研究課題/領域番号 |
23K25775
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補助金の研究課題番号 |
23H01078 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
松崎 克彦 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (80222298)
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研究分担者 |
新井 仁之 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (10175953)
小森 洋平 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (70264794)
須川 敏幸 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (30235858)
堀田 一敬 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (10725237)
柳下 剛広 山口大学, 大学院創成科学研究科, 講師 (60781333)
村山 拓也 九州大学, 数理学研究院, 助教 (70963974)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2027年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2026年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2025年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | 複素解析 / 調和解析 |
研究開始時の研究の概要 |
普遍タイヒミュラー空間は,円周の変形のパラメーター空間とみなせる.変形の仕方や出来上がった像に対する制約が,対応する部分空間を定める.また,ある曲線から別の曲線への最も効率のよい変形は,その部分空間に与える計量で表現できる.このような円周の変形をそれが載っている平面全体の変形として表すためには,円周上の写像を無駄なく平面上に拡張する方法が必要になる.そのような拡張の方法は,これまでにも研究されてきたが,この課題ではレブナー方程式から定義される写像に注目する.レブナー方程式は,平面領域が時間発展して動いていくときに,その時間パラメーターと領域への写像の関係を記述する微分方程式である.
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研究実績の概要 |
微分がジグムンド族に属する円の微分同相写像のタイヒミュラー空間に対して,複素バナッハ多様体の構造を与えた.これはシュワルツ微分写像が正則沈め込み写像であることを示すことによって示される.前シュワルツ微分写像に対しても同様の結果を証明し,タイヒミュラー空間上のファイバー空間の構造を考察した.特に,この射影がまた正則沈め込み写像であること,そして円板束の構造を誘導することを示した.最後に、小ジグムンド族を導入し、この写像によって与えられるタイヒミュラー空間の閉部分空間の性質を調べた.
前シュワルツ微分を用いて可積分タイヒミュラー空間 Tp の解析的ベソフ空間への埋め込みについて考察した.シュワルツ微分によるベアス埋め込みとは異なり,p>1 の場合と p=1 の場合には大きな違いがある.本研究では p=1 の場合に焦点を当て,p>1 で得られた以前の結果を一般化した.これにより,1 以上の任意の p に対して,可積分タイヒミュラー空間 Tp の複素解析的な理論の統一が可能になった.
上半平面上の単葉正則関数 f でその前シュワルツ微分の上限ノルムが境界上で消失する条件を満たすものを考える.特定の追加の仮定の下で,ある有限時間までの f から始まる弦状レブナー鎖が存在すること,およびこのレブナー鎖は f の擬等角拡張を定義し,その拡張の複素歪曲度が境界の近傍で前シュワルツ微分を用いて明示的に与えられることを示した.これは、Becker によって単位円板上で証明された対応する結果の上半平面版であり、Ahlfors-Weillの公式の一般化と見なすことができる.この擬等角拡張の応用として,前シュワルツ微分によって誘導される退化カールソン測度条件を用いて定義される上半平面上の VMOタイヒミュラー空間に属する関数の特徴付けが完成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レブナー方程式と単葉関数の理論を普遍タイヒミュラー空間の問題に応用することはできた.しかし,真に中心的な課題である SLE の設定における駆動関数のディリクレエネルギーと普遍リュービル作用の関係を可積分タイヒミュラーのなかで考察する課題については,タイヒミュラー空間の理論の整備の段階に留まっている.
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今後の研究の推進方策 |
普遍タイヒミュラー空間は擬等角写像を用いて構成され,すべてのタイヒミュラー空間を内包し,その複素構造を決定する空間である.これは単位円周から複素平面への擬対称埋め込みの空間とみなされる.近年,その部分空間の研究が進展し,とくに円周の微分同相写像の空間には複素構造やケーラー計量が導入され,数理物理学における超弦理論では紐の相を記述するパラメーター空間となっている.このように曲線の変形を記述する空間として認識される普遍タイヒミュラー空間を用いてヴェイユ・ピーターソン曲線を解析する.パラメータ付きの曲線の座標付けは ベアスの同時一意化の議論を用いてタイヒミュラー空間の直積で与える.この一般論を各種のタイヒミュラー空間で行うことにより,ヴェイユ・ピーターソン曲線や弦弧曲線上で行われていたセゲー射影やコーシー変換の調和解析的な理論を,擬等角写像を用いた複素解析的な手法で拡張する.
普遍タイヒミュラー空間の各種部分空間に対応して定まる平面上の曲線族の座標付けを同時一意化の方法を用いて行う.曲線が実軸の絶対連続な埋め込み写像の場合,その微分から定義される関数空間とタイヒミュラー空間の間の双正則な関係を通して,これらの空間の解析的構造を明らかにし,複素解析的な理論を調和解析や数理物理的な曲線のパラメータ付けに適用可能とする.重要となるのは実軸の擬対称自己同相写像や平面への埋め込み写像を擬等角写像に拡張する方法である.レブナー方程式は時間発展する単葉正則写像族を制御するが,その現代的な理論では方程式の設定で様々な構成が可能となり,単葉正則写像族から定まる擬等角拡張にも多様性が与えられる.この方法を用いることで,各種タイヒミュラー空間の設定に適合した擬等角拡張を得る.
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