイツ・EUの海外ヒアリングの令和6年度実施のほか、フリーランスやプラットフォームワーカーなどの自営的に働く就業者の団体交渉要求等を巡って,労働法と競争法がどのように対応している(適用されていく)のかという点を明らかにする研究を行うと共に、労働者やそうした就業者の役務提供に係る、役務受領者側が課す競業避止義務等についての労働法や競争法の役割について、両法間の「協働」のあり方を明らかにする研究を、日本法の研究及び比較対象国の法の研究を通じて行う。 研究の推進に当たっては、引き続き、研究会を一定のペースで開催し、研究組織のメンバーによる報告のみならず、メンバーの外からも報告者を招く形で研究を行うと共に、特に比較対象国の研究につき、アメリカ、ドイツ・EUに関して海外ヒアリング調査を実施するほか、他の比較対象国(イギリス・イタリア)についても、研究者を招くあるいは上記と同様のヒアリング調査を実施する形等を通じて行う予定である。
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