研究課題/領域番号 |
23K25610
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補助金の研究課題番号 |
23H00913 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08030:家政学および生活科学関連
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研究機関 | 大妻女子大学 |
研究代表者 |
下田 敦子 大妻女子大学, 人間生活文化研究所, 准教授 (60322434)
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研究分担者 |
大澤 清二 大妻女子大学, 人間生活文化研究所, 特別研究員 (50114046)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2026年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
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キーワード | 項目反応理論 / 民族服製作技術 / 文化保存 / 無文字社会 / 最適学習過程 |
研究開始時の研究の概要 |
消失の危機に直面する東南アジア諸民族の伝統民族服の製作技術を後世に残すことが研究目的である。80民族をカバーする民族服製作技術要素を抽出、数量化し、技術要素の難易度がより低いものから順次高い技術要素へと系統的に技術学習プログラムを項目反応理論を利用して形成し、これを実際の教育現場で検証する。本研究では80民族をクラスター化し、クラスターごとに一般化できる民族服製作技術伝承プログラムを提案する。
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研究実績の概要 |
今年度の研究ではミャンマーにおける民族大学(UDNR)、タイにおけるSHERNAチェンマイ事務所をカウンターパートとして大陸部東南アジアに生活する多様な諸民族の男女の民族服(正装)及びその製作技術と関連する民族の衣生活に関する知見を得る為に以下の研究を継続した。この課題の初年度に当たり、現在まで蓄積してきたデータを基礎に以下の活動を行った。①既に収集した72民族の民族服製作データを解析対象としてWard's法によるクラスター分析を行ったところ72民族の衣服製作技術は民族別に男子民族服は4つに、女子民族服は3つに分類され、この中から男子ではリス、ジンポー、タイルー、スゴーカレンを、女子はタイルー、ジンポー、シャン、ビルマを代表として民族服製作過程の製作技術要素の抽出を検討した。②ミャンマーの政治状況が不安定な為に現地山岳地域の調査活動を自粛しヤンゴンにおいて研究者らと現地協力者が詳細な打合せを行い、現地とは頻回にオンラインで情報の補充と交換を行った。なお、現地ヤンゴン市内の国立ヤンゴン図書館においては、日本研究チームの協力に対して専用の図書室を設定した。③隣国のタイにおいては、20世紀まで狩猟採集生活を送っていたムラブリと、メコン川を越えてラオスからタイ側に近年移動してきたブルー族の調査を進めた。後者に関しては全くこれ迄にデータが存在しなかったが、タイ、ウボンラチャタニー県コンチアム郡のメコン河畔の現在の居住地でタロン、ウエンブックの2学校がブルー族の、ナーン県ではボッグルア、ファイルーの2学校がムラブリ族の基礎的な形態計測や衣服製作に関する調査協力を行ってくれ、また今後の協力を約してくれたことは活動の成果であった。④今後カムー、ラワ、ティン、ムラブリやスアイなどのタイ、ラオス地域に分布する諸民族の民族服と製作技術過程の調査可能性を探る為にも今年度の現地調査は成功であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題を遂行するにあたり研究手順は以下の各段階を設定している。第1段階:72の民族服特性を数値分類して、各クラスターから2民族ずつを抽出する。このなかで技術要素を現在まで残存している民族のうち聞き取り調査が実施し易い民族から可能な限り男女共通の民族を抽出する。また、このために『調査員調査手引き、ミャンマー語、日本語』を準備する。第2段階:対象民族の民族服製作高度技能保有者を調査し、彼女たちを対象に現在も使用されている技術要素について精査して、各民族の技術要素を詳細に記述する。次いでこの技術要素について「できる」「できない」を評価する調査票を作成する。第3段階:前記の調査票によって、技術要素習得レベルの調査を実施する。第4段階:得られたデータの整理、データ入力を現地で行う。これを日本で項目反応理論(IRT)で解析して検討、協議して、職業教育において、実施可能な各民族の衣服製作技術習得のためのプログラム原案を構成する。第5段階~第6段階ではIRTの結果から民族毎に最適化プログラムを完成して職業教育で実習を行い、その成果を検討する。 これらの諸段階うち、初年度は第1段階を経て第2段階の衣服製作技術要素について「できる」「できない」を評価する調査票を完成させるところまでを確認した。さらに収集が完了していない民族服の収集を継続することが課題であるが、ミャンマー商工会議所の協力でワ族をはじめとする3民族のコレクションが実現した。しかしミャンマーの政情が不安定であって自由に山岳地区や国境周辺での活動ができないので、遠隔地におけるデータ収取方法を民族大学関係者と協議中である。さらにその製作技術過程が未知のままになっている民族については今後も可能な範囲で現地調査を行う予定である。一方、タイにおいてはカムー、ラワ、ティン、ムラブリ、ブルー族の民族服と製作技術過程の調査を現在行っている。
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今後の研究の推進方策 |
令和7年度以降は本研究計画の第2段階で進行中である調査対象民族について、民族服の製作高度技能保有者を確認する。次いで、各民族5~10人程度を確保して、彼女たちが保有している衣服製作技術要素について面接調査を行い、民族ごとの製作技術習得段階を評価する調査票を確定する。続いて、当該衣服製作技術を学習する学生や生徒に「できる」「できない」を評価する「技術要素保有状況に関する調査票」を用いた技術要素習得レベルの調査を実施する。タイにおけるムラブリほかの民族に関しても同様にプリミティブながら狩猟採集時代の衣服を収集して、その製作技術を記述し、これまで明らかにしてきた技術要素に関する手順と同じ方法で、狩猟採集民の衣服製作技術に関する「技術要素保有状況に関する調査票」を実施する。最終年度にむけては、得られた各民族の民族服技術学習者の調査データをIRT解析を通じて、最終的にはこれをより合理的科学的に学習できる職業教育プログラムとして完成させる。
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