研究課題/領域番号 |
23K25606
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補助金の研究課題番号 |
23H00909 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08030:家政学および生活科学関連
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
松川 真吾 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (30293096)
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研究分担者 |
福岡 美香 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (10240318)
眞弓 皓一 東京大学, 物性研究所, 准教授 (30733513)
Geonzon Lester 東京大学, 物性研究所, 特任研究員 (60869543)
新田 陽子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (70403318)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)
2025年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2023年度: 9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
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キーワード | 魚ゼラチン / 共らせん構造 / 固体高分解能NMR / SAXS/SANS / ミクロ相分離 / 混合ゼラチンゲル / 動的粘弾性測定 / マイクロDSC / 微粒子追跡法 / CD測定 / NMR測定 / 共凝集構造 / テクスチャ-コントロール / 哺乳類/魚混合ゼラチン / NMR |
研究開始時の研究の概要 |
寒冷海域と温暖海域の魚種由来の融点の異なる魚ゼラチンを混合して、なめらかな口どけ感と口腔内でのテクスチャーを制御と新たな食感の創生を目指しながら、その背景にあるゼラチン鎖の共らせん形成と凝集、3次元網目構造形成のメカニズムの解明を行う。そのために、北方のサケ/タラ由来のゼラチンとナイルティラピア由来のゼラチンを混合し、溶液及び固体高分解能NMR測定、SAXS及びSANSなどの測定を行い、冷却によるゲル化時のらせん形成過程における各々のゼラチン鎖の分子運動性変化、及び構造形成過程を追跡する。さらに、くちどけなどの食感への影響を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究では、寒冷海域と温暖海域の魚種由来の融点の異なる魚ゼラチンを混合して、なめらかな口どけ感と口腔内でのテクスチャーを制御と新たな食感の創生を目指しながら、その背景にあるゼラチン鎖の共らせん形成と共凝集体の形成、3次元網目構造形成のメカニズムの解明を行うことを目的としている。 昨年度は、融点の異なるゼラチンを混合した場合の物性や凝集構造について、基礎的な知見を収集しながら物性と構造の評価手法の確立を行った。具体的には、高い豚皮(PS)ゼラチンと融点の低いタラ由来(CS)ゼラチンの混合溶液について動的粘弾性、マイクロDSC、微粒子追跡などの測定を行い、マクロ及びミクロ物性を把握した。さらにその発現メカニズムとゲル構造を解明するために、NMRによるそれぞれのゼラチンの運動性の評価とCD測定によるらせん構造の形成挙動を追跡した。 検討の結果、PS/CS混合ゼラチン溶液は冷却方法によって、出来上がる混合ゼラチンゲルの網目構造は異なり、急速に冷却することにより、共らせん及び共凝集構造が増えることが確認された。しかし、共らせん及び共凝集構造は不安定であり、容易に単独の共らせん・共凝集構造へと変化していくのが見られた。 さらに、PS/CS混合ゼラチンゲルを5℃で保存すると保存期間中に、不安定な共凝集構造がより安定なそれぞれの単独の凝集構造へと変化して、動的粘弾性測定では2段階の融解挙動を示し、マイクロDSC測定では融解ピークが二つに分かれながらシャープになっていくことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
融点の高い豚皮(PS)ゼラチンと融点の低いタラ由来(CS)ゼラチンの混合溶液において、冷却過程ではあまり明確な二段ゲル化挙動が見られないが、低温で保存したのちには明確な二段融解挙動が見られた。マイクロDSCからは、この二段融解がゼラチン鎖間の水素結合の崩壊を伴っており、また、CD測定からはらせん構造が消失していることが示された。さらに、NMR測定によってPSゼラチン鎖とCSゼラチン鎖に基づくピークの温度変化を解析したところ、二段融解の低温の融解では主にCSゼラチン鎖が融解し、高温の融解では主にPSゼラチン鎖が融解していることが分かった。また、これらの結果の詳細な検討により、各ゼラチン鎖の融解はそれぞれ単独で調製したゼラチンゲルの融解温度とは異なっており、お互いの凝集構造の安定性が他方のゼラチン鎖の影響を受けていることが示された。 このように動的粘弾性測定によって見出された2段融解挙動とその保存期間による変化を、マイクロDSC、CD及びNMR測定によって、水素結合の崩壊、らせん構造の消失、それぞれのゼラチン鎖の分子運動性に結び付けてゲル化挙動及びゲル構造の評価方法を新たに確立し、詳細なゲル構造形成メカニズム解明を行ったことは大きな進歩である。 一方で、当初の計画にあったナイルティラピアにD化グリシンを配合した飼料を与え、成長した個体の鱗からDラベル化ゼラチンを抽出する方法は餌の保形性の向上と食いつきの両立が難しく、断念した。次にナイルティラピアの細胞培養によるゼラチンの産出を検討したが、培養した細胞にゼラチンを算出させるための条件が見出されないでいる。このため、Dラベル化ゼラチンを用いたNMR測定とSAXS及びSANS測定などの実施が滞っている。そのため、ラベル無しの試料を用いてNMR及びSAXS測定を行い、混合ゼラチン試料のスペクトル解析及び散乱プロファイルの解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
PS(豚皮)/CS(タラ由来)混合ゼラチンにおいて確立した評価方法を用いて、温暖海域の魚種由来のゼラチンとしてナイルティラピアの鱗から抽出したゼラチン(TSゼラチン)を用い、これをCSと混合したTS/CS混合ゼラチンについて、粘弾性測定を中心としたマクロ物性、マイクロDSC、 CD及びNMR測定による水素結合の崩壊、らせん構造の消失、それぞれのゼラチン鎖の分子運動性を評価する。特に、急速冷却と徐冷による混合ゼラチンゲルの物性と構造の評価、保存期間中の構造変化などを詳細に検討する。また、保存期間中の共凝集構造の安定化のために、酸処理とアルカリ処理のゼラチンを混合した場合の共らせん構造及び共凝集構造の形成挙動とその保存安定性を詳細に検討する。 ナイルティラピアの細胞培養を行い、ゼラチンの産出条件を検討する。続いて最適条件においてD化グリシンを栄養源として加えてDラベル化ゼラチンを産出させて回収し、TSゼラチンと混合ゼラチンゲルについてNMR及びSAXS測定を行い、混合ゼラチンゲル中におけるそれぞれのゼラチン鎖の構造と運動性を評価する。 さらに、TSゼラチンとCSゼラチンの混合割合、冷却方法などがくちどけなどの食感に対してどのような影響を与えるかを検討する。
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