研究課題/領域番号 |
23K25500
|
補助金の研究課題番号 |
23H00803 (2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07010:理論経済学関連
小区分07020:経済学説および経済思想関連
合同審査対象区分:小区分07010:理論経済学関連、小区分07020:経済学説および経済思想関連
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
小林 創 関西大学, 経済学部, 教授 (10347510)
|
研究分担者 |
亀井 憲樹 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (00924929)
七條 達弘 大阪公立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (40305660)
神谷 和也 神戸大学, 経済経営研究所, リサーチフェロー (50201439)
高槻 泰郎 神戸大学, 経済経営研究所, 准教授 (70583798)
清水 崇 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (80323468)
TSE TSZKWAN 大阪大学, 社会経済研究所, 講師 (50881348)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
14,300千円 (直接経費: 11,000千円、間接経費: 3,300千円)
2026年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
|
キーワード | 信頼形成 / 長期的関係 / 歴史分析 / 実験経済学 / 相互信頼 / 繰り返しゲーム / 協調行動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究プロジェクトは,相互信頼の形成を一つの協調的な行動の生成ととらえ,長期的関係において協調行動を生み出す核となる個人の過去の行動履歴の共有のあり方に焦点を当てる.その共有の仕組みを一つの制度として捉えた時に,どのような制度のもとで相互信頼が形成され,経済取引における効率性がどのような水準になるのかについて考察し,江戸時代における大坂堂島米市場の取引慣習・制度を分析する.
|
研究実績の概要 |
2023年度は,10人1グループの大人数のもとでのランダムマッチングを伴う繰り返しゲームの実験を実施した.特に,情報提供制度が異なる環境で協調率がどのように異なるのかについて,実験を実施した.少ない人数のもとでは,提供される情報の細かさに応じて協調率が上昇するという関係性が観察されているが,大人数のもとでは,一定程度の情報量がないと協調率の違いを生み出さないという結果を現在得られているサンプルでは確認している.これは,大人数の場合は,協調行動からの逸脱が発生した場合,その伝播に時間がかかることに加え,その中に協調的な性向が強い被験者がいると,さらにその伝播を遅らせるためではないかと推測している. また,既に概ね実験を終えている,ベースラインとなるケースでの被験者の戦略推定を実施した.今回の実験では,Takahashi (2010)を援用して仮説を設定しており,その研究が混合戦略に依拠した理論的な結果であるため,戦略の推定にあたっても,被験者が混合戦略を採用する可能性を考慮して,推定を実施した.その結果,多くの被験者がAlways Defect戦略を採用しており,続いて,トリガー戦略,Tit-for-Tat戦略を用いている被験者が一定程度存在したことがわかった.こうした結果は,情報提供があまりないベースラインでは,協調行動はなかなか起こらないことと整合的であり,それがなぜ発生しうるのかを説明する結果となっている.さらに,トリガー戦略とTit-fot-Tat戦略については,協調状態と非協調状態では,協調行動を採用する確率に差があり,協調状態の方が非協調状態よりも協調確率が高いが,同時に,それぞれの状態において,完全に協調行動を採用したり,非協調行動を採用することはなく,一定程度の確率で,どちらの行動も採用することがわかった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は,10人1グループの大人数のもとでのランダムマッチングを伴う繰り返しゲームの実験を実施した.特に,情報提供制度が異なる環境で協調率がどのように異なるのかについて,実験を実施した.少ない人数のもとでは,提供される情報の細かさに応じて協調率が上昇するという関係性が観察されているが,大人数のもとでは,一定程度の情報量がないと協調率の違いを生み出さないという結果を現在得られているサンプルでは確認している. また,実験データの解析にあたっては,Aoyagi and Frechette (2009)で提唱されたレジーム・シフト型戦略を用いた戦略を推定手法を用いて,被験者が平均的にはどの程度遡って情報を活用しているのかということと,その情報をどのように活用しているのかについて推定をすることで,本プロジェクトにおける実際の相互信頼を生み出す行動パターンの解明につながるのではないと考え,2023年度はその推定のためのプログラミングに着手した.さらに,その予備分析として,単純なプロビットモデルによって,被験者が平均的にはどの程度遡って情報を活用しているのかということを調査すべく,既に得られている実験データを,その分析に見合うように加工をしている. ただ,上述の手法では,被験者のもつ行動パターンの異質性を十分に捉えきれない可能性もあるため,従来この種の研究でよく用いられてきた,Dal Bo and Frecehtteの戦略頻度推定法(Strategy Frequency Estimation Method)を併用することで,被験者の異質性をある程度捉えることができるのではないかと考え,こちらについてもプログラミングに着手した.
|
今後の研究の推進方策 |
大人数の実験は全ての実験がまだ完了できていないため,今後はそれを実施し,計画した実験を終えることで,必要となるサンプルの収集に努める.また,前述したように,データ分析を実施するためのプログラミングを終え,全ての実験データに対して,計画したデータ分析を実施し,実験の結果として,上述の推測を支持するような結果が得られるのかについて検討をしていく. さらに,そうした一連の結果が,理論的な結果とどの程度乖離しているのかについて,理論・実験データの両面から分析を進めていく予定である.そのような結果が纏まれば,国際的な学会にて成果を報告するとともに,関係者との懇談を通じて追加的な実験の可能性や新たなデータ分析の余地についても検討を加えていく予定である.
|