研究課題/領域番号 |
23K25570
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補助金の研究課題番号 |
23H00873 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
小区分80030:ジェンダー関連
合同審査対象区分:小区分80030:ジェンダー関連、小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
川端 亮 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 教授 (00214677)
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研究分担者 |
稲場 圭信 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 教授 (30362750)
齊藤 貴浩 大阪大学, 経営企画オフィス, 教授 (50302972)
松村 暢彦 愛媛大学, 社会共創学部, 教授 (80273598)
宮前 良平 福山市立大学, 都市経営学部, 講師 (20849830)
吉川 徹 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 教授 (90263194)
渥美 公秀 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 教授 (80260644)
石塚 裕子 東北福祉大学, 総合マネジメント学部, 教授 (80750447)
高谷 幸 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (40534433)
鄭 幸子 岡山大学, グローバル人材育成院, 准教授 (20770001)
王 文潔 大阪公立大学, 大学院現代システム科学研究科, 講師 (10913270)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2025年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2024年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2023年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 共生社会 / 分断の超克 / 移民 / 都市と地方 / 災害 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、現代社会の様々な領域で生じている「分断」を克服し、「共生社会の実現」に至る道筋を探求するために、3つの領域で、共創知による社会課題解決の実践的研究を推進し、新たなつながりの創出の効果、人々の考え方の変化を比較分析することで、社会科学の新しい形を示すことを目指す。本研究が扱う分断は、A)人口減少と過疎化による都市と地方の分断、B)災害による被災者とそうでない人々との分断、C)移民やエスニック・マイノリティが多い地域における分断である。実験的研究(共創知を積み重ねて分断を超克するための技法を開発する)の成果を3つの分断の現場に適用し、その分断を乗り越えることを試みる実践的研究を行う。
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研究実績の概要 |
本年は初年度であり、3つの研究フィールドと実験フィールドのそれぞれでグループを組織して研究課題を具体化した。 流動化社会のまちづくりの研究グループは、フィールドとしてGV(大阪大学グローバルビレッジ津雲台)と咲洲において、<分断>の克服のために不可欠なコミュニケーションの活性化を実験的に行った。対象フィールドでWebアプリである「災害救援マップ」を用いたまち歩きを行い、防災訓練を兼ねるとともにその効果を測定する質問紙調査を試行した。 都市と地方の分断の超克の研究グループは、都市部からの地域への人の流入は関係人口の増大の動きとしてとらえる。西予市野村地域をフィールドに、「がいなんよ大学 in のむら」という講演会を中心とするイベントを4回行い、従来の人文学・社会科学的な方法を用いて地域内外の対立をなくし、コミュニケーションを増大させる試みを行った。また、地方にとっては不可避な高校生の地域移動をキャリアの観点から調査するとともに、都市に移動した大学生が出身地域と関わり続けられる仕組みを野村地域で試行した。 災害グループは、だれ一人取り残さないインクルーシブを前提に「助かる」という概念を理論的枠組みとして、特徴のある分断が発生した東北、福島などの被災地を継続して訪問した。また能登半島の被災地を訪問し、災害復興の支援を行った。 移民グループは移民やエスニック・マイノリティの多い大阪府生野地域における多様な担い手による実践に焦点をあてている。大阪生野は日本人も在日韓国人一世も減少しており、ベトナム人をはじめ、中国、ネパール、ミャンマーの人などが増加傾向にある。エスニシティだけでなく、在留資格も多様であり、小さな子供たちも増えている。このような従来とは異なる状況で、人々の地域への愛着や教育のアクターによるコミュニティの関係のつなぎ直しについて、研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
流動化社会のまちづくりの研究グループは、2023年11月19日に「GVフェスタ」を、グローバルビレッジ津雲台街づくり協議会と連携して実施したほか、咲洲にて、2023年5月21日にミズノ株式会社等と協力して、また2024年2月11日に西尾レントオール等と協力して「まちづくりフェスタ」を開催した。 都市と地方の分断の超克の研究グループは、西予市野村町で「がいなんよ大学 in のむら」を2023年7月8日、9月17日、11月12日、2024年3月17日の4回開催したほか、第8回地域教育実践南予ブロック集会に参加し大学生が中心となって「地域内外の若者が共創する防災教育―大学生伴走者が見た西予市と久慈市における高校生の交流から―」というテーマで発表を行った。 災害グループは、2023年8月と10月に福島県富岡町、浪江町、南相馬市に赴き、住民、帰還者、Iターン者、Uターン者などとともに活動したり、聴き取りをおこなった。また2024年1月の能登半島地震の被災地には被災直後から現地入りし、支援を行うとともに現地の状況を慎重に観察を続けている。 移民グループは、生野区をフィールドとし、現地調査を行っている。従来から注目を集めるコリアンを中心に、外国ルーツを持つ人々に対して、ジェンダーという側面からのインタビューを行ったり、教育に焦点を当てて、生野区の多文化共生拠点「いくのパーク」や外国人の特別枠の入試を行っている高校を中心とした学校との関係を調査している。さらに新今里のフィールドワークとインタビューも進めている。新今里はコリアンクラブが集積し、またベトナムなどからの移民が集住している地域で、従来の生野区のイメージよりもさらに多様な担い手による変化が見られる地域である。 このようにグループごとに調査研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
流動化社会のまちづくりの研究グループは、さまざまなイベントの効果を現状より正確に測定する評価方法を考え、実施する。グローバルビレッジ津雲台や咲洲での活動において、イベントへの出席者を把握するシステムを、災害時に必要とされる避難所の入退所管理システムを利用して、作成し、実証実験を行い、これをもとに質問紙調査などを実施する。継続して同じ人からデータを取得し、因果分析の方法を用いて、データの分析を行うことを目指す。 都市と地方の分断の超克の研究グループは、関係人口の増大のために、地域の名産品やお土産品の開発、地域の特産品の宣伝、外部の人からの視察の受け入れ、観光コースの受け入れなどのうちいくつかを実施し、外部からの人を受け入れる試みを行う。また、インターネットやSNSを活用することで、都市に移動した大学生が出身地域と関わり続けられる仕組みを本格的に稼働し、地域と地域にない大学との関係を構築し、深めていく取組を進める。 災害グループは、福島、能登などの被災地を継続して訪問し、分断の実態、およびボランティアの関わりの実態をインタビュー調査によって把握する。高齢者や障害者の地域活動に注目し、多様な人々の活動を長期的な視点で見ていく。 移民グループが主な対象とする大阪生野は日本人も在日韓国人一世も減少しており、ベトナム人をはじめ、中国、ネパール、ミャンマーの人などが増加傾向にある。エスニシティだけでなく、在留資格も多様であり、小さな子供たちも増えている。多様な民族的背景のみならず、さまざまな背景を持つ人々と、日本人などの商店主、町会関係者、保育園、教会関係者などの関係に注目し、これらの人々の実践が地域の〈分断〉をどのように超克しようとしているのかを探る。とくにこのような従来とは異なる状況で、人々の地域への愛着や教育のアクターによるコミュニティの関係のつなぎ直しに着目する。
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