研究課題/領域番号 |
23K25844
|
補助金の研究課題番号 |
23H01147 (2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分14010:プラズマ科学関連
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
富田 健太郎 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (70452729)
|
研究分担者 |
砂原 淳 大阪大学, レーザー科学研究所, 招へい准教授 (00370213)
佐々木 明 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光量子科学研究所 量子応用光学研究部, 専門業務員 (10215709)
西原 功修 大阪大学, レーザー科学研究所, 名誉教授 (40107131)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
19,240千円 (直接経費: 14,800千円、間接経費: 4,440千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 13,260千円 (直接経費: 10,200千円、間接経費: 3,060千円)
|
キーワード | レーザー生成プラズマ / トムソン散乱計測 / 軟X線光源用プラズマ / 速度場 / トムソン散乱 / 協同的トムソン散乱計測 / 放射流体 / 軟X線・EUV光源 / 電子温度 |
研究開始時の研究の概要 |
微小(1 mm以下)かつ短寿命(数10ナノ秒)なレーザー生成プラズマ内部の流動現象の制御にむけ、まずはプラズマの電子温度(1-100 eV)電子密度(10^22-10^26 m^-3)などだけでなく複雑な流れ場(速度 10^3-3×10^5 m/s)の微細空間構造(分解能 20μm)やその時間発展(分解能0.5 ns)の観測を可能とする、新たな協同トムソン計測システムを確立する。次にレーザー生成光源あるいはイオン源プラズマの複雑なダイナミクスの総合的理解に基づき「流れ場を制御することで発光効率向上やイオンエネルギー制御は可能か?」という学術的「問い」に答えるための学理構築を目指す。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は、先駆的計測技術(2次元速度場計測が可能な協同トムソン散乱など)を駆使し、レーザー生成プラズマ(laser produced plasma:LPP)の速度場計測を通じ、プラズマ中の流動現象の理解を図ることを主な目的の一つとしている。また、LPPを短波長光源として利用することを前提として、プラズマの流れを制御することで、光出力の制御が可能であるかを、学術的な問いとして掲げている。上記目的や問いに対する答えを得るために、初年度の2023年度は、主に2次元速度場計測の堅牢生(ロバスト性)の確認実験を行った。2次元空間速度場の計測は、協同的トムソン散乱計測で得られるイオン項スペクトルのドップラーシフトを用いて行う。ただし、速度場の確定には速度の大きさと方向の2項目を特定しなければならないのに対して、スペクトルのドップラーシフトは、プラズマのドリフト速度方向と計測レーザーの波数ベクトル、そして散乱光の波数ベクトルで決定され、波長シフトという1項目しか情報がない。最終的に、散乱光を2方向から計測、もしくは計測レーザーの波数ベクトルを2種類用意し、2次元空間速度場を得ることができるが、より簡単な計測システムとして、プラズマの軸対称性を仮定することで、どこまで速度場が確定できるかを確認した。プラズマ生成用レーザーに対して垂直に平板ターゲット(炭素)を置き、プラズマを生成した。この場合、プラズマ生成用レーザーを中心軸とした、軸対称のプラズマ移動を仮定することができる。この仮定が成立するとき、プラズマ生成用レーザーから45度異なる1方向から散乱光を取得する実験系であっても、速度の大きさと方向の2種類を特定できる。実際に実験を行った結果、速度の大きさ、方向の両方について、適切な精度で決定できることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、先駆的計測技術(2次元速度場計測が可能な協同トムソン散乱など)を駆使し、レーザー生成プラズマ(laser produced plasma:LPP)の速度場計測を通じ、プラズマ中の流動現象の理解を図ることを主な目的の一つとしている。また、LPPを短波長光源として利用することを前提として、プラズマの流れを制御することで、光出力の制御が可能であるかを、学術的な問いとして掲げている。上記目的や問いに対する答えを得るために、初年度の2023年度は、主に2次元速度場計測の堅牢生(ロバスト性)の確認実験を行った。この確認実験の結果については、「研究実績の概要」に示した通り、適切な精度での決定が可能であることが分かった。この結果から、軸対称性が十分に仮定できるプラズマに対してであれば、1方向からの協同的トムソン散乱計測であっても、散乱光スペクトルのドップラーシフトから2次元空間速度場が十分に決定できることが確認できた。 この成果の他に、学術的問いとして掲げている、光とプラズマの流れの関係を定量評価すべく、プラズマの密度や温度と同時に、極端紫外光領域の発光スペクトルを同時に観測可能な計測システムの構築を、2023年度は進めた。発光スペクトルは、凹面回折格子とトロイダルミラーで構成される、斜入射型分光器を用いた。これにより、平板ターゲットに対して垂直方向の空間分解されたスペクトルを計測した。得られた発光スペクトルに対応した電子密度・温度が得られており、発光スペクトルをプラズマ状態(速度場も決定可能)の双方を初めて計測により対応づけた。 これらの成果から、2023年度は研究計画を行うにあたり、十分な進捗であったと判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、先駆的計測技術(2次元速度場計測が可能な協同トムソン散乱など)を駆使し、レーザー生成プラズマ(laser produced plasma:LPP)の速度場計測を通じ、プラズマ中の流動現象の理解を図ることを主な目的の一つとしている。また、LPPを短波長光源として利用することを前提として、プラズマの流れを制御することで、光出力の制御が可能であるかを、学術的な問いとして掲げている。 これらの目的を達成するために、2023年度は、軸対称なプラズマ構造であれば、1方向からのトムソン散乱計測であっても、十分な精度で速度場の決定が可能であることを確認した。また、プラズマの流れと光の関係を評価するためのシステムとして、プラズマの物理パラメータ(電子密度や電子温度、速度場)と、そこからの極端紫外領域発光スペクトルの双方を取得可能な計測システムの確立を行った。 これらの成果の上に、次年度(2024年度)以降は、プラズマの速度場の制御と、それによりプラズマ中の電子温度や電子密度がどのように変化するかを計測する。次に、そのように速度場、電子温度、電子密度が異なるプラズマから得られる発光スペクトルが、どのように変化するかを、2023年度と同様に、斜入射分光器を用いて観測する実験を行う。リング状レーザー照射も候補だが、例えばプラズマ生成用レーザーを同時で複数、時間差をつけて照射するなどして、プラズマ状態の制御を試みる。同軸照射である限り、複数レーザー照射であっても、2023年度のシステムで速度場の計測は可能である。複数レーザー照射は、軟X線光源用プラズマの生成手法としても、実際に注目されている。しかし、複数レーザー照射により、プラズマの物理量の変化は不明であるのが実情であり、本研究を通じてそれが明らかになる可能性がある。
|