研究課題/領域番号 |
23K25801
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補助金の研究課題番号 |
23H01104 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
谷 峻太郎 東京大学, 物性研究所, 助教 (80711572)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2027年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2026年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2025年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
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キーワード | 不可逆過程 / 深層学習 / レーザー加工 / 超短パルスレーザー加工 / 全自動実験 / 精密計測 / 不可逆現象 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題は、これまで物理モデルの構築が困難であった複雑系を対象として、大量の実験データに基づき、深層学習を用いて系の発展方程式を記述する物理モデルを構築する手法を開発することを目的する。とくに、強いレーザーパルスにより引き起こされる破壊過程を対象とする。この破壊過程はレーザーアブレーションと呼ばれ、半導体基板穴あけ等の微細加工に欠かせない技術となっている一方、未だ物理過程は明らかになっていない。本研究課題では現象の直接測定が困難な系であっても、事後測定を通して現象の時間発展方程式を抽出する手法の開発に取り組む。
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研究実績の概要 |
2023年度はレーザー加工痕の精密測定手法の開発を行なった。具体的には対象物質に対して加工前と加工後の3次元形状を全自動化白色干渉顕微システムを用いて精密に測定し、大量の3次元データからオングストロームスケールの形状変化を捉える技術を開発した。この結果、アブレーション閾値近傍において閾値未満と閾値以上で生じる形状の顕著な違いを見出した。加えて原子間力顕微鏡を用いたメカニカルな形状評価により、銅を対象とする加工においては酸化膜の形成がレーザーアブレーションに影響を与えていることが分かった。さらに紫外光を用いることで酸化膜のみを除去し、intrinsicな表面を準備可能であることを見出した。 また、ダブルパルスにより生じる形状変化の事後精密測定を、さまざまなダブルパルスの時間間隔に対して行った。 さらに超短パルスレーザー後の精密評価のため表面2次高調波のイメージングを行う実験系を構築した。レーザー加工直後に測定を行うため、対物レンズと斜入射を組み合わせた光学系を構築し、精密電動ステージと組み合わせることで、加工と加工直後の加工表面のデータを大規模の収集する実験系を構築した。さらに発生する光強度の定量評価を行うため、本予算で購入した高感度カメラの全ピクセルのフォトンリゾルビング測定を行い、ピクセルごとの感度・バックグラウンドノイズ・欠損ピクセルの定量評価をお婚った。これらの装置を組み合わせることで、加工表面から発生する微弱な光を定量的に測定する光学系の構築が完了した。 深層学習を用いたモデリングについてはTransformer構造を利用した時系列データの相関抽出手法の開発に取り組み、シミュレーションデータを土台とした時系列データについては十分な性能を発揮することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
白色干渉顕微鏡を用いてオングストローム精度の大規模データ測定が可能であることを実験的に確認した。一方、金属表面においては1日単位の時間スケールでオングストロームオーダーの酸化膜が形成されてしまい、加工と測定のタイミングに結果が依存することが分かった。この問題を解決するため、イオンミリングを用いた表面の調整および紫外レーザーパルスを用いることで選択的に酸化膜を除去する手法を開発した。また当初の予定通りダブルパルスに対して精密事後形状評価を行う実験系が構築され、全自動でのデータ収集を実現した。さらに加工結果の精密評価に重要となる加工表面からの微弱光からのイメージングの定量評価を行う技術を開発・キャリブレーションできたことで、深層学習において重要となる大規模かつ高品質なデータを取得する基盤が順調に確立しつつある。一方、光学系の都合上迷光対策が課題として浮かび上がっており、光学系の配置変更も含め信号強度とバックグラウンドノイズのバランスのとれる対策を検討する。 深層学習を用いた物理現象の定量化についてはTransformer構造を利用した時系列データの相関抽出が強力なツールになることが確認された。一方、実際の実験データからの情報抽出には未だ課題が残っており次年度以降は実際の実験データを中心として情報を取り出す技術開発に取り組む。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は時間波形をダブルパルスだけでなく、任意形状の時間波形を生成する光学系を構築する。具体的には4f系と空間光位相変調器を用いて、コンピューターからの出力に応じて多様な時間波形を発生させるとともに、SFG他己相関により時間波形を定量的に評価し、望みの形になるようにフィードバックする技術を開発する。本技術開発を通じて、安定して20 ps程度の時間範囲で繰り返し再現性の高く、元となるスペクトルのフーリエ変換限界で決まる時間分解能を持つ任意時間波形生成手法を確立する。とくに強化学習を活用したフィードバックにより任意の目的波形を安定的に発生させる位相パターンを生成する技術開発に取り組む。本研究を通じて実際の実験データと深層ニューラルネットワークにおいて作られる時系列データの対応付けを行う上で重要となるポイントを確認し、現状シミュレーションデータの再現にとどまっている学習を、実際の実験データに適用できるように研究を進めていく。 さらに任意波形に対する加工測定を行う予定であるが、研究代表者の転職に伴い、実験セットアップを一から組み直すことになるため、研究室の工事の進捗や物品の発注・納品のタイミングを見計らいながら、深層学習技術の探索と合わせて研究を推進していく。
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