研究課題/領域番号 |
23K25637
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補助金の研究課題番号 |
23H00940 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09020:教育社会学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
荒牧 草平 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 教授 (90321562)
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研究分担者 |
石田 光規 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (60453495)
數土 直紀 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (60262680)
轟 亮 金沢大学, 人文学系, 教授 (20281769)
数実 浩佑 宝塚大学, 東京メディア芸術学部, 講師 (60908622)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2026年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2025年度: 12,350千円 (直接経費: 9,500千円、間接経費: 2,850千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 向社会的行動 / 公共的価値志向 / パーソナルネットワーク |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、学齢期の子どもを持つ保護者の個人主義的および公共的価値志向が形成される背景をパーソナルネットワークの影響も考慮しながら解明することを目的とする。この目的を遂行するため、本研究前年の2023年度には、主要概念の整理を行うとともに、調査項目の選定を目的に第1段階の予備調査を実施した。2024年度は、その分析結果に基づき、各項目の有効な測定方法を検討するために、第2段階の予備調査の実施と分析を行う。2025年度は、これらの分析結果に基づいて本調査を実施するとともに、詳細な聞き取り調査を実施する。2026年度は、本調査データと追加的な聞き取り調査の分析をふまえて最終的な成果の報告を行う。
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研究実績の概要 |
今年度の研究実施計画に則り、公共性や共生性、向社会的行動に関する理論的・実証的な社会学的研究のレビューを行い、「共同性の規範的探究」「共生概念の理論的検討」「利他主義の計量社会学」「協力の社会学的基礎」という観点から論文にまとめた。その結果、公共性や共同性の探究には共生概念に着目することが有益であること、多義的に用いられる共生概念については、同質的な集団における「共棲(symbiosis)」と異質な他者との「共生(conviviality)」を区分することが有効であること、共生的な社会を考察するには、人々が多様な他者を尊重し、未来の世代を含めたすべての人が幸せに暮らせることを願うという意味で、利他主義や社会貢献的な意識を形成する側面に着目することが鍵になることなどが明らかとなった。また、個人の利他主義的性質の形成には、子ども時代に近所の大人が人助けをする姿を見て育つ等の社会化環境(ある種のネットワーク)が重要である一方で、向社会的行動が社会的に生成・維持されていくためには、個人の性質だけではなく、規範・評判・ネットワークといった社会的メカニズムも重要な役割を果たしていることが明らかとなった。 以上に加えて、教育態度の多様性やその世代間継承、孤立とネットワークとの関連、社会状況と信頼の形成に関する研究、およびオンライン調査の方法に関する研究を進め、口頭発表および論文の作成を行った。 これらの知見および先行調査で使用された具体的な質問項目などを参考にして、向社会的行動・異質な他者への寛容性・信頼(一般的信頼・特定化信頼・民主的信頼・権威主義的信頼・信頼のレベルと範囲)・社会化の背景・ネットワークの規模や構成などを測定するための準備を進めた。 以上をふまえて、各概念を測定するための質問項目を作成し、調査会社の登録モニターを対象にして、第1段階の予備的調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の研究実施計画では、向社会的行動や共生概念に関する、理論的・実証的研究のレビューを進めて論文にまとめること、および、それらの知見に基づいて、各概念の測定準備を進めることを今年度の課題としていた。 この計画に基づいて研究を進め、1)共生概念自体を理論的に整理し、2)共生的な社会の実現について考察していくためには、一方では、他者への信頼や尊重、利他主義的傾向や社会貢献的な意識といった個人の性質に着目し、それらの形成背景、具体的には向社会的傾向を持つ人びととの交流(ネットワーク)という社会的環境との関連を解明することが重要であること、3)他方では、向社会的行動が社会的に生成・維持されるためには、規範・評判・ネットワークといった社会的メカニズムの作用について解明することも重要であること、などの知見が得られた。また、これらの知見に基づいて、向社会的行動・異質な他者への寛容性・各種の信頼指標・社会化の背景・ネットワークの規模や構成などを測定するための準備を進めることもできた。以上については、当初の計画通りの研究成果が得られたと言える。 さらに、上記の研究が想定以上に進展したことから、次年度に予定していた予備調査を2段階に分け、今年度は、上述したような諸概念について、第1段階の予備的調査を実施することとした。これらの項目には、先行調査では十分に研究されていない側面も含まれるが、予備的調査を2段階に分けたことにより、それらの項目についても、調査に積極的に組み込むことができた。それにより、今年度は、各質問項目の妥当性や有効性に基づいて、本調査に組み込むべき項目を取捨選択し、次年度は、選択された項目の精度をより高めるという形で、より有効な本調査を実施するための準備を進めることができるという利点がある。 以上のことから、当初の計画以上に研究を進展させることが出来たと言える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に実施した第1段階の予備的調査データの分析に基づき、2024年度は、本調査に組み込むべき調査項目の取捨選択を行うとともに、第1段階予備調査データの分析結果に基づき、選定された調査項目の有効な測定方法を検討するために、第2段階の予備調査の実施と分析を行う。 2025年度は、これらの分析結果に基づいて本調査を実施するとともに、質問票ではとらえきれない細部について、詳細な聞き取り調査を実施する。2026年度は、本調査データと追加的な聞き取り調査の分析をふまえて最終的な成果の報告を行う。 向社会性や共生性という概念を社会調査によってどのように把握することが有効かを検討するにあたっては、社会意識論を専門とし、特に公共性や社会貢献的な意識について研究を進めている数土を中心にこの検討を行う。なお、数実も教育学の立場から、教育の公共性や政治意識について研究を行っていることから、数土とともに、この検討に中心的に関わる。 上記のような価値志向をパーソナルネットワークとの関連から検討するためには、人々の社会意識の形成に対するネットワークの機能に関する議論を整理し、それらの有効な測定方法について検討する必要がある。そこで、ネットワーク論を専門とする石田を中心に荒牧とともにこの検討に取り組む。また、石田は量的調査と質的調査を組み合わせた研究の経験も豊富であることから、聞き取り調査にも主導的に関わる。 本研究では、予備調査と本調査の一部でインターネット調査を導入する計画である。インターネット調査の有効な実施方法については、その方面において精力的に研究を行っている轟を中心に検討を行う。 以上の通り、各メンバーがそれぞれの得意分野を生かし、協力して研究を進めることによって、向社会的行動とネットワークとの関連を明らかにし、共生的な社会を実現するために必要な条件の一端を明らかにする。
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