研究課題/領域番号 |
23K25631
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補助金の研究課題番号 |
23H00934 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
岩下 誠 青山学院大学, 教育人間科学部, 教授 (10598105)
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研究分担者 |
高橋 哲 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 准教授 (10511884)
前田 更子 明治大学, 政治経済学部, 専任教授 (30453963)
樋浦 郷子 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (30631882)
青木 利夫 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 教授 (40304365)
青木 栄一 東北大学, 教育学研究科, 教授 (50370078)
中野 修治 静岡県立大学, 国際関係学研究科, センター客員研究員 (70765213)
伊達 聖伸 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (90550004)
渡邊 昭子 大阪教育大学, 教育学部, 研究員 (20293144)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2025年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
2023年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
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キーワード | 世俗化 / 公教育 / 宗教 / 近代 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、近現代世界における宗教の存続や適応、再興に注目する近年の宗教社会史の視角を応用・導入することによって、公教育史を新たに書き換えようとするものである。これらの課題に社会史的にアプローチするところに本研究の独自性がある。ローカルで具体的な場面に照準することで、「国家vs. 教会」「近代vs. 伝統」といった従来のマクロな対立構造に還元されない、ひとびとの生活世界における複合的で重層的な権力関係とその再編のあり様を描くことを目指す。さらに実証的な歴史研究の知見を、教育学の理論的観点から検証し、その現代的な意義を捉え直すことにも、本研究の創造性を期待することができる。
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研究実績の概要 |
2023年度には、3回の研究会を開催した。第1回研究会は5月に白尾安紗美による報告(「戦前・戦後におけるアルザス地方の宗教教育-ライシテとの共存の歩み」)、第2回研究会は7月に岩下誠による報告(「公教育三原則の「イギリス」モデル?―オーストラリア・ビクトリア州教育史の研究動向」)、第3回研究会は11月、2023年度の総括として、研究メンバー全員の進捗状況を報告するかたちで開催した。また研究成果の中間報告として、9月23日に開催された教育史学会第67回大会において、コロキウム1「公教育の世俗化と宗派的多元性」で、共同研究の成果を報告した(岩下誠司会、渡邊昭子、中村好甫、白尾安紗美報告、前田更子コメント)。教育史学会における共同発表が、2023年度の主要な成果と言える。 実証研究を担当するメンバーは、長期休暇等を利用して、各自が国内外での史料調査を実施した。中野修治はノルトライン・ヴェストファーレン州のデュースブルク市文書館にて、カトリック労働者協会の活動に関連する未刊行文書を調査した。白尾はフランス国立図書館、ナンテール大学図書館、メッス市立史料館、メッス図書館コルマール市立史料館で宗教教育史料を中心に史料収集を行った。前田はパリの国立図書館とパリ郊外(ピエールフィット)の国立文書館,リヨンのローヌ県文書館で史料調査を行った。渡邊はブダペシュトにて、国立セーチェーニ図書館とアカデミー図書館にて文献調査を行い、カトリック司教協議会関連史料を中心に史料を蒐集した。青木(利)は、メキシコ国立図書館にて、教育の世俗化に関する史料や先行研究を調査した。岩下はトリニダード・トバゴ国立公文書館および国立図書館で、イギリス本国より派遣されたアイルランド人官僚による教育改革史料を中心にトリニダード公教育改革に関する史料調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実証研究を担う研究分担者および研究協力者は、それぞれ予定していた各地域に史料調査・蒐集活動を首尾よく実施し、また蒐集した史料の読解を進めることができた。2024年度に追加の史料調査が必要なケースがいくつか残っているが、予算とスケジュール双方の面で、2023年度の進捗状況で問題ないことが確認された。 年3回の研究会を予定通り開催することができ、研究成果の共有を行うことができた。また教育史学会コロキウムでの共同研究発表は、公教育制度の世俗化に関して、従来のフランスをモデルとした政教分離ではなく、もうひとつのルートとして「宗派的多元性」という概念を前面に打ち出したものであったが、領域や世代をまたいで多くの参加者と好意的な評価を得ることができた。 11月に開催した全体研究会では、実証研究を担当する研究分担者および研究協力者の進捗状況に関して、2024年10月までに一次草稿を執筆できるくらいにまで研究を進めることができていることを確認することができた。2023年3月には、研究成果を刊行する予定の出版社の編集者とも打ち合わせを行い、予定通りのスケジュールで出版計画が進行していることを確認した。 以上より、2023年度の事業はおおむね順調に進展していると考えることができる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、2023年度の実証研究の成果を理論的観点や先行研究の議論から評価し位置づけなおすことを目的とした研究会を2回ほど開催する。第1回の研究会は6月(青山学院大学)、第2回の研究会は11月を予定している。 また2024年度は、研究成果を刊行するための編集作業に本格的に着手する。具体的には、実証研究を担当する研究分担者および研究協力者は、2024年10月末日までに第一次草稿を完成させて提出する。出版社の編集者、研究統括者の岩下・前田、および理論グループの高橋・青木(栄)がそれらの草稿をすべて読み、岩下と前田は教育史および社会史の立場から共著で序論を、高橋と青木(栄)はそれぞれ教育法学および教育行政学の立場から刊行物の結部となる理論的な草稿を執筆し、年度内に第一次草稿を完成させる。 また2025年度以降の事業として、海外研究者の招聘と研究会・講演会の開催に向けて、2024年度はその下準備を行う。
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