• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 前のページに戻る

科学と魔術が共存する認識の発達的検討

研究課題

研究課題/領域番号 23K25734
補助金の研究課題番号 23H01037 (2023)
研究種目

基盤研究(B)

配分区分基金 (2024)
補助金 (2023)
応募区分一般
審査区分 小区分10020:教育心理学関連
研究機関早稲田大学

研究代表者

外山 紀子  早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (80328038)

研究分担者 中島 伸子  新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (40293188)
富田 昌平  三重大学, 教育学部, 教授 (80342319)
高橋 京子  フェリス女学院大学, 文学部, 教授 (90454123)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2027-03-31
研究課題ステータス 交付 (2024年度)
配分額 *注記
14,170千円 (直接経費: 10,900千円、間接経費: 3,270千円)
2026年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2025年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
キーワード認知発達 / 概念発達 / 魔術的信念 / 共存モデル / 魔術 / 科学 / 病気 / 舞踊 / 祭祀 / 保育実践 / 想像世界
研究開始時の研究の概要

発達と共に非論理的・非科学的思考から論理的・科学的思考への置き換えが生じるという置き換えモデルではなく,生涯を通じて科学的思考と魔術的信念(magical beliefs)が共存し続けるという共存モデルにたって,病気理解・痛みへの対処・現実世界と魔術的世界の区別に関する理解の発達を検討する。魔術的信念は言語反応では認められにくいという特性をふまえ,課題に取り組む際の身体動作を分析し,その結果を日本古来の祭祀における舞や踊りの身体動作と比較検討する。また,超自然的存在や異世界を信じる心がどのように発達していくのか,子どもの社会化においてそれらがどのような役割を果たすかを保育場面について検討する。

研究実績の概要

(1)病気に関する科学と魔術の共存:COVID-19の感染拡大による保育園の食事・保育者の子ども観への影響を調べるための質問紙調査,病因に関する科学的説明と魔術的説明の違いを明らかにするための実験を行った(外山担当)。病者と医療,民間医療,様々な社会環境とのかかわりが病い,身体の捉え方に対してどのように関与するかの検討を目的として2つの研究を実施した。第1に青年期までに筋痛性脳脊髄炎を発症した人の病いの受容プロセス,第2に民間療法との付き合いによる慢性痛患者の身体認識の変容,についての研究である(中島担当)。
(2)祭祀における身体動作:広く疫病退散や福を招く目的で踊られる舞踊を取り上げ,魔術的信念が身体動作にどのように表現されているのかを探る目的で2つの研究を行った。第1に研究対象の検討,選定のため,①茨城県稲敷市の「あんば囃子」,②京都府城陽市の「おかげ踊り」に関して有識者らへのインタビュー,博物館等での資料収集を実施した。第2に動作分析ソフトを用いて,③京都今宮神社の「やすらい祭」の舞踊動作を分析した(高橋担当)。
(3)魔術的世界の発達的役割:保育の場では,おばけや鬼などの想像的脅威に幼児をあえて出会わせ,自分自身の課題や弱さと向き合い,恐怖を乗り越える体験をすることで成長に向けての大きな機会にしようとすることがよくある。しかし,恐怖に対抗するための十分な認識や力も持たない段階では,そうした体験はかえってネガティブな影響を及ぼす危険性もあることから,保育者たちはしばしば魔術的な言葉や動作などを効果的に用いて,子どもが安心してそれらと向き合えるように工夫・配慮している。2023年度は2つの研究を実施した。第1に保育の場における恐怖を疑似体験して楽しむ遊びの実践記録を収集した。第2に魔術的な言葉や動作に対して幼児がどのくらい信頼を示すかについて実験的に検討した(富田担当)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

(1)病気に関する科学と魔術の共存:COVID-19の感染拡大は保育園の食事状況だけでなく,保育者の子ども観にも影響を及ぼしたことが示された(「小児保健研究」に採択済み)。生物医学的説明(科学的説明)は,特定個人の病気の原因を問う質問(なぜの問い)より病気の一般的な原因を問う質問(どのようにの問い)についてよい説明を与えるが,魔術的説明(内在的正義)は逆に,なぜの問いについてよい説明を与えると考えられていることが示された。現在,論文化を行っている(外山担当)。「青年期までに筋痛性脳脊髄炎を発症した人の病いの受容プロセス」の研究については,すでに収集済みであったインタビューデータをM-GTAにより分析し,現在,論文化の最中である。「民間療法との付き合いによる慢性痛患者の身体認識の変容」の研究については,分析可能なインタビューデータベースを特定,入手し,分析対象となるデータを選定した段階である(中島担当)。
(2)祭祀における身体動作:①「あんば囃子」については、有識者、伝承者らへのインタビューを通じて、かつて悪魔祓い囃子、弥勒踊り、世直し囃子などと言われ、伝承の過程で身体所作も変容されてきたことがわかった。②江戸時代の伊勢参宮を背景とした「おかげ踊り」については、資料収集を通じて、「伊勢へお参りをすれば縁起が良い」という信念の存在と当時の人々の伊勢への憧れ、それをうまく利用した御師の存在など江戸の庶民文化について知見を得ることができた(高橋担当)。
(3)魔術的世界の発達的役割:恐怖を疑似体験して楽しむ遊びの実践に関しては,三重県内の保育者のグループから実践記録を得ることができ,実践の内容・展開や工夫・配慮について整理しているところである。魔術的な言葉や動作への信頼についての実験的検討に関しては,データの分析を終え,学会発表と論文化の準備を行っているところである(富田担当)。

