研究課題/領域番号 |
23K25820
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補助金の研究課題番号 |
23H01123 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 島根大学 (2024) 京都大学 (2023) |
研究代表者 |
植田 浩明 島根大学, 学術研究院機能強化推進学系, 教授 (10373276)
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研究分担者 |
道岡 千城 京都大学, 理学研究科, 助教 (70378595)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
19,110千円 (直接経費: 14,700千円、間接経費: 4,410千円)
2025年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 11,960千円 (直接経費: 9,200千円、間接経費: 2,760千円)
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キーワード | 幾何学的フラストレーション / フッ化物磁性体 / 量子スピン液体 / 磁場誘起相転移 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者が最近合成に初めて成功した,ほぼ理想的なカゴメ格子をもつ秩序型変型パイロクロアフッ化物および二重秩序型変型パイロクロアフッ化物に着目し,同一の結晶構造型において量子性と交換相互作用のエネルギースケールを系統的に変化させた化合物の純良結晶を用い,基底状態や量子物性への影響を系統的に調べることで、新たな磁場誘起量子相の創成と解明を行う.これらを総合し,量子スピンカゴメ格子反強磁性体のフラストレート磁性,さらにはフラストレート系全般に通用する総合的学理の基盤を構築する.
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研究実績の概要 |
カゴメ格子上の量子スピン系は,量子液体状態の実現が期待されているが,そのモデル物質が少ないという課題を抱えている.そのような状況の中で,変型パイロクロアの陽イオンを秩序化させることによって申請者が開発に成功したカゴメ格子遷移金属フッ化物は,新たなモデル物質として注目されるようになって来ている.また,この系のアルカリ金属イオンをさらに秩序化させることによって,チタン系において二重秩序型の物質群の開発することにも成功し,本研究課題を開始することとなった. 本課題の開始時点で,秩序型のカゴメ格子として,チタン系,バナジウム系,クロム系の物質群および二重秩序型のチタン系の物質群を発見し,それらの結晶構造および基礎物性を明らかにしていた.本課題においてはそれらに加えて二重秩序型のバナジウム系の三つの新物質を発見することに成功した.これらは,磁気異方性の強い反強磁性体であることを明らかにした.さらに,強磁場下においては,二段階の磁化プラトーの兆候を観測した.これらの振る舞いは,秩序型のバナジウム化合物と極めて類似しており,結晶構造や交換相互作用の相違によらず,バナジウムイオンの単一イオン磁気異方性がその主な磁性を決定していることを示唆している.二重秩序型のチタン化合物に関しては,単結晶の育成条件の最適化を行った結果,大型の単結晶が得られた.これを用いて中性子非弾性散乱実験を行い,磁気励起の観測し,解析を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二重秩序型のカゴメ格子磁性体としては,以前発見したチタン系の三つの物質に加えて,本課題において,バナジウム系の三つの新物質が得られた.但し,新物質が得られたアルカリ金属イオンの組み合わせはチタン系とバナジウム系でかなり異なっており,イオン半径以外にも構造の安定性を決定する重要な要因があることを示している. 二重秩序型のチタン系では基礎物性が測定できる程度の単結晶がすでにフラックス法で得られていたが,さらに大型の単結晶の育成条件の探索を行い,約1gの単結晶の育成に成功した.この単結晶を用いて,共同研究者と共に中性子非弾性散乱実験を行い,磁気励起の観測に成功しており,解析を進めている段階である. それに対して二重秩序型のバナジウム系では,フラックス法では単結晶は得られなかった.様々な手法を試みた結果,粒成長法を用いて微小な単結晶の育成には成功し,これらを用いて構造解析および磁化の測定を行い,単一イオン磁気異方性の強い反強磁性体であることが明らかになった.また,多結晶試料を用いて強磁場下の磁化過程の測定を行い,二段階の磁化プラトーの兆候を観測した.
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今後の研究の推進方策 |
チタン系とバナジウム系の二重秩序型の物質については,様々なイオンの組み合わせで合成を試みて,物質探索はほぼ完了したので,今後はそれ以外の三価の遷移金属イオンを含む系についての物質探索も行う予定である. チタン系については,大型単結晶を用いた中性子非弾性散乱実験を引き続き行うと同時に,単結晶のさらなる大型化を試みる.バナジウム系は,微小な結晶しか得られていないので,ミリメートルサイズの単結晶の作成条件を探索し,磁気異方性の詳細な測定を行う予定である.
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