研究課題/領域番号 |
23K25652
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補助金の研究課題番号 |
23H00955 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09030:子ども学および保育学関連
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
佐藤 大樹 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (90416933)
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研究分担者 |
吉元 俊輔 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (00646755)
板倉 昭二 立命館大学, OIC総合研究機構, 教授 (50211735)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 14,560千円 (直接経費: 11,200千円、間接経費: 3,360千円)
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キーワード | 巧緻性 / 手指運動 / 前頭前野 / 乳幼児 / アフォーダンス / 運動野 / fNIRS / 知育玩具 |
研究開始時の研究の概要 |
精緻な手指運動と脳の発達は関連しており,手指運動を促す知育玩具に対する関心も高い.しかし,効果的に手指運動を促すデザインは科学的には明らかにされていなかった.そのため本研究では,乳幼児の精緻な手指運動を誘発する物体形状を定量化するとともに,その知見を社会実装に繋げる基盤を作ることを目的とする.この目的を達成するため,精緻な手指運動を誘発する物体形状・サイズを定量化すること,精緻な手指運動に伴う前頭前野の活動を示すこと,手指運動を自動計測する触覚センサシステムを開発すること,に取り組む.これらの成果は,知育玩具のデザインだけでなく,発達障害の早期発見やリハビリテーション等にも応用が期待できる.
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研究実績の概要 |
乳幼児の精緻な手指運動を誘発するデザインを明らかにするとともに,その知見を社会実装に繋げることを目的に研究を進め,以下の成果を得た. 1.半球型をベースに3方向から凹みを加えて作成した異なる形状のオブジェクトを対象とした乳幼児(生後6~12ヵ月児)23名の行動データ解析を継続し,凹みが大きいほど「つまむ」動作の割合が増えることを確認した.この結果は,オブジェクトの物理的パラメーターにより乳幼児の手指運動が変化し得るというコンセプトを検証するものであり,今後,このようなデータを蓄積することで玩具や道具のデザイン基礎を構築できることを示唆する. 2.精緻な手指運動を行っているときの前頭前野の活動を明らかにするため,成人および乳幼児を対象としたfNIRS計測を実施した.成人20名を対象とした実験では,巧緻性スコアと前頭葉の活動信号の間に正の相関傾向があることを見出した.この結果により,精緻な手指運動と前頭葉活動が関係することが確認できた.また,予備検討として4~5歳児17名を対象としたfNIRS計測を実施し,幼児を対象とした精緻な手指運動に伴う脳活動計測が実施可能であることを確認した. 3.導電性トモグラフィ型触覚センサを用いて,直径25 mm と直径50 mm の円柱型センサを開発した.第一段階の評価として,成人男性5名を対象とした把持実験を実施し,把持に用いた指の本数の識別を試みた.その結果,全実験参加者でチャンスレベルを超える識別率が得られ,本デバイスの有効性を確認することができた.この結果は,将来的に,自動かつ定量的な手指運動解析の実現可能性を示しており,精緻な手指運動を促す知育玩具の開発などにも応用できることが示唆される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に掲げた3つの目標に対し,概ね予定通りの進捗が得られている.具体的な進捗を以下に示す. 1.半球型をベースに3方向から凹みを加えて作成した異なる形状のオブジェクトを対象とした乳幼児(生後6~12ヵ月児)行動データの解析を継続し,凹みが大きいほど「つまむ」動作の割合が増えることを確認し,現在,この結果に関する論文を執筆中である. 2.精緻な手指運動を行っているときの脳活動を明らかにするため,成人および乳幼児を対象としたfNIRS計測を実施した.はじめに,成人20名を対象としたペグテスト実験により,精緻な手指運動に伴い,主に対側の感覚運動野が活動することが示された.また,ペグテストで得られた巧緻性スコアと前頭葉活動には正の相関傾向があることを見出した.次に,コントロール課題としてテニスボールを操作する非精緻条件を設定した幼児用プロトコルを作成し,4~5歳児17名を対象としたfNIRS計測を実施した.その結果,ペグテスト(精緻)条件とテニスボール(非精緻)条件の両方で前頭葉の活動が見られ,有意差は認められなかった.これは,行動量の違いが原因であると推測されたため,今後,計測パラダイムを改善し再試行する予定である. 3.導電性トモグラフィ型触覚センサを用いた手指運動定量評価技術の開発を試みた.装置開発では直径25 mm と直径50 mm の円柱型センサを作製した.計測に用いた回路は15個の電極と2台のマルチプレクサ,1台のマイクロコンピュータから構成される.評価の第一段階として,成人5名を対象とし,使用指本数を指定する指示把持試行および自由な指本数で把持を行う自由把持試行を行った.それぞれの試行を学習データと検証データとして用い,把持指本数の識別を試みた結果,両サイズの円柱型センサにおいてチャンスレベルを超える識別率が得られることを確認した.
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今後の研究の推進方策 |
今後も,提案した研究計画に従い,乳幼児の精緻な手指運動を誘発するデザインの定量化,精緻な手指運動に伴う脳活動の可視化,精緻な手指運動の自動測定システムの開発に取り組む予定である. 精緻な手指運動を誘発するデザインに関して,これまでに計測した行動データの結果をまとめ,論文化を通し,本研究のコンセプトを発信する.また精緻な手指運動を誘発するデザインを開発中の触覚センサと組合せ,手指運動(つまみ方)に応じて音や光を出すようなフィードバック機能の実装を試みる. 触覚センサについては,デバイスおよび機械学習の改善を進め,より高精度の識別率を達成するとともに,幼児を対象とした有効性の確認を進める予定である. 脳機能計測に関しては,幼児の脳活動計測を継続する.これまでの結果では,手指運動に精緻性に由来する脳活動の抽出ができていないため,パラダイムを改善して再試験する予定である. なお,昨年度まで乳幼児計測のフィールドとしていた同志社大学赤ちゃん学研究センターの利用が不可となった.そのため,新たな計測フィールドを探し,計測環境をセットアップする必要がある.この点に関しては,現在,実績のある他大学と相談しながら準備を進めている.
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