研究課題/領域番号 |
23K25462
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補助金の研究課題番号 |
23H00765 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
小区分05040:社会法学関連
合同審査対象区分:小区分05040:社会法学関連、小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中出 哲 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (40570049)
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研究分担者 |
野村 美明 大阪大学, 大学院国際公共政策研究科, 特任教授 (20144420)
小塚 荘一郎 学習院大学, 法学部, 教授 (30242085)
土岐 孝宏 中京大学, 法学部, 教授 (70434561)
榊 素寛 神戸大学, 法学研究科, 教授 (80313055)
小林 一郎 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (80962539)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
10,270千円 (直接経費: 7,900千円、間接経費: 2,370千円)
2025年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | 保険契約理論 / 大数の法則 / マスリスク / 非マスリスク / ハイブリッド保険契約 / マスリスクの保険 / 非マスリスクの保険 / 保険法 / 英米法 / ハイブリッド約款 / 法と経済 / リスクの限定 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、各種の保険を、大量で同種の契約を前提とするマスリスクの保険(生命保険、自動車保険等)と統計データや件数が少なく予想が難しい非マスリスクの保険(海上保険、宇宙保険、サイバー保険、再保険等)に大別し、後者の保険の特徴をもとに、特有の契約理論を探求するものである。 非マスリスクの保険では、外国の条項を取り入れたり、リスク限定のための種々の条項が利用される特徴がある。 本研究は、リスクの特性に着目することで、給付態様という外形面をもとに体系化された現行保険法とは異なる保険契約の理論を探求するものである。
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研究実績の概要 |
本研究は、各種の保険を、大量で同種の契約を前提として大数の法則による一定の予測が可能なマスリスクの保険と統計データや件数が少なく予測が難しい非マスリスクの保険に大別し、後者の保険の特徴をもとに特有の契約理論を探求するものである。後者では、再保険等の必要から、外国の条項を取り入れたり、リスク限定のための種々の条項が利用される場合が多い。本研究は、リスクの特性に着目することで、給付態様という外形面をもとに体系化された保険法とは異なる契約理論を探求するものである。 本年度は、初年度として、各種の非マスリスクの保険についての数理面の実務や企業のリスクマネジメントの実態、非マスリスクの保険の契約の実情を確認するところから研究を進めた。まずは、保険制度の数理的基礎の理解が必要であることから、大数の法則の意義等について、保険数理の専門家との研究会を実施した。第二に、非マスリスクの保険契約の実態と問題点を調査するために、企業のリスクマネジャーや保険ブローカーから、企業がいかなるリスクを転嫁しようとするか、特に資本コスト対比で保険に期待している効用などを確認した。第三に、保険実務者と面談して、非マスリスクの保険に関する情報を入手する方針で、宇宙保険の専門家との研究会を実施し、宇宙保険契約についての知見を深めた。第四に、非マスリスクの保険では、再保険などの国際的なリスク分散の仕組みが必要となることから、保険販売や再保険手配における国際保険ブローカーの機能や活動についても研究した。2月にはシンガポール、3月にはイタリアとロンドンに出張して、非マスリスクの保険の実態や国際保険ブローカーの活動について意見交換も行った。以上の材料等をもとに、2つの研究報告や3つの論文を発表したが、次年度には、中間報告として一定の成果を公表できるように研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、研究の初年度として、実態の調査や論点の洗い出し等に力を入れたが、同時に、問題意識をもとに研究報告や論文として公表した。 基礎的な情報収集については、保険制度の数理的基礎を理解するために、大数の法則の意義等について、保険数理の専門家との研究会を実施し、非マスリスクの保険数理上の位置づけと特徴について討議した。数理専門家との意見交換は今後も続けていく。また、非マスリスクの保険契約の実態と問題点を調査するために、企業のリスクマネジャーや保険ブローカーから、企業がいかなるリスクを転嫁しようとするか、特に資本コスト対比で保険に期待している効用などについて討議した。さらに、グローバル化が進んでいる会社の実態についての調査も進めた。保険実務面については、非マスリスクの保険として典型的な保険である宇宙保険を取り上げて、宇宙保険の専門家との研究会を開催し、その契約や約款についての研究を進めた。さらに、非マスリスクの保険では、再保険などの国際的なリスク分散の仕組みが必要となることから、その販売における国際保険ブローカーの機能や活動についての調査も進めた。2月にはシンガポール、3月にはイタリアとロンドンに出張して、非マスリスクの保険の実態や国際保険ブローカーの活動について知見を深めることができた。以上の材料をもとに、初年度は、2つの研究報告(日本語、英語)と3つの保険分野の論文を公表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は、マスリスクと非マスリスクに分ける本理論について、最初に、保険数理の専門家との討議・研究を行ったが、二年目には、更に数理的基盤に関する研究を補強したうえで、わが国の保険学研究者との討議・検討を経て、伝統的な保険学理論と本理論との関係や本理論の課題を明らかにし、理論を進化させていく。また、企業のリスクマネジメントの進化やプロテクションギャップの解消という観点からの考察も進める。さらに、非マスリスクの保険の手配において、保険ブローカーが重要な機能を発揮していることから、保険ブローカー制度との関係での研究も深めていく。 具体的には、5月に保険学セミナーにおいて、本理論について保険学の研究者との討議を行う。また、5月末の世界保険法学会(AIDA)を利用して、主要国の保険法研究者と本理論について意見交換を進める。また、24年10月開催の日本保険学会全国大会において、本課題のテーマを共通論題として、研究の中間報告と討議を行う。全国大会では、契約理論、数理面から見た理論、非マスリスク保険契約に特徴的な条項、保険募集における特徴、ハイブリッド約款の解釈、準拠法約款などについて討議し、種々の面から本理論の研究を深める。全国大会における発表はそれぞれ論文としてまとめ、保険学雑誌に掲載する計画である。ヨーロッパ保険契約原則の翻訳出版は、前・科研(グローバルな契約法理と調和する企業保険契約法リステイトメントの提案)で進めていたプロジェクトであるが、当案件は本科研にも有益であるので、本科研で引き継いで翻訳書刊行を実現させる。非マスリスクの保険では、再保険が必須となることから、再保険契約の研究も進める。前・科研で進めた再保険契約原則(PRICL)のプロジェクトを引き継ぎ、更なる議論に結びつける。
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