研究課題/領域番号 |
23K25805
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補助金の研究課題番号 |
23H01108 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
和達 大樹 兵庫県立大学, 理学研究科, 教授 (00579972)
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研究分担者 |
石井 順久 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光量子科学研究所 量子応用光学研究部, 上席研究員 (40586898)
小野 淳 東北大学, 理学研究科, 助教 (40845848)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
19,110千円 (直接経費: 14,700千円、間接経費: 4,410千円)
2025年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
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キーワード | スピンダイナミクス / レーザー / X線 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、光照射スピンテクスチャ解明のために、実験室光源による軟X線磁気円二色性装置の開発を行うことである。光照射現象のうち、特に超短パルスレーザーの照射による磁化反転は、超高速かつ磁場を使わずに磁化を制御できる2点で画期的である。2種類以上の磁性元素を含むことが必要条件と考えられるため、元素ごとに磁性を観測できる軟X線による研究が必要となる。本研究では、レーザーをガスや固体にあてて発生する高次高調波軟X線を用いる。時間をフェムト秒、空間をサブミクロンで分解するような、新しいパラダイムでの磁気イメージングを行うことにより、レーザー励起磁化反転などの光照射スピンテクスチャの解明を目指す。
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研究実績の概要 |
極端紫外(XUV)波長域の高次高調波発生(HHG)は、高強度のフェムト秒レーザーパルス 光を気体に集光することで得られ、広帯域スペクトル、超短パルス性、高いコヒーレンスにおいて、大規模施設の自由電子レーザーに匹敵する。また、実験室規模の比較的小さな装置で発生可能であることから使いやすいという長所がある。まず、超短パルス赤外線レーザー(PHAROS)を光源として用いた空気、希ガスのアルゴンによるHHGの観測について報告する。HHGのビームラインは、HHGチャンバー、トロイダルチャンバー、グレイティングチャンバーの3つの真空チャンバーで構成される。PHAROS のパラメータは、波長1030 nm、パルス幅200 fs、繰り返し周波数は数kHzである。レーザー光は集光距離125 mmのレンズによって真空チャンバー内のガスセルに集光される。生成されたHHG紫外線は、集光ミラー(4f = 2m、NTT-AT 製)で再び集光され、回折格子(300本/mm、島津30-006)で分光して、最終的にCCDカメラ(Andor DO920P-BEN)で観測される。アルゴンの場合はレーザーのパルスエネルギーを1 mJ、繰り返し周波数1 kHzでHHGを維持し、アルミフィルターを透過する13次以上の紫外線を継続的に観測された。また、波長21.9 nm、56.5 eVに相当する47次程度のHHGも観測された。本研究で開発した機構により、HHGの磁性試料に対する透過測定により、XUV領域における元素選択的スピンダイナミクスを観測する研究を進展させる道が拓けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではこのセットアップを用いて、空気とアルゴン(Ar)でHHGを観測した。また、ArではHHGを維持できたので、繰り返し周波数、パルスエネルギー、ターゲットガスの圧力を変えながらHHGを観察した。便利なことに空気(主に窒素)でも発生させることができた。背圧1気圧の空気の使用は、ガスボトルや接続を必要としないため、非常に便利な実験手法である。次にArでの繰り返し周波数依存性だが、Arで繰り返し周波数を変えながら、パルスエネルギー0.75mJ、ターゲットガスの圧力0.01MPaでHHGを行ったところ、0,1-6kHzでHHGが検出できた。また、高い繰り返し周波数ではHHGは維持できなかったが、1kHzでは一定の強度でHHGを維持できた。高い繰り返し周波数でHHGが維持できないのはガスセルにプラズマがたまってしまうのが原因であると考える。繰り返し周波数6kHzで39次までHHGを検出でき、空気よりも強い強度で検出できた。次にパルスエネルギー依存性だが、パルスエネルギーを変えながら、繰り返し周波数6kHzと1kHzでガス圧力0.01MPaでHHGを行ったところ、0.4から1mJで高調波が検出できることが分かった。また、0.75mJで次数と強度が最大になることが分かった。最後にターゲットガスの圧力依存性だが、ターゲットガスの圧力を変えながら、繰り返し周波数1kHz、パルスエネルギー0.75mJでHHGを行ったところ、圧力を高くすると、より高次の高調波が検出され、強度も強くなることが分かった。ターゲットガスの圧力とチャンバー内の真空度の関係から、圧力を大きくするとチャンバー内の真空度は下がり、ターボポンプにも負担がかかることが分かった。以上の結果から実験室レーザーを用いて空気とArでHHGの観測に成功した。波長21.9nm(56.5 eV)に相当する47次のHHGが観測できた。
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今後の研究の推進方策 |
磁性体のスピンダイナミクスを時間分解して実時間測定するために、繰り返し周波数6 kHzでHHGを維持し、FeやCoのM2,3吸収端をカバーする65 eV 程度のHHGが必要である。より高い繰り返し周波数でHHGを維持させるためにガスセルの変更を考えている。プラズマが溜まるのを防ぐために、穴開きガスセルから噴射型のガスセルへの変更を考えている。より高次数の高調波を検出するためにイオン化エネルギーの高いNeでのHHGを考えている。現在使用している回折格子が15-60 eVをカバーするものなので、60 eV以上をカバーする回折格子に変更しなければならない。より安定して高い真空度でのHHGを行うために差動排気の追加を考えている。
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