研究課題/領域番号 |
23K25788
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補助金の研究課題番号 |
23H01091 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
初貝 安弘 筑波大学, 数理物質系, 教授 (80218495)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
13,260千円 (直接経費: 10,200千円、間接経費: 3,060千円)
2025年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | バルクエッジ対応 / トポロジカルポンプ / エッジ状態 / 電子間相互作用 / トポロジカル相 / バルク・エッジ対応 / 電子相関 / 対称性が保護するトポロジカル相 |
研究開始時の研究の概要 |
トポロジカル相の物理は、バルクのトポロジカル不変量をエッジ状態として境界のある系で観測する「バルクエッジ対応」を重要な概念として 大きく発展した。1980年代に提案されたトポロジカルポンプは近年実験的に実現したが、そのバルクエッジ対応は未開拓であったが、我々の20 16年の研究により格子上の相互作用のない系のトポロジカルポンプにおけるバルクエッジ対応は特徴あるものとして確立した。 一方、相互作用が本質的である強相関系でのトポロジカルポンプ、特にバルクエッジ対応は未開拓である。本研究では強相関系固有の内部自由 度が絡み合い相互作用する系でのバルクエッジ対応をゲージ対称性に着目し普遍的な視点から確立する。
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研究実績の概要 |
トポロジカルポンプ(断熱ポンプ)は,1980年代にThoulessにより概念的に提唱されたトポロジカル現象であり,2010年代に冷却原子系ではじめて実験的に実現され,近年研究が一段と活発化している.また,トポロジカル相の基礎原理であるバルク・エッジ対応が果たす意義,特に実験的観測量に関して通常のトポロジカル相とトポロジカルポンプでは全く異なることを我々が2016年に明らかとしたことを基礎に,本研究では電子相関が本質的な系におけるトポロジカルポンプに対して,その基礎理論を確立し,ゲージ対称性のもとでバルク・エッジ対応の普遍性と探求する研究を実施した.また,トポロジカルポンプにおけるバルク・エッジ対応の普遍性を更に確立し,本研究の成果を多分野まで拡張することと新しいブレークスルーの発見を目標にバルク・エッジ対応をキーワードとして関連分野との異分野交流,情報収集も広く行ってきた. 一般にD次元のトポロジカルポンプは,周期的な断熱パラメター(時間)とする励起ギャップが有限な一連の(D-1)次元のトポロジカル相(集合)と考えることができる.特に1次元系の強相関系の数値研究手法がこの2,30年において成熟してきたことを背景とし,2次元のトポロジカルポンプ現象に関して,具体的な数値計算を併用する研究が極めて有効であることを本研究課題において明らかとした.その一例としてQ種類のフェルミ粒子系が強く相互作用する模型におけるトポロジカルポンプ現象を一般に論じることで,トポロジカルポンプ現象におけるバルク・エッジ対応を正確に記述する一般論を構築し,出版することで広く周知した.さらに数値的研究(数値的対角化と密度行列繰り込み群)を併用することでその正当性を示し,有効性を確立すると共にリング交換模型や最近接を越えて相互作用する系など,新奇トポロジカルポンプ現象を広く探索,研究した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1+1次元の強相関トポロジカルポンプの研究を遂行する過程で,非自明で量子化する電荷移動量に対応するチャーン数の起源にはベリー接続としてのDirac 単磁極が存在すべきであるとの認識にいたった.この観点を追求し明確化することでポンプの経路上で特に対称性が高い複数の点とそれらをつなぐ一連の(連続パラメターを含む)対称性が保護するトポロジカル相の意義が明らかとなった.この一連の系の転移点が上述のDirac単磁極を与えるのである.この視点はトポロジカルポンプの本質的部分であるが,研究当初は,漠然とこの事実は理解していたが,このような明確な理解には至っていなかったため,当初の計画以上に研究の進展があったと自己評価する. また,このディラック単磁極に対応する対称性が保護するトポロジカル相における量子相転移(有限系の局所ひねり下でのギャップクロージング現象)の研究も本研究計画に含めることでトポロジカルポンプ現象におけるバルク・エッジ対応の意義の解明,現象の全容解明をめざす.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,トポロジカルポンプにおいてはゲージ対称性が本質的に重要である点に着目し,研究を進める.特に強相関系においては多数の自由度が強く相互作用するため,何が本質的に重要な自由度であるかが一見しただけではわかりにくいが,このゲージ原理に基づき保存する電荷を定義することで,本質的な自由度を明らかとする.この立場から,トポロジカルポンプ現象におけるバルク・エッジ対応の普遍的意義を確立する. また,今までの研究過程で新しく明確になったポンプ経路が複数回通過する対称性の高い系とそれらをつなぐ一連の対称性が保護するトポロジカル相とその相転移,つまり対称性が保護するトポロジカル相における量子相転移,ギャップクロージング現象も研究の対象とし,研究の一段の展開を目指す.この現象は,バルク・エッジ対応の立場からは,対称性が保護するトポロジカル相における,エッジ状態の生成,消滅の機構を解明することに対応し,トポロジカル相における原理としてのバルク・エッジ対応の新しい視点であり,重要で意義も大きい. 以上の新しく得られた知見を含めた今後の本研究の推進方針は,ゲージ原理を基礎とし,ポンプ経路が通過する点を(ポンプ経路以外のパラメータを用いて)連続につなぐ、より対称性の高い一連の系とその相転移をバルクエッジ対応の観点で総合的に記述,解明することで,ギャップが有限な経路で定まるトポロジカルポンプ現象に関して、バルク・エッジ対応をその原理として、その全容を解明することである.
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