研究課題/領域番号 |
23K25823
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補助金の研究課題番号 |
23H01126 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
美藤 正樹 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (60315108)
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研究分担者 |
中村 和磨 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (60525236)
田尻 恭之 福岡大学, 理学部, 助教 (90441740)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2025年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2024年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
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キーワード | 超伝導 / 高圧合成 / 巨大ひずみ / 高圧力 / せん断ひずみ / 結晶構造制御 / 磁性 |
研究開始時の研究の概要 |
単一元素金属を静水圧縮場に置くことで、電子状態が超伝導状態の安定化に適した方向に変化することがある。本研究は、高圧力下で巨大ねじりを導入することで、単位砲レベルの格子ひずみや高圧結晶構造相を、応力解放後でも準安定的存在させ、そこに静水圧縮場では実現し得ない電子状態の発現を目指す研究である。また、磁気測定と電気抵抗測定に加えて、精密結晶構造と第一原理計算を行うことで、巨大ひずみ下で発現する超伝導の機構を解明する。さらに、高温下で巨大ひずみ導入し、仕事と熱エネルギーの両エネルギー付与による新たな超伝導物質合成法の開拓も目指す。このように、新規物質探索方法の開拓として独創性を有する研究である。
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研究実績の概要 |
アルカリ土類金属の一種であるバリウム(Ba)は常圧でbcc構造(Ba-I)を有するが、5 GPa程度の静水圧力下中に置くことでをhcp構造(Ba-II)に変化し、12 GPaでBa-IVなる別のhcp構造に相転移する。Ba-IVの低温側にorthorhombic相(Ba-VI)が存在し、先人の研究によってこのBa-VIが超伝導にとって最も適した構造であることが分かっていた。 本研究では、高圧ねじり(HPT)加工によって所定の圧力で圧縮した後、回転を加えてせん断ひずみを導入することで、組織を微細化し、組織中の単位胞レベルでも巨大ひずみを印加する。まず、室温下での6 GPaのHPT加工によって、Tc = 3 Kの超伝導を発見した。これは、6 GPaの静水圧下でのTcの約6倍である。次に、100 Kでの21 GPaのHPT加工によって、Tc = 24 Kの超伝導を発見したが、これは21 GPaの静水圧下でのTcの約4倍である。これは、単位胞レベルで、超伝導状態に適した結晶構造に微妙な構造変調を加えることができていることと同時に、大気圧下に戻した後もこの結晶構造の一部を準安定状態として残存させることができたことを意味する。上述のTc = 24 Kは大気圧下での実現する単一元素の超伝導転移温度としてはこれまでのNbの9Kを大きく上回るものであり、本手法を高圧力場を利用した画期的な物質創製法としてアピールすることができた。この結果は学術雑誌Sci. Rep.で公開し、プレスリリースをして国内でも広く情報展開した。 初年度は、この手法を、他のアルカリ金属・アルカリ土類金属に適応し、すでに高圧結晶構造相の一部安定化に成功した。さらに、単一金属磁性体にも適応し、一部の金属では磁性の変化を観測することに成功しており、結晶構造の変化と関連付けた議論が興味深い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルカリ土類金属の一種であるバリウム(Ba)のHPT加工によって、Tc = 24 Kの超伝導の発現に成功し、この成果を学術雑誌Sci. Rep.で公開し、さらにプレスリリースをして国内で広く情報展開することができたから。また、この手法を他のアルカリ金属・アルカリ土類金属や単一金属磁性体にも適応することができ、研究調書作成時の計画内容を超える進展を見せているため。
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今後の研究の推進方策 |
Baで成功した手法を、すでにアルカリ金属Li, アルカリ土類金属Be, Srに適応しており、高圧結晶構造相の一部安定化に成功している。それらの金属に対する電子物性データの再現性の確認が喫緊の課題である。そして、論文上で超伝導化を主張するには、超伝導体積分離の向上を目指す必要がある。さらに、HPT加工による新規電子物性開拓を、単一金属磁性体にも適応し、特にランタノイド系金属に対して磁性変化と結晶構造変化の関連性を明らかにする。静水圧下における磁気特性と結晶構造の関連性と比較することを目指す。
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