研究課題/領域番号 |
23K25551
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補助金の研究課題番号 |
23H00854 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07080:経営学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
長内 厚 早稲田大学, 商学学術院(経営管理研究科), 教授 (70452505)
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研究分担者 |
松野尾 萌 関東学院大学, 社会連携センター, 特任教授 (50972220)
舟津 昌平 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 講師 (60825173)
椙山 泰生 椙山女学園大学, 現代マネジメント学部, 教授 (70323467)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,770千円 (直接経費: 12,900千円、間接経費: 3,870千円)
2025年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2024年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2023年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
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キーワード | 国際経営 / 多国籍企業 / 日本式経営 / 暗黙知 / ベトナム |
研究開始時の研究の概要 |
国際的な知識移転は企業の競争優位を構築する有力な手段である。しかし国際的な知識移転の主眼は本国・本社側からの活用・適応といった本国視点に偏っており、現地における知識の普及という視点からおこなわれた研究は稀少である。また、国際的な知識移転における知識は、形式知化された、移転の粘着性が低い知識が主に想定されてきた。本研究は、暗黙性の高い知識が国際的に移転するという現象を捉えたうえで、帰納的に問いに答えることをめざす。本研究の問いに答えるためには、知識の移転と受容、普及において実際に起きていることを質的に分析することが重要であるため、定性的な事例研究としておこなう。
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研究実績の概要 |
本科研費の研究プロジェクトは、暗黙性の高い知識が国際的に移転された際に、第三者が介在することで形式と実態の乖離がどのように生じ、知識が普及していくのかについて検討することにある。具体的には、「日本的経営」という知識が、日本企業から第三者機関を介してベトナム企業に移転される際に、正統性の高い知識として受容される他方で当初とは異なるものとして実践されていくという現象に対して、知識移転と制度論の観点から理論的解釈をおこなうことを目的としている。 そのため、初年度にあたる本年度は主にベトナム進出日本企業、及び、VJCC経営塾参加の現地企業、及び経営塾講師及び講師経験者に対するインタビュー調査(16件、23名)をハノイを中心に行った。 VJCC経営塾とは、ベトナム国立外国貿易大学(Foreign Trade University)がJICAとともに設置したVJCC(ベトナム日本人材開発インスティチュート)が、資本主義経済の下で経営の経験が乏しいベトナム企業に対して、経営学や経営手法を享受する教育組織である。 インタビューでは、「知識が移転するなかで、本来の意図や意味内容とは異なった形で受容され、普及していく」という現象を、①形式と実態の乖離、②国際性、③知識の暗黙性、④第三者の存在、という要因に注目しながら、現地の制度に合わせた知識として昇華されるプロセスを探索的に追求することを目的としながらも、初年度ということを考慮に入れ、非構造化インタビューを中心に聞き取りを行った。この非構造化インタビューを経て、より問を明確にしつつ次年度の研究計画を策定していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要でも述べたように、本科研費の研究プロジェクトの初年度に当たる本年度は、非構造化インタビューを中心にベトナム企業に対するインタビュー調査を実施したが、その後の研究メンバーのディスカッションにより、本プロジェクトの研究テーマのひとつとして、知識を国際移転した際の産地効果(country-of-origin effect)がどのように作用するか、特に中長期的な視点から明らかにするという具体的な問いを帰納的に導出した。 産地効果は主に消費者行動やマーケティングの領域で、製品・サービスを対象として研究されてきた。しかし、産地効果が組織レベルでいかに作用するのか、特に何らかの優位性を期待して導入された知識が、長期的にみて組織にいかに作用するか、また知識がどのように解釈・再解釈されて組織に定着していくのか、あるいは知識を吸収した構成員がいかに他の構成員に知識を移転するのか、といった視点からの考察は乏しいため、本研究では10-15年程度の中長期的な範囲での観測を試み、かつ企業組織レベルの現象を捉えるべく、事例研究を行った。この研究は、本プロジェクトの成果の一つとして次年度に学会報告を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前項で述べた産地効果に関する研究について、分析対象事例をVJCC経営塾参加企業に定めた。これは資本主義経済の導入が後進であったベトナムにおいて「日本的経営」を教授する経営塾として15年以上の歴史をもつ組織とそこでの経営学、経営手法を習得した企業をピックアップできるためである。今後、インタビューや各種文書(使用教材、卒業研究など)を含む定性データの分析を詳細に行い、①知識の産地効果が、社会経済的な環境の変化によって主体の解釈を変容させること、②知識には「抽象的なフレームワーク」と「具体的なツール」という2側面があり、いずれを重視するかによって産地効果が異なること、③暗黙性の高い知識が国際移転される際には、経路依存性が強まり、現地化によって定着が図られること、が明らかにしようとしている。具体的には、①「日本的経営」という知識の移転においては、受け手が置かれた社会経済的な状況によって知識へのセンスメイキングが異なること、②「日本的経営」には、理念や美学といった知識と、KPIを主軸とする定量的なマネジメント知識という大別して2種類の知識が包含されており、その軽重が状況によって異なること、③「日本的経営」は、日本人すら全容を把握・理解しているとは限らない知識体系であり、国際移転においては現地の正統性に適合して定着すること、を示そうと試みている。
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