研究課題/領域番号 |
23K25726
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補助金の研究課題番号 |
23H01029 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10010:社会心理学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
結城 雅樹 北海道大学, 文学研究院, 教授 (50301859)
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研究分担者 |
鈴木 智子 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (20621759)
佐藤 剛介 久留米大学, 文学部, 准教授 (30632153)
高岸 治人 玉川大学, 脳科学研究所, 教授 (90709370)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2027年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2026年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2025年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | 自己奉仕性 / 向社会性 / 評判 / 関係流動性 / 文化 |
研究開始時の研究の概要 |
従来の文化心理学研究では、北米社会の人々は、他の地域の人々よりも、自分の優越性を積極的に追い求めたり宣伝したりする自己奉仕性が高い一方、不幸な状況に置かれた他者に対して強い共感性を感じ、積極的に援助したりする向社会性も高いことが見出されてきた。本研究は、この興味深いパラドクスの背後に、北米社会における対人関係選択の自由度の高さと、良い評判を打ち立てることの重要性があるとの仮説を実証的に検証する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、北米人が東アジア人と比べ、より高い自己奉仕性と向社会性という一見パラドキシカルな特性を持つことの原因を、社会生態心理学の観点から解明することである。本年度は、以下の研究を実施し、いずれも重要な成果を得た。 <研究1>自己奉仕的特性の一つである自己主張度の日米差の原因となる要因を検討した。日米比較調査の結果、予測通り、アメリカ人は日本人より強い関係流動性を認識しており、それがより強いポジティブ評判期待、さらに自己主張の強さと関連していた。一方、ネガティブ評判期待は、自己主張の強さと関連していなかった。<研究2>向社会的特性の一つである援助行動の日米差の原因となる要因を検討した。日米比較調査の結果、予測通り、アメリカ人は日本人より強い関係流動性を認識しており、それがより強いポジティブ評判期待、また援助行動の強さと関連していた。一方、ネガティブ評判期待は、援助行動の強さと関連していなかった。<研究3>北米人が東アジア人よりも見知らぬ他者に対して積極的に接近する原因を検討した。日米比較調査の結果、アメリカ社会の関係流動性の高さに加え、アメリカ人の一般的信頼の強さと自尊心の高さが、いずれも見知らぬ他者への接近の強さと関連していることが示された。<研究4>東アジア人が北米人と比べ、他者からの拒絶を強く回避しようとする原因を探った。日米比較調査の結果、予測通り、拒否回避傾向はアメリカ人よりも日本人の方が強く、その背景には関係流動性の低さと、他者からのネガティブな評判への懸念が存在することがわかった。 <研究5>共感性の文化差を脳科学的手法により検討する研究のための予備研究を実施した。<研究6>高関係流動性社会でポジティブ評判期待が高いことの原因を検討するための日記法研究の準備を進めた。<研究7>人々の関係流動性の認知を実験的に捜査するための新たな手法の開発を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日記法研究や脳科学研究など当初の想定以上に準備に時間がかかっている研究が一部にあるものの、評判システムの役割に関する検討は順調に進んだ。研究代表者らによる過去の研究では、主に関係流動性と心理・行動傾向の関連が検討されてきたが、さらにその媒介変数となる評判システムの役割に関する証拠が明らかになってきたのは大きな前進であるといえよう。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果をさらに深化させ、以下を始めとした諸課題の検討を行う。 ①関係流動性と評判期待が向社会行動や消費行動等の心理・行動特性に与える影響を引き続き検討する。 ②日米両社会に存在する評判システムの違いを直接的に検討するため、日記法により、人々の称賛・批判経験をつぶさに測定し、比較する。 ③共感性の文化差の脳科学レベルでの測定を行い、および社会的要因との関連を検討する。 ④関係流動性の実験操作法を引き続き開発する。
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