今後の研究の推進方策

(1)病気に関する科学と魔術の共存:内在的正義を含む魔術的罰(supernatural punishment)について,与えられる罰の内容領域(物理・生物・心理)による違いを実験的に検討する予定である。幼児期には領域差があまり認められない,病気に関する理解がすすむにつれ領域差が明確になってくるのではないかと予測している(外山担当)。「青年期までに筋痛性脳脊髄炎を発症した人の病いの受容プロセス」の研究については,今年度中に発達心理学系の学会誌に投稿予定である。「民間療法との付き合いによる慢性痛患者の身体認識の変容」の研究については,M-GTAによる分析に着手する予定である(中島担当)。
(2)祭祀における身体動作:研究対象を拡大し,鬼にまつわる祭祀も追加し検討を進めていく。鬼という存在に対し,人々がどのように解釈し捉えているのかを,身体動作の観点から考えていく(高橋担当)。
(3)魔術的世界の発達的役割:恐怖を疑似体験して楽しむ遊びの実践を行うにあたって,何らかの魔術的な言葉や動作を用いたかどうか,また用いたとしたらどのような効果が見られたかについて実践者である保育者にインタビューを行う予定である。また,幼児はどのような対象や事象に対して恐怖を抱きやすいのか,また恐怖に対処するために何らかの魔術的な言葉や動作を用いたことがあるかどうか,ある場合にはその内容について,幼児の保護者を対象とした質問紙調査を行う予定である(富田担当)。

報告書

(1件)
  • 2023 実績報告書
  • 研究成果

    (15件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] 保育園の食事における新型コロナウイルス感染症の影響2024

    • 著者名/発表者名
      外山紀子
    • 雑誌名

      小児保健研究

      巻: 83 ページ: 0000-0000

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 怖い絵本を楽しむことの発達:1-3歳児クラスにおける絵本の読み聞かせ場面の分析を通して2024

    • 著者名/発表者名
      富田昌平・福島菜津子
    • 雑誌名

      三重大学教育学部研究紀要(教育科学)

      巻: 75 ページ: 179-192

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [雑誌論文] 象徴としてのクリスマス,謎としてのサンタクロース2024

    • 著者名/発表者名
      富田昌平
    • 雑誌名

      発達

      巻: 177 ページ: 90-98

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [雑誌論文] Imitation among infants in a day-care center and the development of locomotion2023

    • 著者名/発表者名
      Toyama, N.
    • 雑誌名

      Infant Behavior and Development

      巻: 72 ページ: 101870-101870

    • DOI

      10.1016/j.infbeh.2023.101870

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] 幼児期におけるモノ集めの特徴と発達2023

    • 著者名/発表者名
      富田昌平
    • 雑誌名

      保育文化研究

      巻: 17 ページ: 117-127

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [雑誌論文] 歯の生えかわりと歯の妖精との出会い2023

    • 著者名/発表者名
      富田昌平
    • 雑誌名

      発達

      巻: 175 ページ: 92-100

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [雑誌論文] 歯を失う体験で紡ぎ出されるファンタジー2023

    • 著者名/発表者名
      富田昌平
    • 雑誌名

      発達

      巻: 176 ページ: 86-94

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 新型コロナウイルス感染症の感染拡大による,乳幼児をもつ看護師の精神健康とワーク・ライフ・バランス2024

    • 著者名/発表者名
      大塚志帆梨・韓雪・外山紀子
    • 学会等名
      日本乳幼児医学・心理学会第33回大会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] ワークライフバランスの話をしよう4:ワークとライフはバランスじゃない!コラボや合わせ技のすすめ2024

    • 著者名/発表者名
      江尻桂子・久保南海子・齊藤慈子・仲真紀子・富田昌平・加藤道代
    • 学会等名
      日本発達心理学会第35回大会(自主シンポジウム話題提供)
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 痛みの表現の発達:1-9歳児の母親を対象としたWEB質問紙調査から2024

    • 著者名/発表者名
      中島伸子
    • 学会等名
      日本乳幼児医学・心理学会第33回大会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 幼保小接続における子どもの学びと育ちを支える教師の学びー教科学習も含めた長期的なカリキュラムの開発に向けて2024

    • 著者名/発表者名
      岸野麻衣・中島伸子・五十嵐浩太・笠原知明・堀越紀香・松井剛太
    • 学会等名
      日本発達心理学会第35回大会(ラウンドテーブル企画・話題提供)
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 魔術的信念と身体動作のかかわりに関する一考察:京都今宮神社やすらい祭を事例として2024

    • 著者名/発表者名
      高橋京子
    • 学会等名
      日本スポーツ人類学会第25回記念大会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 保育のなかの科学4:土遊びを通して考える幼児教育からの学びのつながり2023

    • 著者名/発表者名
      滝口圭子・小谷卓也・長崎元気・富田昌平
    • 学会等名
      日本乳幼児教育学会第33回大会自主シンポジウム(指定討論)
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [図書] からだがかたどる発達 人・環境・時間のクロスモダリティ2024

    • 著者名/発表者名
      根ケ山光一・外山紀子(編集)
    • 総ページ数
      464
    • 出版者
      福村出版
    • ISBN
      4571230699
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [図書] 乳幼児は世界をどう理解しているのか2023

    • 著者名/発表者名
      外山紀子・中島伸子(共著)
    • 総ページ数
      286
    • 出版者
      ポプラ社
    • ISBN
      4591179745
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書

URL: 

公開日: 2023-04-18   更新日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi